マイナポイント…他人名義のキャッシュレス決済にも付与OKの謎 | FRIDAYデジタル

マイナポイント…他人名義のキャッシュレス決済にも付与OKの謎

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本人以外の決済サービスでもポイント取得は可能

現行の健康保険証を2024年秋に廃止しマイナンバーカードに一本化すると河野太郎デジタル大臣が発言後、高齢者を中心にカードを申請する人が増え始めた。保険証が使えなくなるなら、マイナポイントがもらえるうちにマイナンバーカードをつくっておこうと、重い腰を上げた人が一定数いたのだろう。

ところで、スマホは持っていないしキャッシュレス決済サービスも使っていない人が、マイナポイントをもらう方法はあるのか――。

最寄り区役所のマイナンバーカード窓口に聞いてみた。

《他人名義のキャッシュレス決済サービスでポイントをもらうことは可能。ただし、一つの決済サービスにつき一人分しか紐づけることができないため、子どもなどのマイナポイントを申し込む場合は、決済サービスを使い分ける必要がある。詳しいことはマイナンバー総合フリーダイヤルで聞いてほしい》と担当者。

言われた通りフリーダイヤルで担当窓口に問い合わせると《本人名義以外の決済サービスで申し込みはできるが、ポイントを付与するかどうかは各決済サービス事業者が判断することになると思う》と説明があった。

総務省は11月28日、マイナンバーカードの申請率が27日時点で60,1%になったことを発表。保険証廃止発言の効果か?(写真:アフロ)
総務省は11月28日、マイナンバーカードの申請率が27日時点で60,1%になったことを発表。保険証廃止発言の効果か?(写真:アフロ)

国は「申請代行者が申請者の法定代理人か否かの確認を行う義務は負わない」 

「えっ、できるわけ?」と、意外に思った人は少なくないかもしれない。マイナンバーカードと決済サービスの名義人が同じでなければマイナポイントの申し込みはできないと、普通は考えるからだ。

総務省のマイナポイント事業サイトにもこう書かれている。

他人の決済サービスを使って申込みをすることはできません。ご自身名義の決済サービスで申込みを行ってください。

ただし、自身での申込みが困難な場合など、やむを得ない事由で本人に代わって法定代理人が申込みを行う場合には、法定代理人の決済サービスでマイナポイントの申込をすることができます。

つまり、たとえば高齢の親や祖父母など家族に代わって自分の決済サービスでマイナポイントを申し込むためには、法定代理人(=成年後見人)になっていなければならないことになる。大方の人は「できない」と判断するだろう。

が、よく考えてみると疑問が湧く。本人に代わって本人名義ではない決済サービスでマイナポイントを申し込んだ人物が、法定代理人か否か、どうしてわかる?

そこで、マイナンバーカードの発行やマイナンバー制度の各種システムの整備・運用を行なっている地方公共団体情報システム機構に書面で問い合わせた。すると、総務省マイナポイント施策推進室からメールで回答が送られてきた。

質問《本人名義ではない決済サービスでマイナポイントの申し込みは可能だが、決済サービス事業者によってポイントが付与されない場合があると聞いた。申し込み者が法定代理人かどうかを決済事業者が判断し、それによって対応が分かれるのか》

回答《制度開始当初から『利用規約』において、法定代理人の保有する決済サービスでの申し込みは可能としています。法定代理人が手続きを代理する場合について、国は、申請代行者が申請者の法定代理人か否かの確認を行う義務は負わないものとしています》

「利用規約」では法定代理人と指定してはいるが、実際には法定代理人かどうかを確認されることはなく、自分名義の決済サービスで家族のマイナポイントを取得することはできそうだ。決済サービス事業者が確認し、拒否しない限りは。

消費者庁が「マイナポイント詐欺」に注意を呼びかけ

それが調べてみると、誰の名義でもない無記名の決済サービスもマイナポイントの申し込みに使えることがわかった。

知人は高齢の母親のマイナポイントを、会員登録をしなくても持てるWAONカードで申し込んだという。利用したWAONカードは、無記名タイプのプリペイド式電子マネーだ。

確認のため、総務省マイナポイント施策推進室に《無記名の決済サービスでもマイナポイントの申し込みが可能と聞いたが、その案内はサイトに記載されているか》と問い合わせたところ、次の回答があった。

《明示的に無記名の決済サービスでも申し込み可能である旨を記載している箇所はありませんが、制度当初から無記名のカードを禁止しているものではありません》

回りくどい説明だが、要は無記名の決済サービスでも申し込みは可能ということだ。

が、推進室からの回答にはこんなことも書かれていた。

《ただし、制度としては無記名のものであってもご本人又は法定代理人の保有する決済サービスでのお申し込みをお願いしておりますので、この要件を満たしていないことが判明した場合は、国又は決済事業者の判断でポイントの付与の停止や取消しを行う場合があります》

この件について、マイナンバーカードに詳しいマネーライターの松岡賢治さんはこう話す。

「マイナポイント事業のサイトで決済サービスの一覧を見ると、プリペイド式電子マネーはかなりあるようです。その中には、会員登録を条件としない電子マネーも結構あるんじゃないでしょうか。 

クレジットカードを持っていない、スマホも電子マネーも使っていない高齢者は、地方を中心に相当いるはずです。そういうキャッシュレス決済サービスと無縁の人に対して、無記名で使えるプリペイドカード式電子マネーは、救済措置になっていると思います。 

それにしても、不正利用が起きる穴を塞ぐこともせず、業者や自治体の現場に対応させるという国のやり方は、無責任と言わざるを得ません」

確かに、無記名のプリペイドカードがマイナポイントの申し込みに使えるのであれば、悪用をたくらむ不逞の輩が出てくる可能性は十分ある。

高齢者宅を訪問し、自治体職員を名乗って「マイナンバーカードの健康保険証としての利用申し込みをお手伝いします」と持ちかけ、自分のスマホアプリを使ってその高齢者のマイナポイントを持参したプリペイドカードで申し込む……なんてこともできなくはない。あの手この手を考える人間がいるから、特殊詐欺の被害が後を絶たないのが現実だ。

国もそれを危惧しているのだろう、消費者庁と総務省が「マイナポイントに乗じた詐欺にご注意ください!」と呼びかける注意喚起のチラシを作っている。

キャッシュレス決済サービス弱者の高齢者が、「マイナポイント詐欺」に遭うようなことにならなければいいのだが……。

  • 取材・文斉藤さゆり

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