<figure id="attachment_278879" aria-describedby="caption-attachment-278879" style="width: 650px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7dba4878"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/dc7144b439fb39ea4cf18fd2c49b60c0.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-278879" class="wp-caption-text">前半43分、先制ゴールを決めて流れを引き寄せた前田大然（写真：共同通信）</figcaption></figure>
<p>サッカー日本代表はワールドカップで史上初の準々決勝進出をかけて、クロアチア代表と対戦。１-１のまま延長戦まで決着がつかずにPK戦へ突入。相手GKに３本阻止されて敗れたが、前半43分、前田大然があげた先制ゴールは、サッカーファンならずとも未来に可能性を感じさせるものだった。</p>
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<p>目の前に転がってきた絶好のチャンスを一振りで決めた。０-０で迎えた前半43分、堂安律のクロスボールに中央にあがっていたDF吉田麻也が精いっぱい右足をのばして右に控えていた前田の足元へ。ダイレクトで左足を振りぬくと、ボールはネットを強烈に揺らした。</p>
<p><span class="strongInContent">「この舞台に立てるまでたくさんの人の支えがあってここに立てた。まずいろんな人に感謝したい。支えてくれた人に恩返しする大会でしたけど、次のステージに進めなくて本当に残念です。日本は夜中ですけどたくさんの人が応援してくれたと思うので、勝ち試合を見せられなかったですけど、本当に感謝したいです」</span></p>
<p>今大会、４試合中３試合に先発し、待望の初ゴール。ただ前田はゴール以上に、相手ゴール前で走り回って、相手GKやDF陣のパスコースを消す、献身的な守備で貢献していた。その象徴的なプレーがこの試合の開始３分で発揮された。相手ゴール前でパス回しをしているところに猛然とプレッシャーにいった前田は、GKリバコビッチのパスをカット。相手のゴールキックに変わったが、相手に精神的なプレッシャーを与え、約40分後の先制ゴールの呼び水となった。</p>
<p>前田が注目を浴び始めたのが昨年夏に開催された東京五輪の時から。代表に選出された数日後の記者会見で前田はこう口にしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「自分が高１の時に悪さをして、高２で丸々１年サッカーをやっていなくて、サッカーを辞めようかなと考えるぐらい色々ありました」</span></p>
<p>大阪出身の前田は小学校６年時に見た、2010年１月、全国高校選手権で初優勝した山梨学院高に憧れて、2013年に越境入学。攻撃時のスピードは目を見張るものがあり、１年時から頭角を現していた反面、守備の時は気まぐれ、という一面もあった。</p>
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<p>高１も終わろうかという冬、前田は部の規律違反をおかし、高校１年２月から約１年間、サッカー部から除籍されてしまう。それまで生活していた寮も出て、甲府市内に部屋を借り、親とともに生活しながら学校に通った。当時、同高校のサッカー部監督をしていた吉永一明氏（現・アルビレックス新潟シンガポール監督）はFRIDAYデジタルの取材にこう明かしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「サッカーをとりあげることは、彼らにとって一番つらいことだと思います。でも１人では何もできない、ということを気づいてほしかったんです。部の仲間や生徒、親御さん、学校の先生…本当にいろんな人に支えられて自分がやれている、ということを大事にしてほしかった。期限も決めず、私からも一切声はかけず、担任の先生を通して逐一、大然（前田）の様子を聞くようにしていました」</span></p>
<p>前田は練習場に入ることも禁止されたため、朝６時ぐらいから走り、公園でボールを蹴る姿もあった。自ら教室の掃除をするようになったことも担任の先生から聞いた。</p>
<p><span class="strongInContent">「高校時代から今の丸刈りでしたけど、あの時期、一度だけ髪をのばしたこともありました。おそらく『（私に）話しかけてほしい』ということだったと思います」（吉永氏）</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="チームのために、という気持ちが伝わってきた"></div>
