白い下着以外は脱がして没収? 「ブラック校則」が子供たちを壊す

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「女子の下着の色が白と指定されており、修学旅行の荷物検査で一部分が白でない下着を持っていた生徒が没収され、そのまま2泊3日をノーブラで過ごさせられた」(佐賀県・公立中学校・保護者)
「『下着の色は白のみ』という指導をされ、改善するまで教室に入れなかったり、行事に参加できなかったり、下着を脱がされたりする」(奈良県・公立高校・当事者)
「髪を短めにしていたのに、くせ毛の前髪を手で伸ばされ『眉毛にかかっているからアウト』と指導された。その夜に自分で前髪を切ったが、翌日の再検査で『自分ではなく床屋で切ってもらって領収書を見せろ』と要求された」(埼玉県・公立高校・当事者)
「子どもの髪の地色が茶色く、そのことを指導されたため美容院で黒く染めたが、翌日まだ茶色いと指摘された。白髪染めを何度も使い、かつらのように真っ黒になったらようやく許してもらえた。以降も毎月『光を当てたら髪色がまだら。染めているはず』と言われる」(福岡県・私立高校・保護者) ※すべて『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(荻上チキ・内田良 東洋館出版社)からの抜粋

こんなトンデモ校則がいま、子供たちを縛り付けている。

昭和の時代、教師による体罰は珍しいことではなかった。校内暴力が社会問題化していた当時、体罰とともに、生徒たちの管理という目的で「前髪は眉毛の上で揃える」「スカートの丈はひざ下10センチ」などといった理不尽な校則も日本各地の学校で見られた。こうした空気が残る1990年7月、神戸市内の高校で起こった『校門圧死事件』は生徒らを厳しい校則で厳重に管理していた当時の学校の現状を世間に広く知らしめ衝撃を与えた。この高校では教師らが校門付近に立ち、ハンドマイクでカウントダウンをしながら、生徒たちの遅刻指導をしていた。登校門限時刻に合わせ一人の教師が門扉を閉めようとしていたところ、女子生徒が閉まる門の間に駆け込んできた。だが教師は門を閉める手を止めることはなく、女子生徒は門に頭部を挟まれ、死亡したのだ。

それから30年。“荒れた学校”が少子化とともに減少したと思しき現在でも、こうした校則は残っているどころか、生徒たちの人権にかかわる『ブラック校則』が、いたるところで存在する。

2017年、生まれつき茶色の頭髪を、黒に染めるように学校から強要されたことで不登校になったとして、元生徒(19)が大阪府に慰謝料220万円の支払いを求める訴訟を起こした。大阪府は「茶髪は生まれつきではない」などとして全面的に争っている。頭髪の色は黒、という校則は現在も全国の学校にあり、そのため「生まれつき茶色の髪を黒く染めるように学校に命じられる」という経験をした生徒たちも後を絶たない。

この『黒染め訴訟』の報道をきっかけとして、評論家の荻上チキ氏らが中心となり『ブラック校則をなくそう! プロジェクト』を発足。プロジェクトに賛同する署名を集めたほか、広くアンケートを実施し、『ブラック校則』の実態について調査を行なった。この結果をまとめたのが今年7月に刊行された『ブラック校則 理不尽な苦しみの現実』(荻上チキ・内田良 東洋館出版社)だ。ここには、校内暴力で荒れた学校を知る世代も驚くような現状が記されていた。

『黒染め訴訟』同様、生まれつき茶色の頭髪を黒く染めるよう学校から求められるのは決して珍しくなく、違和感を感じ学校に相談した保護者が学校から「規則ですから」「嫌なら辞めても良い」と言われた事例もあった。また同プロジェクトが今回行った調査で最も多くの声が寄せられたのが冒頭でも挙げたような「下着チェック」の増加だ。しかも地域限定というわけではなく全国的に見られる。

「下着の色は白のみ。中学3年の時に、プールの授業があった日の放課後に男性教諭から呼び出され『下着、青だったんでしょ? 白にしなきゃダメだよ? 気をつけてね』と言われた」(愛知県・公立中学校・当事者)

このように白い下着の着用が校則で規定されている学校がいくつもある。また、

「『汗をかくから』という理由で、地域全体で小・中の体育の授業では肌着着用が禁止。男女一緒で、倒立の練習など服がはだけるような運動もしている」(愛知県・公立小学校・保護者) 

と、肌着そのものの着用を禁じている学校もあるのだという。

『ブラック校則をなくそう!プロジェクト』の発起人であり同書の著者である荻上チキ氏は、今回寄せられたブラック校則の実態についてこう語る。

「1980年代が管理主義と言われていた時代だと思うんですが、むしろ今回のアンケートでは下着の色や毛髪の色などについてチェックを受けたという声が多かった。かつてのような丸刈りや体罰などは減っていますが、ソフトな管理が増えているなという印象です。少子社会になり、学校側が『非行に走らない良い子が通っている』ことをアピールするためにこうした管理が増えているのではないでしょうか」

同プロジェクトではすでに3万人の署名が集まっている。今年、機を見て文科大臣に提出する予定だという。最終的な目標は、文科省がこの現状を認識し、通達を出してもらうことだ。

「校則の厳しい学校というのはいじめが増えるというのは、それまでの研究からも明らかです。ストレスを与え続け子供達の自由を奪うことで、休み時間などでのストレス発散方法として『いじめ』に向かう流れなのだと思います。環境を整えるためには校則を厳しくしないほうが良いんです。

また学校校則の問題について議論する時には『嫌なら辞めれば良い』という声もよく聞くことがあるんですけど、不登校はいま現在、10万人から12万人ぐらい。10パーセントが学校の校則などがミスマッチで学校に通えなくなったという調査結果が出ています。『嫌なら学校に行かなければ良い』というのではなく、学校が嫌で行けない子がそれだけいるという現状をどうすれば良いのかを考えることが大事な議題だと思います」

不登校に関しては昨年11月に衝撃の報告が発表されている。小・中学校で教員に給食の完食を指導されたことがきっかけで不登校や体調不良になったなどの相談が2017年5月~2018年9月、支援団体である『日本会食恐怖症克服支援協会』に延べ1000人以上から寄せられていたことが分かったのだ。嫌いな牛乳を無理やり飲まされたことがきっかけで子供がPTSDを発症し訴訟に至ったケースもある。不登校の増加を食い止めるのは、子供への人権侵害にも等しい完食指導や『ブラック校則』を見直すことから始まるのではないか。

  • 取材・文高橋ユキ

    傍聴人。フリーライター。『暴走老人・犯罪劇場』(洋泉社新書)、『木嶋佳苗 危険な愛の奥義』(徳間書店)、『木嶋佳苗劇場』(宝島社)、古くは『霞っ子クラブ 娘たちの裁判傍聴記』(新潮社)など殺人事件の取材や公判傍聴などを元にした著作多数。

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