総額は昨年の倍以上&ウクライナへ弾薬も…世界4位を目指す韓国「武器輸出大国」の危うさと矛盾
総額170億ドル(約2兆3200億円)――。
今年11月時点での韓国の武器輸出額だ。すでに過去最高だった昨年の70億ドル(約9500億円)を、倍以上も上回っている。ストックホルム国際平和研究所によると、世界の武器輸出による韓国の占有率は2000年に31位だったが昨年は8位に上昇。存在感を示している。
「1960年代までは朝鮮戦争の影響から在韓米軍が大規模に展開していましたが、1969年1月に就任したニクソン大統領は同軍を縮小。韓国は1970年代から自国の軍事産業の育成に乗り出しました。2010年代に入ると、政府の積極的な支援で飛躍的に成長します。韓国経済が伸び悩む中、兵器生産は輸出額が伸びている数少ない分野なんです。
尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領は今年11月、武器輸出促進に関する会議を開催しました。『軍事産業は成長をうながすエンジンであり、技術的な競争力を持つ必要がある』と表明。米国、ロシア、フランスに次ぐ世界4位の武器輸出大国を目指すとしています」(韓国紙記者)
「平和」を唱えながら……

韓国の影響力は、実際の紛争にも及んでいる。ウクライナへ、間接的に弾薬を送るとみられるのだ。
「米国国防総省によると、ウクライナは1日に7000発ほどの弾薬を使っているそうです。その大部分が米軍から提供されたもの。米国はロシアの侵攻直後に、韓国にも武器の支援を求めました。しかし韓国政府は、『ウクライナに殺傷兵器を輸出しない』という方針を打ち出しています。米国が間に入り、米軍の弾薬の不足分を韓国が補うという形で話が進んでいるといわれるんです」(同前)
前のめりな韓国の姿勢を、どうとらえるべきなのだろうか。韓国の武器輸出の拡大は「危うさをはらんでいる」と指摘するのは、『コリア・レポート』編集長の辺真一氏だ。
「韓国の軍事予算は、年々伸びています。武器は原発とともに、韓国の輸出産業を支える2本柱といえるでしょう。ポーランドは、数千億円規模の契約で自走砲や戦車を購入しました。しかし韓国の歴代政権は『朝鮮半島の平和の実現』を唱えてきた。口では『平和』を目指すとしながら、戦火を拡大させる武器を世界中に広めているのが現状です。
韓国は06年10月に北朝鮮が核実験をした際、同国が中東やアフリカなどの第三国へ武器を輸出することを禁じた国連安保理決議に賛成票を投じました。朝鮮半島の平和を担うべき相手の武器輸出には反対しながら、自分たちはどんどんおし進めている。強い矛盾を感じます」
ウクライナの戦地から遠く離れた韓国。NATO(北大西洋条約機構)諸国への武器の売り込みに、ますます拍車がかかりそうだ。

写真:AP/アフロ