海外サーバ利用と隠語で検閲をかいくぐりSNSを駆使…中国政府を追い詰める「白紙運動」3つの切り札 | FRIDAYデジタル

海外サーバ利用と隠語で検閲をかいくぐりSNSを駆使…中国政府を追い詰める「白紙運動」3つの切り札

厳しすぎるゼロコロナ政策に、異例の「習近平は退陣せよ!」との抗議活動が全土で勃発   第二の天安門事件へ発展も

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デモは常にSNSと連動。検閲を避けるための白紙だが、自由をもじって「フリードマン方程式」などの隠語を書く者も
デモは常にSNSと連動。検閲を避けるための白紙だが、自由をもじって「フリードマン方程式」などの隠語を書く者も

地方で上がった怒りの炎は瞬く間に中国全土に燃え広がった。独裁国家・中国の都心部で「習近平は退陣せよ!」の怒号が飛び交う光景は”第二の天安門事件”を予感させる異様なものだった。

デモの発端となったのは、11月24日に新疆(しんきょう)ウイグル自治区ウルムチ市で起きた高層住宅での火災。ロックダウンで救助が遅れ、少なくとも十数名の死傷者が出たことに住民の怒りが爆発した。

「支援体制を整えずに100日以上もロックダウンを続けたことで、住民の所持金や食糧が尽きた。それでも配給は来ず、激しい抗議活動が起きたのです。それを見た全国の市民が共感し、不自由の象徴として白い紙を掲げる運動が広がった」(拓殖大学海外事情研究所の富坂聰教授)

テレビをつければ、外国人たちがマスクをつけずW杯を観戦しているのに、自分たちは感染者が一人出ただけでコミュニティごとロックダウン。毎日PCR検査を強いられ、陰性証明がなければ買い物にも行けない――。富坂教授によれば、中国の衛生当局はコロナ政策を「6月の時点ですでに転換させている」と言う。

「11月には『20条措置』と呼ばれる緩和策を打ち出し、一人一人を見極めて隔離せよと通達しています。ところが、地方の政治家が言うことを聞かない。感染が拡大して責任を取らされることを恐れているからです。地方は医療体制が脆弱で、ロックダウンしか打つ手がない。習近平国家主席の退陣を求める声は国内ではごく少数。多くはゼロコロナ政策への不満で、『ロックダウンをやめろ』というものがほとんどです。ゼロコロナ政策を見直せばデモは収まる。天安門とは次元が違う」

超監視体制下で政府の転覆を図る国民はいない――というのが、その理由だ。

サイバーセキュリティに詳しいジャーナリストの伊吹太歩氏が解説する。

「中国では、Alipayなどのスマホアプリがなければ生活しづらいほど国民に浸透。アプリから取るデータと監視カメラ網、顔認証AIを駆使して、誰がデモに参加していたかを政府は掌握しています。だから、SNSで問題人物に『いいね』を押しただけで自宅に警察官が訪ねて来るのです。今回も深圳(しんせん)のデモ参加者をトラッキングし、集合場所に向かう地下鉄を停めて未然に防いでいます」

だが、検閲対象となっているSNSの発達こそが、「天安門事件にはなかった、白紙運動の切り札のひとつ」だと中国人ジャーナリストの周来友氏は言う。

「デモ情報はすぐ当局に削除されますが、それ以上のスピードで拡散しています。今回、政府は一部の大学の冬休みを前倒しさせて学生を帰省させた。天安門事件では学生の抗議デモが全国に広がったことを意識しているからでしょう」

当局の目が届かないVPN接続(仮想私設通信網)も、切り札になり得る。

「中国ではツイッターやインスタグラムは禁止されていますが、VPNならば接続可能。海外に自由に発信することができるのです。3つめの切り札はアノニマスです。以前から中国には批判的で、上海警察などがハッキングされて外交部の報道官らの情報が漏れている。白紙運動にも呼応しており、中国政府のウェブサイトへの攻撃を始めています」(伊吹氏)

14億人の怒りは簡単に鎮火できない。

白紙運動は海外にも飛び火。12月4日、米ワシントンで行われたデモでは習主席が「独裁国賊」と糾弾されていた
白紙運動は海外にも飛び火。12月4日、米ワシントンで行われたデモでは習主席が「独裁国賊」と糾弾されていた

『FRIDAY』2022年12月23号より

  • PHOTOロイター/アフロ(1枚目) AP/アフロ

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