『はりけ~んず』 M‐1で3000組超の芸人を送り出してきた”前説王”が語る「M‐1の20年」 | FRIDAYデジタル

『はりけ~んず』 M‐1で3000組超の芸人を送り出してきた”前説王”が語る「M‐1の20年」

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「漫才はお客さんを見て途中で方向性を変えられるので性に合っている」と話す前田。日々、ネタが古く見えないよう扱うネタや喋り方には気を付けている
「漫才はお客さんを見て途中で方向性を変えられるので性に合っている」と話す前田。日々、ネタが古く見えないよう扱うネタや喋り方には気を付けている

「年末になると、街で見かける二人組がみんな漫才師に見えるんですよ」

毎年12月に決勝が行われるお笑い界のビッグイベント『M-1』を、違う角度から見ている芸人がいる。予選でMCを務める『はりけ~んず』だ。これまで3000組超の芸人を舞台に送り出し、袖でそのドラマを見守ってきた正真正銘の「お見送り芸人」である。冒頭はボケ担当・前田登(52)の”年末あるある”だ。

前田「大阪から東京に出てきて、新井義幸(51)とコンビを結成。『極楽とんぼ』さんや月亭方正さん(54)らと若手時代を過ごしましたね。当時、東京の吉本は劇場を持っていなかったので、自分らで劇場を探して、舞台の建て込みをしました」

新井「ネタをやった後、急いで裏に回って、音響と照明をやったな(笑)」

前田「今からしたら無茶苦茶や(笑)。その後、渋谷と銀座に吉本の劇場が完成したんやけど、僕らが28歳の時かな。どちらの劇場もなくなってしまった。そんな時、吉本興業の谷さんって社員さんが、前説の仕事をくれたんです。島田紳助さん(66)もかわいがってくれて『開運! なんでも鑑定団』(テレビ東京系)や『新伍&紳助のあぶない話』(フジテレビ系)などの前説をやらせてくれたからなんとか食えた。『なんでも鑑定団』では、放送後、1年くらいで前説になったので、最終的にスタッフ含め中島誠之助先生(84)の次に古参になりました(笑)」

その後、『世界ウルルン滞在記』(TBS系)の前説なども担当。

前田「もともと台本がほぼない感じで漫才をやってはいたんですけど、前説でアドリブ力は相当鍛えられましたね。とある番組で、ゲストが遅刻して場を繋がなければいけなくなった。ところが、スタッフからは『前説中にゲストが遅刻していることは言わないでくれ』と言われて。どれくらい遅れるかもわからない中、90分ぶっ続けでアドリブ漫才をしました」

新井「20分経った頃から、お客さんも『あれ? おかしいな?』って空気になってきて、まったくウケなくなった(笑)」

前田「不思議なことにそれでもネタをやり続けたらまたウケるようになるねん! 会場に謎の一体感が生まれて、最後は大盛り上がり。芸人の間では、吉本の”前説王”言われとんちゃいますかね」

気付けば芸歴は10年を越えていた。

前田「僕らは第1回から『M-1』の前説をやっていますけど、実は本選には一度も出ていないんです。’01年の第1回の時点で、すでに結成11年目。当時は結成10年以内の漫才師でなければ出られなかった。ほぼ同い年の『中川家』や『ますだおかだ』、『ハリガネロック』は出場していた。あの時代に出場したかったなあ」

新井「当時は賞レースで優勝しても、賞金100万円くらいだったところ、『M-1』は1000万円。みんなが色めき立つ中、完全に蚊帳の外でしたね」

そんな二人に谷さんが、『M-1』予選MCの仕事を持ってきたという。

前田「掴みのボケの邪魔にならないようコンビ名イジリはしないようにしています。また、ネタ被りしたらアカンから時事ネタもご法度。そんな中で、会場にきているコアなお笑いファンを盛り上げなければあかん。色んな制限がある中でアドリブ漫才をやってきた経験が活きたんですわ。舞台袖では緊張をほぐすために、演者の子に話しかけたり……」

新井「人によっては、僕らへの余計な挨拶の負担を省くためにわざと目を合わせないようにしたりな(笑)。その後、色んな賞レースから話がきて……。『M-1』に『R-1』、あとは吉本主催の犬の芸を競う大会まで、ワンと名の付く賞レースは全部僕らがやりました(笑)」

前田「毎年新しいお笑いを間近で見られるのは刺激的。特に’19年の準決勝で『ミルクボーイ』を見た時は衝撃を受けた。完璧な構成とお客さんの爆笑する姿に『あ、優勝するわ』って思いました。昨年、決勝に進出した『ランジャタイ』も、相当突飛なネタでしたけど、大会の流れを変えた麒麟児やと思います」

先日行われた『THE W』でも準決勝の予選MCを担当。”前説王”に見送られ、新たな王者が今年も誕生する。

上京後、前田(左)は同じ喫茶店でアルバイトをしていた俳優志望の新井を誘って、『はりけ~んず』を結成した
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本誌未掲載カット 『はりけ~んず』 「ワンと名の付く賞レースは全部僕らがやりました」
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『FRIDAY』2022年12月30日号より

  • PHOTO足立百合(1枚目) 中村和彦(2枚目)

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