70歳地主は逮捕…茨城・波崎シーサイド「通行料4万円エリア」を守る異様な看板に税金投入のナゼ
わずか数百mの間に大量の看板が並ぶ。奥へ進み、行き止まりになると、こんな文言が目に飛び込んできた。
「私有地につき通行止め 無断進入した場合は四万円を徴収します」
茨城県神栖(かみす)市の太平洋沿いを走る「波崎シーサイド道路」にある私有地通行を巡り、43歳の男性にけがを負わせたとして、神栖警察署は12月5日、傷害の疑いで同市の70歳の男性を逮捕した。
11月8日、70歳男性の自宅前路上でお金を払え、払わないのトラブルになり、43歳男性が正面を向いて立っていたことを承知で車を急発進させて轢(ひ)いた疑い。被害男性は腰骨を折るなど全治2ヵ月の重傷を負いながら自ら警察に通報した。一方、逮捕された男性は黙秘している。
波崎シーサイド道路は、鹿島臨海工業地帯の開発に伴い、1970年に開通。その後、今日まで続く、自治体と個人による「にらみ合い」が発生した。’96年、今回逮捕された男性の父親が「シーサイド道路が、私の私有地の上を通っている」として裁判を起こした。父親側が勝訴したため、神栖市は封鎖された道路を私有地として認め、進入を防ぐ看板を設置。逮捕された男性は若い頃から定職には就かなかった模様で、私有地内にある小屋から進入者を監視。当初、通行料500円、無断通行者から1万円を徴収していたが、その後、4万円まで跳ね上がった。ある神栖市議会議員はこう明かす。
「この男性は過去にも逮捕歴があるんです。知人に向けて水中銃に装着したもりを発射したこともあった。普段はおとなしいけど、お酒を飲むと豹変する。観光客が間違って進入して、今回のようなトラブルになることを防ぐために、あの道に看板をたくさん作ったんですが、ほとんどが税金で賄われているんです」
解決に向けて動こうとしている神栖市役所関係者はこう嘆く。
「地権者さんの私有地を買収する交渉を持ち掛けても、こちらの査定額と、地権者さんの要求額に開きがありすぎて、話し合いにならない」
一説によると、神栖市の査定額1000万円に対して、要求額は4000万円とも言われる。「平成の関所」が開く日は来るのだろうか。

『FRIDAY』2022年12月30日号より
取材・文:加藤久美子PHOTO:加藤博人