緊急座談会 プロ野球界哀しき人事事情 「嫉妬とコネと実力と」 | FRIDAYデジタル

緊急座談会 プロ野球界哀しき人事事情 「嫉妬とコネと実力と」

野球だけで生きてきた男たちの汗と涙の「職探し」 なぜあの人がコーチに? ドラフト指名順位は引退後に影響! 新監督人事の秘密、終身雇用の裏契約ほか

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就任2年目、優勝を狙う日本ハム・新庄監督(中央)は森本(左)、建山(右)の元同僚2人を入閣させた
就任2年目、優勝を狙う日本ハム・新庄監督(中央)は森本(左)、建山(右)の元同僚2人を入閣させた

【座談会出席者】A:ベテラン野球ライター、司会担当 B:在京スポーツメディア記者
C:アマチュアからプロまで取材するスポーツライター D:スポーツメディアディレクター

「4人の新監督が誕生して、例年以上にFA、トレードが活発に行われている今年のストーブリーグ。今日はプロ野球界の人事の裏側について話しましょう。まずは、近頃何かと話題の中日から」

「もともと投高打低のチームが、主軸打者(阿部寿樹)を放出して先発(涌井秀章)を補強した。このままだと『投高”超”打低』のチームになっちゃう。また、実績のある京田(陽太)もトレードで出して、来年の中日の内野は誰が守るんだ、とさんざん叩かれている」

「ここまで大胆なチーム改革をなぜ立浪(和義)監督ができたのか? 監督の覚悟だけではなく、政治家風に言えば”圧倒的な支持率”があります」

「東海地区のメディア、名古屋経済界、中日ファン、そして球団も待ち望んだ”華のある”監督ですから。ただ一人立浪監督に反対していた白井(文吾)オーナーが退任するとすぐに就任したという経緯もある」

「落合(博満)監督後期から観客減少に歯止めがかからなくて、コロコロ監督を替えてもチームは勝てず、人気も落ち続けた暗黒の10年間を過ごしてきた。

ナゴヤドームにはメディア用の広いラウンジがあるんですが、当時の雰囲気は最悪。隣のテーブルではテレビ局の関係者が『これで視聴率獲れって無理』と堂々と放言し、奥ではOBが球団の悪口を平気で言ってましたね」

「Bクラスに終わった巨人はコーチ人事に注目です。投手部門は桑田(真澄)チーフが一軍を外れて巡回担当に回り、久保康生、阿波野秀幸のベテランが就任。野手部門では村田(修一)らが辞め、デーブ(大久保博元)が入りました」

「桑田コーチは原(辰徳)監督との衝突が噂されていたので、去年の石井(琢朗)コーチのように退団もありえると思われましたが、結局、球団に残りました。可能性は低いものの、桑田コーチも将来の監督候補。もし感情的になって辞めていたら、就任の可能性はゼロになるところでしたね。原政権内に残って臥薪嘗胆(がしんしょうたん)、ということでしょう」

「村田コーチはすぐにロッテが獲得しましたね」

「実力が認められたからでしょう。現役時代から人望のある人でしたから。各球団、試合中にしっかり相手球団のコーチもチェックしています。おそらくロッテはイースタンリーグの試合で村田の指導力をチェックしていて、巨人退団を知ってすぐにリクルートしたんでしょう」

「大久保コーチが球界に復帰するとは思いませんでしたね。コーチとしての実力は高く、巨人打線は確実に良くなるでしょう。厳しい練習を課し、時には厳しい言葉もかけますが、親身になって指導するコーチです。また、選手と仲良く食事もする。球界では滅多にないことです。

彼のような職人肌のコーチは多く、客観的に見れば”いいコーチ”なんですが、チーム全体から見れば、マイナスも起こりうる存在。それは選手と距離が近すぎること。選手の気持ちが監督ではなくコーチに向いてしまう。また、いつも選手と特定のコーチが一緒にいると、本人たちにはその気がなくても、外からは”派閥”に見えてくる。監督の求心力が落ちてしまうんです」

