「子供たちに夢を与えたい」批判から逃げなかった吉田麻也の生き様 | FRIDAYデジタル

「子供たちに夢を与えたい」批判から逃げなかった吉田麻也の生き様

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試合後、顔を覆って悔しさをかみしめる吉田麻也(写真:JPMA)
試合後、顔を覆って悔しさをかみしめる吉田麻也(写真:JPMA)

サッカー日本代表は準々決勝のクロアチア代表と対戦。2018年のロシアワールドカップ(W杯)後から長谷部誠(現フランクフルト)の後を受けて主将になった吉田麻也は前半43分、前田大然の先制ゴールにつながるラストパスでチームに勢いをもたらしたが、後半にクロアチアに追いつかれ、PK戦の末敗れた。ドイツ、スペインと過去W杯優勝国に勝つ快進撃を繰り広げたが、決勝トーナメント1回戦の壁は4度目の挑戦でも破ることができなかった。

「ロストフの悲劇」の直後も毅然と取材に応じた

PK戦で4人目を任された吉田は相手GKにシュートを阻まれた。1人目の南野拓実、2人目の三笘薫に続く3人目の失敗。肩を落とした吉田は試合後のインタビューで、言葉に詰まった。

「毎日…毎日この壁を破るためにいろんなものを取り入れてチャレンジしてやってきたつもりでしたけど、結果が最後でなくて悔しいですね。
多くの子供たちがこの試合を見て、サッカーに夢を感じてときめいて、サッカー選手になりたいと思う子たちが増えて、その子たちがいずれW杯に出てこの壁を破ることを期待していますし、その日本の成長の一端を担えたのならうれしいし、それはこれからも続いていくと思うので、どんな形であれ、貢献したい」

吉田にとってW杯は2014年ブラジル大会、2018年ロシア大会に続き、3大会連続となる出場で34歳で迎えた大舞台だった。吉田自身が2002年の日韓W杯を見て日本代表にあこがれを持った張本人。「子供たちがサッカーに夢を感じてほしい」という思いは、4年前のロシア大会に敗れた試合の直後からずっと抱き続けていた。

ロシア大会でもこの日と同じ決勝トーナメント1回戦まで駒を進めていた。ベルギー代表に対し、後半20分過ぎまで2-0とリードしながら、同24分、29分と立て続けに失点し、同点にされた。この時、吉田は2点目を頭で押し込まれたフェライニにもっとも体を寄せて止めに行っていた。

さらに後半ロスタイムに敵陣ゴール前からの超高速カウンターで決勝ゴールを献上。3-2で敗れ、後半途中まではつかみかけていた史上初のベスト8進出を逃した。ベルギー代表のGKクルトワのフィードパスからゴールが決まるまでわずか14秒。「ロストフの悲劇」とも言われている。

この決勝ゴールを決められるひとつ前のプレーで、吉田は本田圭佑が蹴った左CKを頭であわせにいき、GKクルトワと競っていた。キャッチされた後、14秒後に決められた痛恨の失点だった。GKクルトワからのパスが出たのを見るや、吉田は必死に自陣ゴール前まで戻ろうと追いかけたが、追いつかず。ゴールネットが揺れた瞬間、膝からピッチに崩れ落ちていた。

歴史を塗り替えるかに見えた試合で衝撃的な敗戦。当然、試合後、選手たちはショックに打ちひしがれた。4年前のW杯では試合直後、日本や海外のメディア向けの取材とは別に、国際サッカー連盟(FIFA)がマッチレポートとして選手の声を載せるインタビューも毎試合あった。失点すれば、DFの責任が問われることが多い。ベルギー戦の2失点目に深く関わり、語る内容次第では批判にさらされる可能性もあった吉田だが、FIFAからの取材要請に応じた。当時の現場の様子を知るメディア関係者がこう明かす。

「試合後のロッカールームでは選手と常日頃から一緒に過ごす日本協会関係者でさえ、選手に声をかけづらい雰囲気だったのに、当時、主将でもなんでもなかった吉田はFIFAの取材要請に応じたんです。
『今日はいい試合ができたけど、日本は自分たちより体が大きい相手に対して時折悔いが残る戦いをしてしまうことがある。この敗戦を日本サッカー界は育成年代を含めて学ばないといけない』という類のことを語っています。おそらく何のコメントもしたくないぐらいショックだったと思いますが、逃げることなく、これからサッカーを好きになりたい、という子供たちを意識したメッセージを残したんです。FIFAの関係者は後日、吉田の毅然とした、男気あふれる姿勢に感銘を受けていましたよ」

歴史を変えてきたヤツは勇気を持って前進したヤツだけ

今大会も初戦のドイツ戦に勝った後、同じE組でもっとも勝てる可能性が高いと思われていたコスタリカにまさかの敗戦。吉田と守田英正のパス交換のちょっとしたミスが決勝点につながってしまった。その試合後も「たくさんの批判が起こることは理解してますけど、個人的にもチームとしても日本代表としてもこういう大きな大会、注目される大会で批判はつきものだし、そういうことをマネージできなければ、ここには立てない」と自らを奮い立たせるような言葉を発し、3日後のスペイン撃破につなげた。

今大会の初戦となった難敵・ドイツ戦前、ピッチに飛び出す前のロッカールームで吉田が選手たちに残した言葉はSNS上でも話題になった。

〈歴史を変えてきたヤツは勇気を持って前進したヤツだけだから…今日俺たちは歴史を変えよう〉

今大会ピッチに立った選手の大半が海外クラブの出身。数少ない国内組の谷口彰悟もカタールのクラブへの移籍の可能性が報じられた。今や日本代表は、世界で戦い、世界で勝つために勇気を持って日本から飛び出した選手の集団になった。子供たちの憧れになるためにも、決勝トーナメント1回戦の壁を破り、8強へ。吉田がのこしたメッセージはこれからも受け継がれていくのだろう。

前半43分、前田大然の先制弾に繋がるラストバスを送った吉田。この時までは狙い通りの展開だったが…(写真:共同通信)
前半43分、前田大然の先制弾に繋がるラストバスを送った吉田。この時までは狙い通りの展開だったが…(写真:共同通信)
試合後、子供たちに話しかける吉田。いつもこの子たちの世代にいかにサッカーを好きになってもらうかを考えてきた(写真:JMPA代表撮影)
試合後、子供たちに話しかける吉田。いつもこの子たちの世代にいかにサッカーを好きになってもらうかを考えてきた(写真:JMPA代表撮影)

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