インターフォンカメラにコンプライアンス、新型コロナ…“突撃”できなくなった「ヨネスケ」のいま | FRIDAYデジタル

インターフォンカメラにコンプライアンス、新型コロナ…“突撃”できなくなった「ヨネスケ」のいま

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地球がダメなら宇宙があるさ!? 

最新型しゃもじ片手に突撃ポーズを決めるヨネスケ師匠
最新型しゃもじ片手に突撃ポーズを決めるヨネスケ師匠

「あの人はね、それこそいきなり突撃ですよ。俺が出てる浅草演芸ホールまでやってきて、こっちは出る気なかったのに“やります”って言うまで引き下がらないんだ。うまいんですよ、持って行き方が」

そう話してくれたのは「突撃!隣の晩ごはん」でおなじみのヨネスケ師匠。1985年にスタートし、本体の番組が終了してもなお特番や別番組で2016年まで続いたこの人気企画、自身のYouTube「突撃!ヨネスケちゃんねる」で再開しようとしていたところ、コロナで出鼻をくじかれた形ではあった。しかし「あ、楽でよかったです」と、ご本人は特に未練はなかったのだ。

ところが、コロナなんかで突撃を終わらせたくないと、虎視眈々と狙っている人物がいた。それこそが「あの人」。『日本以外全部沈没』『ヅラ刑事』など、どうかしている作品を次々と世に送り出すお馬鹿映画監督・河崎実氏だ。

元祖突撃レポーターに突撃するとは、河崎監督さすがとしか言いようがない。映画のタイトルは、ずばり『突撃!隣のUFO』。ヨネスケはUFO調査団体“URL”の捜査官としてUFOに不法侵入。キャトルミューティレーションされた牛を調理中の宇宙人に、お世辞を言いながら果敢に立ち向かっていく。そんなストーリーもさることながら、地球がダメならヨネスケを宇宙に行かせようという発想自体が既に、どうかしている。

近年、何かと問題にされるコンプライアンス。それが原因で高座にかけられない落語の演目も増えたという。近所の与太郎の馬鹿話が聞けなくなる日も近いのか?(撮影:安部まゆみ)
近年、何かと問題にされるコンプライアンス。それが原因で高座にかけられない落語の演目も増えたという。近所の与太郎の馬鹿話が聞けなくなる日も近いのか?(撮影:安部まゆみ)

突撃した家6000軒! 激怒されての土下座は数えきれず… 

「突撃!隣の晩ごはん」は『ルックルックこんにちは』(日本テレビ系列)のコーナー企画として誕生した。ヨネスケが夕飯時の家庭に突撃し、毎週3組の晩ごはんをレポートする。突然のヨネスケ来襲に慌てふためく家族の様子は、理屈抜きに面白かった。

時間が早い1軒目では料理中の台所に遠慮なく上がり込み、「これは何、煮物?」とか言いながら鍋の蓋を容赦なく開ける。程よいタイミングの2軒目では「今日のおすすめは刺身? うん、うまいね」とガンガン試食。3軒目では「もう食べちゃったわよ」とおののく奥さんを尻目に残り物をアップで映し、風呂上がりなのか半裸で晩酌中のご主人にビールを勧められたりしていた。そしてどの家庭のどの料理にも人の温もりが感じられ、家族っていいなと思わされるのだった。

「6000軒以上突入してますからね。昔はピンポ〜ンと押してそのまま入っていっちゃったけど、いまってインターホンにテレビカメラがついてるじゃない。だから無理じゃないの? 前はついてなかったからいくらでも入れたんだ」(ヨネスケ師匠/以下同)

いや「いくらでも」と言われても、普通はそうそう入れないだろう。そこは師匠の押しの強さと人気の賜物、と思いきや…。

「突撃したうちの3分の1はNGですよ。本当に怒ってる人は目を見りゃわかるから、そしたらスタッフ全員で “申し訳ございませんでした!”って土下座。そんなとこは映しませんけど、きちんと謝ったんで警察沙汰にはならなかった。喧嘩の仕方がうまかったってやつだね。10年、20年やってたら皮膚感覚でわかるようになるんです。失礼だけど女の口説き方と同じでね、鼻から抜けてる“ダメ”はオッケーなんだ」