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<figure id="attachment_278881" aria-describedby="caption-attachment-278881" style="width: 320px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="c7524262"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/6affa9b318cb5c995058bf2020957d42.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-278881" class="wp-caption-text">「たくさんの人の支え」の一人に数えられる山梨学院高校時代の監督、吉永一明氏。プロ入り後、久々の再会を果たし、写真を撮った（提供：吉永一明氏）</figcaption></figure>
<p>それでも吉永監督は声をかけなかったが、反省している様子が態度に出るようになってから半年後には、吉永監督のツテで社会人チームに加入。しかし高校のサッカー部にはまだ戻れず、前田が高校２年生時の年末から出場した2014年度の冬の高校選手権は一般生徒にまじって、スタンドから応援の声を枯らした。</p>
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<p>高校選手権が終わり、除籍から１年が経過した頃、部内で話し合いの場が持たれた。同期部員の賛同も得られた前田はその２月からサッカー部に復帰すると、プレーぶりから変化が見てとれた。吉永氏は続ける。</p>
<p><span class="strongInContent">「１年間やってないから遅れを取り戻したい、という気持ちもあったと思うんですけど、本当に『チームのために』というのがプレーから伝わってきました。攻撃だけでなく、守備でもチームを助ける、仲間をカバーする、広範囲にわたってのプレーが出てきましたね。</span></p>
<p><span class="strongInContent">どの選手にも言えることですが、前に出る時は100％で出られますが、守備の時に戻るために100％で戻ることは簡単にはできません。でも、やはりあの１年のおかけで、大然は前に行く時も、後ろに下がる時もスピードが一緒になりました」</span></p>
<p>１年間、部活動から離れるブランクがありながら、Jリーグの下部組織にあたるユースチームや高校の上位校がリーグ戦形式で対戦する関東地区のプリンスリーグで得点王に輝いた前田は、J２松本（当時）からオファーを受けて入団を果たす。今日に至るステップアップのためのきっかけを前田は自ら手繰り寄せ、この日のゴールにつながった。それでも、恩師の吉永氏はこんな反省を口にしていた。</p>
<p><span class="strongInContent">「大人数でやる部活動のマネジメントとしては、僕は失敗だったと思っているんです。本来、前田も含めて選手に対してそういう空白を作らないのが一番ですから、それを未然に防げなかったことは今でも反省しています。逆に、大然がただの失敗で終わらせず、心を入れ替えた。プロになっただけでもすごいことだと思いますが、『こういうこともあるんだよ』と示してくれたことで、私自身救われている部分はあります。</span><br>
<span class="strongInContent">長い間指導者をしていますが、人を変えたいと思っていても、変えることはなかなかできない。私たちができるのは変わるきっかけ、チャンスを与えることなんです。彼はそのきっかけを掴んでチャンスに変えた。『人は変われるんだよ』ということを体現してくれたことは、私にとって大きな学びとなってますね」</span></p>
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<p>クロアチア戦後に前田は「感謝」「恩返し」という言葉を繰り返し使ったが、それをプレーで示し続けた大会だった。若き日のちょっとした過ちで人生が大きく狂うことがある中、前田は吉永氏や周囲の人にも恵まれて、空白期間を自分を見つめ直す充電期間に変えることができた。仮につまずくことがあっても、気持ちひとつで這い上がり、世界最高峰の舞台で活躍できる……。その可能性を示したという意味で、前田のゴールは１点以上の重みがあったのではないだろうか。</p>
<figure id="attachment_278883" aria-describedby="caption-attachment-278883" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="1b64f16a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/451d3f663513a131e0dab3ea52d1ef0f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-278883" class="wp-caption-text">相手GKに常にプレッシャーをかけて、パスコースを防ぐ役割にも徹した（写真：JMPA）</figcaption></figure>


前半43分、先制ゴールを決めて流れを引き寄せた前田大然（写真：共同通信） サッカー日本代表はワールドカップで史上初の準々決勝進出をかけて、クロアチア代表と対戦。１-１のまま延長戦まで決着がつかずにPK

史上初のベスト８逃すも　先制点を奪った前田大然の「空白の１年」

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