<h2>メンタルトレーニングの効果が…！</h2>
来月6日に2度目の防衛戦を控えるWBOミニマム級チャンピオンの谷口将隆が12月9日、3人のパートナーを相手に、合計12ラウンドのスパーリングを行った。
スーパーフライ級、バンタム級といった上のクラスの選手と拳を交えながら、谷口は攻めて良し、守って良しで、終始リングを支配した。フルラウンド戦いながら、ペースダウンすることもなかった。
今日、谷口は自分のボクシングに確かな手応えを感じている。
「12ラウンドぶっ続けのスパーは、今回のキャンプで2度目です。ラウンドごとの戦術の確認、そして下半身の動きを意識しました。やはり世界戦では、ポイントを失うラウンドもありますよね。そこで無理に取り返すよりも、しっかりジャブを突きながら、リズムを立て直すことをテーマとしてやりました。ミスを無くしていきたいですし、一つ一つのパンチの精度を上げたいです」
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昨年12月14日に世界王座に就いた谷口は、間違いなくボクサーとして一皮剥けた。元々、身体能力はジムで一番と言われながらも、日本人選手を相手に2敗、世界タイトル初挑戦でも黒星と、3度の敗北を経験している。
50メートル走で5秒台、何の練習もせずにバック宙やバック転を軽々とこなす運動神経を持ちながら、それを生かし切れない点を改善すべく、陣営は谷口にメンタルトレーニングを薦めた。2020年秋からコーチングを取り入れ、週に一度、自身の課題や練習メニューをカウンセラーと話すことで、思考を整理している。
「物凄く効果が出ていますよ。精神面の充実が、リングパフォーマンスに結び付いていると僕は思います。それプラス、自分を伸ばしてくれているのはジムの環境ですね。特に同期である京口紘人の存在が大きい」
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アマチュア時代に6度対戦した京口との戦績は、谷口の2勝4敗。大学卒業直後に谷口は上京し、京口と共にワタナベジムに入門した。プロテストも同じ日に受験している。
「京口が僕の前を走っていることは認めています。でも、嫉妬とか焦りでなく、彼に刺激をもらう関係です。先日の寺地拳四朗戦の京口の姿（京口が寺地に7回TKO負け）は、友人として誇らしかったです。自分もこういうチャンピオンになりたいと心底感じましたね。1月6日の試合についても『無理に倒そうとしなくても大丈夫やで』とアドバイスされました。京口の言葉はストーンと胸に入ってきますね（笑）。
入門した時は、WBAライトフライ級チャンピオンの田口良一さんもいて、何度かスパーリングをやって、世界王者とは何であるかを教わりました、また、今回のセミファイナルでIBFタイトルに挑む銀ちゃん（重岡銀次朗）からも、学ぶものは多いです。いつも冷静ですし、ストイックでブレることがない。彼は、世界タイトルを獲ってからが本当のスタートでしょう。切磋琢磨する仲間がいるって、喜ばしいことですよね」
谷口は、自身の成長について振り返る。
「世界に初挑戦したビック・サルダール戦（2019年2月26日）の頃の僕は、何も考えずに、ただ厳しい練習を乗り越えれば勝てると信じていました。でも今は、勝つためにどういう練習をすべきなのか、一つ一つ紐いたうえでハードなメニューをこなしています。また、リングでは相手のダメージを考慮したり、どんな心境なのかを観察しながら戦っています。全てに意味を求めることで、具体的なテーマを掴めるようになりました」
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今回の挑戦者、メルビン・ジェルサエム（フィリピン）を、谷口はこう評する。
「4団体で上位にランクされているだけに、強さももちろんありますし、カウンターを打てる巧さも持っていて、まとまっているなという印象です。ただ、僕もステップアップしていますので、アクシデントなどが発生しない限り、防衛できると感じます」
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龍谷大学の文学部を卒業した谷口は、「唐代の妓女」をテーマに卒業論文を書き上げた。渡辺均・ワタナベジム会長は言う。
「学生時代から真面目だったのでしょう。確かに同期の京口の方が出世は早かったですが、ウチに来てからも、いつも明るく、コツコツと努力を重ねています。手の掛からない選手ですね。あの体つき、特に両肩の筋肉を見てください。彼がやってきたことの証ですよ。
ベテランと呼べる年になりましたが、技術的に高いものを持っているので、もう一花咲かせられるでしょう。次の試合も、いい内容できっちり勝ってくれると確信しています」
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谷口を支える伯耆淳トレーナーも話した。
「馬力のある挑戦者なので、受けに回らないようにトレーニングしています。スパーリングはトータルで100ラウンドを少し超えるでしょう。自分でよく考えるチャンピオンですから、指示は『攻守のバランスを考えよう』くらいですかね」
大学時代、文武両道を己に課した谷口は、知的なボクサーだ。国際情勢にも関心を持ち、ウクライナへ思いを馳せる。現WBA/IBF/WBOヘビー級チャンピオンのオレクサンドル・ウシクがコンスタントに強弱をつけたパンチを出す際に、足も動かすスタイルを大いに参考にしている。
「戦争のニュースを見て、ウシクやワシル・ロマチェンコ（元WBA/WBC/WBOライト級王者）が軍に入隊したことを知りました。ウシクもロマチェンコも僕と同じサウスポーですから、6割くらいの力でポンポン手を出す戦い方や、相手のガードの崩し方に注目していたんです。国を守るという彼らの動向が気になっていました。ウクライナで、他の競技のアスリートが命を落とした報道も目にしました。
今、安全な日本でボクシングに集中できる自分が、どれだけ幸福なのかが分かりましたね。また、これが当たり前じゃないんだと、再確認できました。ボクサーとして生きている自分は、幸せですよ。だからこそ一日一日、覚悟を持ってやらなければと感じます」
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次の試合で何を見せたいか？　と問うと、谷口は答えた。
「前評判の高い挑戦者に対して、すべての面で上回って圧勝したいですね。京口vs.拳四朗戦もそうでしたが、本物同士がぶつかるからこそ感動が生まれるのだと思います。ああいう試合を見せられるようになりたいですね」
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谷口はベストコンディションで大阪に入るだろう。1月6日、エディオンアリーナ大阪。谷口将隆の戦いぶりに注目だ。

林壮一

鬼怒川毅

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