「結果、コーチの配置転換や退団につながったり、”派閥”を嫉妬する人間がもし現場にいれば、メディアに噂を流して、『チームに亀裂が』などと記事になったりするわけです。記事化されると今度は球団親会社が問題にして……という最悪のパターンが生まれる」

「コーチの資質って難しい。選手としての実績もなく、コーチとしての実力もよくわからないのに、ずっとコーチをしている人がいますよね。同じ球団に何年もいる人、各球団を渡り歩く人。Eさん、Fさんが有名ですよね。ネットなどでは『ゴマすりコーチ』なんて呼ばれてますが、チームには必要な人材。孤独な立場である監督を常に立てつつ、選手からも嫌われないようなポジションでチームのバランスを保っている。球界内で生きていく嗅覚に優れた人たちです」

「監督の親しい人をコーチにする”お友達内閣”も意味はあるのかな」

「お友達内閣って意思疎通ができている関係だから、ミーティングも短くて済む、効率的なシステムなんだよね。そもそもトップ選手に細かい技術指導はいらないわけだし。日本ハムの新庄(剛志)監督だって、よく知る建山(義紀)、森本稀哲(ひちょり)の二人を入閣させたし、阪神の岡田(彰布)も、広島の新井(貴浩)も親しい人間をコーチに入れている」

「セ・リーグを連覇したヤクルトの高津(臣吾)監督はどうなんだろう?」

「めちゃくちゃ気遣いができる監督らしいです。球団スタッフを含めてチームをまとめあげたことが連覇につながったんでしょう」

「実力とコネのバランスをとりながらチームは運営されているわけだね。

今度は選手の話をしていこう。今年は森友哉(西武→オリックス)、近藤健介(日本ハム→所属未定・11月28日現在)という大物のFAがありました」

「各球団、禁止されているタンパリング(事前交渉)に引っかからないように、かなり早い段階から情報収集をしていますね。当該選手の球界外の友人や知人にまで電話をかけています。彼らから選手の性格・好み・将来の夢などを聞いて条件提示をしているんです。
過去には引退後も60歳まで毎年1000万円を支払う、なんて”終身雇用契約”もあったそうですが、今はそこまで球団の体力があるかどうか……。いわゆるコーチ手形は出すことも多いと思いますね。今は三軍、アカデミー、女子野球などコーチの必要人数は増えていますから」

「FAできる選手はごく一部の成功者。今年も100人以上の選手が引退・戦力外となっているけど……」

「切ないのはトライアウト。スカウトがあの場のパフォーマンスだけで獲得を決めることはほとんどない。だいたい事前に球団から選手に『肩の調子、どう?』とか体調や今後の見通しを尋ねる電話がかかってきてる。連絡ゼロのままトライアウトに臨む選手はNPBの選手に残れる可能性ほぼ0%の中で一球一打に人生を懸けなきゃいけない」

「球団にはコーチだけじゃなく、スカウト、スコアラー、広報、用具係などさまざまな選手のためのセカンドキャリアが用意されています。現役引退後、そういった仕事に就(つ)けるかどうかは、その人の性格次第。真面目、愛想が良い、事務処理能力が高い、など組織人として使える人は優位です。裏方の年俸は職務によりますが400万〜800万くらい。ドラフト指名順位が高い人ほど給与が高くなる傾向があります。いい条件だと週3勤務・副業OKで約700万円の元選手もいますね。

ただ裏方も1年契約のことが多いので、勉強をして資格をとって、球団の営業部や渉外部など長く在籍できる部署を目指す元選手も多いんです」

「野球で生きてきた人は、野球界で生きていきたい。そのために皆、必死で頑張っているんですね」

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『FRIDAY』2022年12月16日号より

  • PHOTO共同

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