大学選手権決勝 明治対天理 最大の見所は東西スクラム対決

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大学選手権準決勝の早稲田戦。後半34分にナンバー8の坂和樹がトライを決めた

今年のラグビー大学選手権決勝は2018年1月12日、東京の秩父宮ラグビー場でおこなわれる。明治大学の運動量とスキル、天理大学の留学生ランナーの破壊力と、多くの見所がある。そんな中、もっとも注目されるのはスクラムだ。軽い反則が起きた後にできる、攻防の起点。両軍のフォワード8選手が、互いに1列目から順に3人(左右のプロップ、中央のフッカー)、2人(ロック)、3人(左右のフランカー、中央のナンバーエイト)という陣形を組んでぶつかり、足元へ転がる球を奪い合う。ラグビーではボールの位置より前でプレーできない。それゆえ両軍の境界線であるスクラムを押した側は、勢いをつけられる。スクラムは、この競技の普遍的なキーファクターである。

まして今回は、そのスクラムを長所とするチーム同士の対戦である。視線が集まるのは当然だ。明大4年でプロップの祝原涼介は、こう展望する。

「重さと塊の勝負になる」

2季連続でファイナリストとなり22年ぶり13回目の日本一を目指す明大では、リコーのフッカーだったOBの滝澤佳之コーチが昨季からスクラムを指導。部是に「前へ」を掲げる母校の後輩へ、「スクラムを大事にするという感情、感覚」を見つめ直すよう促した。

彼は独自の言語を用いた。

センターラインと呼ばれる両軍スクラムの間の中間線は、「ルビコン」と命名。ローマ北部を流れるルビコン川は、部歌の歌詞にも登場する。スクラムで相手よりも先に制したい区画が、クラブのシンボルとリンクした格好だ。滝澤は「ルビコンを取れ!」と、学生を叱咤してきた。

8人がひとつの拳のようにまとまるべきだと、「ナックル」というワードも作った。名門校に集まる才能は、「重さ」を活かすというひとつのベクトルに集約されてゆく。

顕著に成果を現したのは、加盟する関東大学対抗戦Aでの帝京大戦だ。2018年11月18日の秩父宮で何度も「川」を越え、23―15と常勝軍団を破った。

「滝澤さんが来られた昨年はバックファイブ(ロック、フランカー、ナンバーエイト)にフォーカス。そのバックファイブの押しがよくなった分、今年はその押しを僕ら前3人が相手へ伝えることに力を入れました」

祝原が手ごたえを語る一方、滝澤は部員から称賛されるたびに「それは気のせいですよ」と顔をそむける。「ルビコン」「ナックル」といった標語も「…適当に言っただけです」とし、いつも「選手が一生懸命やってくれているだけ」と強調する。熱さと慎ましさが絶妙に混ざり合うのがよい。

天理大初優勝の鍵を握る二人。ナンバー8のファウルア・マキシ(左)とセンターのシオサイア・フィフィタ(右)

対する天理大は、関西大学Aリーグを3連覇中。選手権では7季ぶり2度目の決勝進出で初優勝を狙う。

決勝戦の登録フォワードの平均サイズは、明大の「186.5センチ、103.5キロ」に対して「176.0センチ、97.0キロ」(公式記録を参照。小数点第2位以下切り捨て。以下同)。スクラムでも、「小よく大を制す」の姿勢を貫く。味方同士が素早い予備動作によってきつく密着。ロック陣はトンガ出身のアシペリ・モアラも「膝は地上1センチの位置」を徹底し、とにかく小さな「塊」を作る。

緻密な組み方を何度も再現できる裏には、反復練習がある。長らく天理大のスクラムを見る天理高校出身の岡田明久コーチは、教え子をただ褒める。手柄を誇らないのは、明大の滝澤と同じだった。

「最近は、スクラムをバンバン押すチームが増えてきた。天理大もただ自軍ボールを出すだけじゃなく、攻撃的なスクラムを組もう、となった。そのためには練習で数を組まなあかんのですが、そこで嫌な顔をせず、むしろもの足らんからと『もう1本お願いします!』と言うようになった。そこから、強くなりましたわ」

今年1月2日に秩父宮でおこなわれた選手権準決勝では、強固な「塊」が右、左と、何度も圧をかける方向を変える。相手プロップの背中を丸め込んで押すなど、登録フォワードの平均で「7.1センチ」「9.7キロ」も上回る帝京大を翻弄。結果、29―7で王者に土をつけた。岡田のたとえ話が活きる。

「柔道をされたこと、あります? あれ、先に掴んだ方が投げやすいでしょう。ということで、スクラムでも相手より先に低くスパッと当たることにこだわっています。結果も出たことで自信も得たと思いますわ」

戦前の選手、コーチが気にするのは、当日のレフリーの判定とそれへの対処方法か。どちらもスクラムを組む際は、自分たちの順法精神をアピールし、担当する大槻卓レフリーの笛をもとに自分たちの組み方を改善してゆかねばならない。そうでなければ、意図しない反則をきっかけにいらぬ失点を食らいかねない。

その点、明大の祝原は「修正力がついた」と語る。天理大対帝京大戦と同日に行われた早稲田大学(早大)との準決勝では、序盤に2本続けてコラプシング(故意に崩す反則)を取られながらもバインドの工夫で形勢を逆転させた。

バインドとは、スクラムを組むために互いのジャージィを掴み合う動作である。この間は重圧をかけ合わない決まりとなっているものの、この日の麻生彰久レフリーはバインド時の駆け引きをアバウトに見ていたのではと祝原は分析。組み合う前から早大にのしかかられていると感じた時、早大が何も注意されなかったからだ。

明大は3本目以降から笛の意図をかみ砕き、相手との距離感を詰めて早大と同じようなバインドを意識。すると本来の力を発揮し、31―27で勝った。選手が有事にばたつかなかったことには、滝澤コーチも喜んだ。

「選手たちが、グラウンドで対応できるようになってきた」

かたや天理大陣営も、ことがうまく運ばない時の次善策を用意していようだ。フッカーの島根一磨主将によると、左プロップの加藤滉紫は「色んなタイプのスクラムに対しても、『ここはこう組んだ方がいい』と色々と(対応策を)教えてくれる」。明大が早大戦で披露したバインドの妙については、岡田が帝京大戦前にこう言及していた。

「レフリーのコールに合わせて掴まな、ダメです。その掴んだ時、(相手に重圧を)かけすぎてもだめで、かけられすぎてもだめ。そこにこだわるか、こだわらんか(が肝)ですわ」

両軍は今季、春、夏に練習試合をして天理大が2勝している。しかし、明大の祝原は、こう話す。

「夏の対戦時は僕ら3人がバラバラになった。今回は3人のまとまりにフォーカスします」

スクラムを改善し、過去の戦績をなかったことにしたい。

岡田は、実は自身の母校でもある明大との頂上対決に「がっちゃーん! いわします」と簡潔に意気込む。

キックオフ時間は14時15分。味わい深いセコンドに見守られる若きフォワードたちが、まばたき厳禁の抗争を繰り広げるだろう。

  • 取材・文向風見也

    (むかいふみや)スポーツライター。1982年、富山県生まれ。成城大学文芸学部芸術学科卒。2006年よりスポーツライターとして活躍。主にラグビーについての取材を行なっている。著書に『サンウルブズの挑戦 スーパーラグビー 闘う狼たちの記録』(双葉社)がある

  • 写真築田純/アフロ

Photo Gallary2

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