北海道から宮古島、果ては日本を飛び出して世界へ。「耳長族も首長族も首狩り族も行ってる。行ってないのは中南米だけです」。番組終了も何のその、手を替え品を替え放映し、日テレのみならずテレビ朝日でも。番組で生まれた企画が局をまたぐなんて聞いたこともない
北海道から宮古島、果ては日本を飛び出して世界へ。「耳長族も首長族も首狩り族も行ってる。行ってないのは中南米だけです」。番組終了も何のその、手を替え品を替え放映し、日テレのみならずテレビ朝日でも。番組で生まれた企画が局をまたぐなんて聞いたこともない

マスク装着で、ますます世知辛く。人と話さないのが当たり前の世の中は怖い

歓迎ムードには地域差があり、大阪は師匠曰く「入れ食い状態」。いちばん手強かったのは田園調布で、立て続けに36軒断られたという。

「3回行ってるらしいんですけど覚えてねぇんだ。自分の中では1回しか行ってないことになってる。脳が記憶を消してるんですよ。ダメなことはすぐ消していかないと、翌週の晩ごはんで気持ちが保てないからね。 

始めた頃は“落語家がこんなことして”と言われたもんだけど、落語家だからできたのかもしれないね。上下関係の厳しい世界だから、土下座もやり慣れてた」

長い間には同じ家を2度突撃したことも。「前にも来たじゃないのよ。もう孫が生まれたよ」と言われたのも笑い話だ。

「そんなのもみんな歴史ですよね。いまは息苦しくなっちゃった。昔は突撃された家の子が次の日学校に行くと、“おめぇんとこテレビに出てたな”ってすげぇ人気だったけど、いまは何が原因でいじめられるかわかんないから難しいよね」

ヨネスケがよそ様のごはんをつまみ食いし、毒蝮三太夫は巣鴨のご老人に「ババア元気か」と声をかける。やたらとコンプライアンスが問題となる昨今、そんな愛の溢れる交流には難しい局面もあるのかと思うと、寂しいものがある。

「また突撃が見たいとみんな言うけどね、いまの世の中じゃ何かと大変だし、俺自身、あれは若いからできたんで。この歳になると“味を出そう”というそれだけです。その味でもってUFOに不法侵入したのが今回の映画だけど、もし宇宙人がこれを観て俺を訴えてくれたらもう、最高だよね(笑)」 

河崎実監督と。ちなみにこの映画、エンディングテーマはポータブル・ロックが担当。おしゃれの権化、野宮真貴さんが歌っている。「こんな映画なんですよと説明したんですけどねぇ」と監督はまんざらでもない様子
河崎実監督と。ちなみにこの映画、エンディングテーマはポータブル・ロックが担当。おしゃれの権化、野宮真貴さんが歌っている。「こんな映画なんですよと説明したんですけどねぇ」と監督はまんざらでもない様子
池袋シネマ・ロサ他で2月3日(金)ロードショー。共演は濱田龍臣、服部有菜(AKB48)、森次晃嗣、矢追純一、いしだ壱成、三上丈晴(『月刊ムー』編集長)。地球一の不法侵入者、ヨネスケの活躍が光る!
池袋シネマ・ロサ他で2月3日(金)ロードショー。共演は濱田龍臣、服部有菜(AKB48)、森次晃嗣、矢追純一、いしだ壱成、三上丈晴(『月刊ムー』編集長)。地球一の不法侵入者、ヨネスケの活躍が光る!

ヨネスケ(桂米助/かつら・よねすけ)落語家、タレント、YouTuber。落語芸術協会所属・参事。’80年代より、カタカナ名のヨネスケでレギュラー出演した「突撃!隣の晩ごはん」は伝説の名物コーナーで、未だにパクリやパロディーに頻繁に使われている。主な著書は『ヨネスケの突撃!隣の晩ごはん』(NTT出版)、『ヨネスケの駅弁・空弁600選』(辰巳出版)など。自らが監修した空弁に「ヨネスケのこだわり天むす」がある。

■突撃!ヨネスケちゃんねる【落語の話と晩ごはん】はコチラ

 

  • 取材・文井出千昌撮影安部まゆみ

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