森泉も苦言…!「水際対策」大丈夫? 確認はまさかの「目視」…デジタル庁入国サービスがポンコツな件
コロナ感染者もスルー!? お粗末すぎる日本帰国時の「検疫」手続き
新型コロナウイルス禍で、世界各国は“3密防止”の目的もあり、幅広いジャンルでDX化が進んだ。それは、各国の入国ルールや出入国システムなども該当する。
一方、日本では現在、デジタル庁による「Visit Japan Web」で入国手続きサービスが利用できる。従来の「入国審査」「税関申告」に加え、2022年11月1日から「検疫(ファストトラック)」も利用可能に。一連の入国手続きをWEBで事前登録し、空港ではスマートフォンの画面を“見せる”だけでスムーズに行えると、国を挙げてアピールする。
しかし、そのサービス開始直後から、実際に使った人々による評判がすこぶる良くない。「えっ、これがデジタル化!? 日本はもはや時代遅れ、やることがポンコツ過ぎる」との声まで聞かれる。
満を持して登場した入国手続オンラインサービスだけど…形だけのDX化
「Visit Japan Web」では、まずアカウントを作成し、ログインする。続いて、日本入国(帰国)前までに「利用者情報」「渡航などのスケジュール」「必要な手続きの情報」を登録。そして、日本到着時の入国(帰国)手続きで、スマートフォンの画面上に表示されるQRコードを提示する流れだ。
今までバラバラだった「検疫」「入国審査」「税関申告」を一括で、しかもWEB上で行うシステムができたことは、非常に画期的
渡航直前の健康状態は? 1ヵ月以上前でも登録可能な「体調情報」
入国者が多くなると水際対策で最も大切なのが、検疫の「体調情報」の項目だろう。「Visit Japan Web」の場合、検疫は事前にいつでも登録可能だ。例えば、1ヵ月以上前に登録しても事前手続きが完了すれば「青」画面になる。
韓国の検疫システムQ-CODEの場合、健康申告は到着3日前から可能。シンガポールも、到着3日前から入国管理局のウェブサイトで「SGアライバルカード/健康申告書」がオンライン提出できるようになる。渡航直前の健康状態こそ、重要ではないのだろうか。
そして、この「Visit Japan Web」は現在、日本のすべての空港で使用することはできない。しかも、“必須”ではなく、従来の「紙」での申請もいまだ可能だ。そうなると、新たな感染症などの発病者が出た場合、膨大な書類から「人」の力で当該者を探し、所在を特定する必要があるだろう。中途半端なデジタル化は結局、時間も手間もかかる。
例えば、アメリカの「ESTA」(電子渡航認証システム)をはじめ、世界各国は入国情報をデジタル化して管理し、もし何かあれば瞬時にデータを見つけられる。韓国の「K-ETA」(韓国電子旅行許可制度)は2021年5月3日から試験的に始まり、現在は義務化されている。義務だと、事前登録済みでないと飛行機に乗ることすらできない。
到着時に大勢のスタッフが「目視」チェック…他人のスクショ画面でもOK!?
日本帰国時、機内からすぐ出られず、しばらく機内で待たされるケースが新型コロナ禍で増えた。そして、やっと出られたと思ったら、入国審査場までスタッフ、「人」が“大量”に待ち構えている光景を目にする。
そのスタッフたちは乗客に対し、現在は「検疫手続事前登録(ファストトラック)を見せてくださーい!」とひたすら声をかけ、スマートフォンが“青画面”だと「ピンクの紙」を渡していく。このピンクの紙を持って先へと進むのだが、実はこのピンク色の印刷物がスタッフによる「目視」チェックの目印となっている。
そして、検疫ブースを通過して入国審査場に着き、ここで「あれっ、検疫のQRコードは読み取らないの?」と気づかされるだろう。そういえば、QRコードを読み取るための機械も見当たらない。結局、QRコードをスタッフが「目視」でチェックしただけである。つまり、他人のスクショ画面を見せても気づかれないということだ。
何度も読み込ませられるパスポート…「紙の列が空いている」という矛盾
最後は、税関だ。機内で配布される税関申告書の紙に記入し、税関スタッフに提出するのが長年の流れだった。「Visit Japan Web」では税関申告書もWEB上で事前登録でき、QRコードが表示される。「QRコードをあとはかざすだけ!すぐ通過!」と思いきや、その手前にある立派な“機械”でQRコードとパスポートを読み込ませると、やっと通ることができる。
入国審査後なのに、再びパスポートの登録。そもそも「Visit Japan Web」で、パスポートを登録済みである。所管がそれぞれ違うと、まったく連携が取れていない。
しかも、税関では今、その機械で登録するのに手間取ると、わざわざイチから説明する大量のスタッフという「人」がいるおかげで時間がかかり、「紙の申告書の方が早く通過できる」というデジタル化に逆行した事態が起こっている。もはや本末転倒と言わざるを得ない。
「Visit Japan Web」の操作説明書はPDF、しかも95ページ!
「Visit Japan Web」の操作説明書が、デジタル庁の公式サイトに掲載されている。これがなんと95ページにもおよぶ「PDF」なのだ。これには誰しも正直、読む気がまず失せるだろう。
目次をクリックするとそのページに飛ぶが、戻るには延々とスクロールする必要がある。より詳しい情報を確認しようとすると別のサイトに飛ばされ、戻るとまた1ページ目の表紙からになる。利用者にまったくやさしくない…。
「人」と「紙」が減らない日本、諸外国のデジタル化とも逆行
日本入国時のシステムが世界から遅れを取っているのは、今に始まったことではない。特に新型コロナ禍で、その旧態依然な「お役所体質」がはっきり明るみに出た。
例えば、入国前72時間以内の陰性証明書に「厚生労働省指定フォーマット」なる書式の「紙」提出を強いたり、隔離期間中の案内など分厚い冊子を渡されたりしたのは、まだ記憶に新しい。以前の「MySOS」も、そのアプリ内で手続きが完結せず、途中からブラウザ画面に飛び、フリーズするとスマートフォンを再起動してやり直し。
ちなみに、筆者はコロナ禍に海外渡航5回を経験した。その結果として「我が国(日本)に先進国並みをもはや期待してはいけない」という現実がすっかり身に付いてしまった。
それにしても、当初は「紙」の多さ、そして今も到着時の空港でやたらとスタッフ、「人」の多さが目に付く。その割に、「MySOS」時代から現在も、申請から登録完了まで数分ないし数時間という「タイムラグ」がある。まさかだと思いたいが、システムをデジタル化しても、中の「人」によって作業しているのだろうか。紙も人もデジタル化も、すべて「税金」で賄われるとも考えると、あまりにも切なすぎる。
- 文・写真:シカマアキ(特記以外)
ライター・カメラマン
大阪市生まれ。大学卒業後、読売新聞に入社。松山支局、大阪本社で幅広く取材・撮影を行い、その後フリーに。現在の主なジャンルは旅行、特に飛行機・空港など。国内・海外取材ともに豊富。ニコンカレッジ講師。共著で『女子ひとり海外旅行最強ナビ【最新版】』など。X/ Instagram :@akishikama