南果歩が語る『一生ぶんのだっこ』に込めた想い
絵本刊行記念インタビュー
〈おとなでも こどもでも
おとこのこも おんなのこも
だれだって ないて いいんだよ。〉
という言葉が胸に響く――。
女優の南果歩さんによる初めての絵本『一生ぶんのだっこ』(講談社)の一節だ。
12月8日に刊行されたこの絵本、子供はもちろん、大人も感情を揺さぶられるストーリーに果歩さんが込めた思いとは?
読み聞かせができなくなって
絵本の読み聞かせは私のライフワークでした。ところが、コロナになってから、直接、保育園や幼稚園、小児病棟に伺えなくなってしまったんです。どうしようかな……と頭を抱えていた時に、以前、書いていた『一生ぶんのだっこ』のたたき台の存在を思い出したんです。それを手直しして、「まだ絵が付いていない絵本です」と言って、リモートで読み聞かせをしてみたんですよ。すると、「ぜひ絵本にしてほしい」「私も抱っこしてあげたくなりました」とたくさんの反響をいただいたんです。
コロナ禍でソーシャルディスタンスという言葉が浸透して、なかなか人とスキンシップが取れなくなっているいまだからこそ、この本が必要かなと思い、今日の発売に至りました。
「私はこの子に何を託せるのだろう」
私が子育てしていた時期は毎晩3冊読み聞かせをしていたんですよ。絵本好きの息子に毎晩3冊選んでもらって読んでいましたね。子育てをしている間、「私はこの子に何を託せるのだろう」「大人になって独り立ちした時に、一生の支えになるものってなんだろう」と、そんなことをずっと考えていました。結論が出たわけではないのですが、やっぱり「どれだけ愛情を注げたか」「どれだけ小さい時に抱っこしてあげたか」しかないんですよね。
子育ての最中、あまりに仕事が忙しくて、体が疲れ果てていたんです。心も体も限界を迎えてしまい、ある日、息子とご飯を食べながらポロポロ泣いちゃったんです。すると息子が箸を置いて私の傍に来て、「母さん、大人も泣いていいんだよ」って言ったんです。常々、私は息子に「男の子も女の子も、悲しい時は泣いていいんだよ」と言っていたのですが、この時は息子の言葉に救われました。そんな経験が絵本という形になったんです。
絵には世界的なアーティストを起用
ダンクウェルさんの躍動感のある絵を、私の絵本に取り入れたかったのでオファーしました。彼の絵にファンタジーを感じたので、絶対、絵本に向いているなと思ったんです。それがズバリ当たりました! いままでの絵本にはないような遊び心があるし、私もダンクウェルさんも絵本は初めて。だからこそ、絵本のルールを〝壊す〟んじゃなくて、〝気にしない〟っていう強みが出たと思っています。絵本ではあまりないような視点からの絵が楽しめます。例えば、大好きなお友達と手をつないで歩いているシーンは、表情は見えないんですけれど、それが逆により表情を感じさせるんです。読む親御さん、聞く子供たちの想像の幅が広がっていくような絵を描いていただけて、大満足です。
たくさんの子供たちに『一生ぶんのだっこ』を読み聞かせする機会を作っていけたらと思っています。
『一生ぶんのだっこ』の刊行を記念して12月10日(土)19時より、丸の内オアゾPersonal Loungeにて、『ミニトーク&サイン会』が行われる。
- 撮影:濱﨑慎治