日本でも広がる「働かなくてもいい」富裕層の増加…いまフェラーリ&ランボルギーニが爆売れのワケ | FRIDAYデジタル

日本でも広がる「働かなくてもいい」富裕層の増加…いまフェラーリ&ランボルギーニが爆売れのワケ

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都心でよく見かける多くの高級外車 …

東京都心において最もよく見かける高級外車といえば、メルセデスベンツGクラスのゲレンデだ。芸能人も多く愛用するこの車、グレードやオプションなどを積み上げれば2000万円以上かかるような超高級SUVであるが、正規代理店では品薄状態が続き、一部では中古車価格が新車価格を上回るほど人気化している。

ゲレンデの他にも、ポルシェのカイエンやランドローバーのSUVにも数多くすれ違う。流石に数は限られるが、マセラティのレヴァンテ、ベントレーのベンテイガ、ランボルギーニのウルスと遭遇することもある。2022年11月に日本でもお披露目されたフェラーリ初のSUV「プロサングエ」にもいずれお目にかかれそうだ。 

フェラーリもランボルギーニも売れに売れている

日本自動車輸入組合(JAIA)によると、フェラーリが前年比126.9%増加の1,379台、ランボルギーニが同128.0%増加の553台、マセラティが同120.0%増加の1,105台、ポルシェが同102.1%増加の6,319台と売れに売れているのだ(2022年1月から11月までの累計新規登録台数)。SUVの導入効果もあり、ロールスロイスやベントレーも、同様に昨年よりも多く売れている。

また、昨年、日本で4台しか売れていない超高級外車ブガッティは、今年は既に4台売れている。因みにブガッティ・シロンの価格はベース価格で3億円越えだ。別世界の話のようだが、東京・南麻布にある正規販売店「ブガッティ東京」には、現在4.5億円越えといわれるブガッテイ・シロン・スポーツの限定車が鎮座している。

東京都心を走る外苑西通りや青山通り、目黒通りや世田谷の環八沿いなどには、その界隈の富裕層をターゲットにした高級外車ディーラーが軒を連ねている。こうしたディーラーでは、高級外車を複数台保有したり、長年に渡り乗り継いでくれる富裕層を優遇し、限られた供給体制のなか、最高級グレードや限定特別車などを、優先的に供給しているのだ。

ベース価格で3億円越えというブガッティ・シロン。日本では、今年既に4台売れている。あの前澤友作さんも所有しているとか。写真は、2017年のジュネーブ自動車ショー(写真:アフロ)
ベース価格で3億円越えというブガッティ・シロン。日本では、今年既に4台売れている。あの前澤友作さんも所有しているとか。写真は、2017年のジュネーブ自動車ショー(写真:アフロ)

「カネ余り」の恩恵を最も受けるのは誰か

高級外車の販売が好調な背景には、「世界的なカネ余り」も関係してきた。コロナショックにより、日米欧では、史上最大規模の金融緩和策がとられてきた。

このため、世界中でおカネが市中に流れ込むことになり、株式市場や不動産市場が高騰したのだが、こうしたカネ余りの恩恵を最も受けたのが、既に資産・資金を十分に持ち、その資産・資金を元手に更なる投資や消費ができた国内外の富裕層だったワケだ。

足元では、既に利上げを伴う金融引き締めに転じた米国や欧州に続き、ついに日本でも日銀が従来の金融緩和策を「修正」した(2022年12月)。しかしながら、現在の国内経済の状況を勘案すれば、直ちに大幅な金融政策の変更は困難であり、しばらくは従来に準じたカネ余り状態が続きそうだ。

「アマンレジデンス東京」や「三田ガーデンヒルズ」

東京都心では、こうした富裕層を見込み数十億円クラスの不動産物件が次々と登場している。現在開発や募集が進む麻布台ヒルズの「アマンレジデンス東京」や、「三田ガーデンヒルズ」といった高級ホテルレジデンスや高級マンション、三井不動産レジデンシャルによる高級シニアサービスレジデンス「パークウェルステイト西麻布」などがその象徴といえよう。

更に、株式市場や不動産市場からも溢れたおカネが、資産価値の上昇を見込み、冒頭のフェラーリやランボルギーニなど高級外車を筆頭に、ロレックス・デイトナやパテックフィリップといった高級腕時計、ナイキなどスニーカー、トレーディングカード、高級ワイン、装飾品、デジタルアートなどにも流れ込んでいるのだ。

こうした富裕層は、その資産を元手にレバレッジをかけたり、ハイリスクハイリターンな投資をしたり、地域や通貨や商品の分散などを図ることで、益々その資産を増やすことに成功することになる。まさに、投資が投資を生む世界だ。

最上階は300億円といわれる「アマンレジデンス東京」。森ビルが手掛ける虎ノ門・麻布台プロジェクトのメインタワーの最上部(54階-64階)に位置する。2023年の竣工時には日本で最も高いタワーに(森ビル株式会社のプレスリリースより)
最上階は300億円といわれる「アマンレジデンス東京」。森ビルが手掛ける虎ノ門・麻布台プロジェクトのメインタワーの最上部(54階-64階)に位置する。2023年の竣工時には日本で最も高いタワーに(森ビル株式会社のプレスリリースより)
(森ビル株式会社のプレスリリースより)
(森ビル株式会社のプレスリリースより)

平日の「六本木ヒルズ」オープンテラスでの光景

確かに、東京都心などを歩いていると平日なのに百貨店など商業施設や飲食店も含め、小奇麗でブランド物で着飾った紳士淑女で溢れて居たりする。例えば、六本木ヒルズにある「グランドハイアット東京」のダイニング「フレンチキッチン」では、優雅にオープンテラスで朝食をとったり、ワインを傾けながら、2時間を超えるランチを楽しむ紳士淑女の姿も多く見かける。けやき坂通りを挟んで反対側にあるベーカリーカフェ「bricolage bread and co.」でもテラス席は愛犬を連れた近隣の紳士淑女で朝から常に賑わっている。

以前から一定数は存在しているものの、退職者や年金生活者に加え、いわゆる定職につかず、不動産収入や金融資産運用などで生活できる層が増えてきているとみられる。

具体的には、相続資金、退職金や年金受給、不動産からの賃貸収入、株式の売却益や配当などにより、また、FXや仮想通貨による売買益、YouTubeなどSNSなどによる広告収入、デジタル関連の起業やその株式の上場や売却、ストックオプションなどにより、巨額の富を得て、働かなくても暮らしていけるストックリッチ、キャッシュリッチな人々が増えているのだ。

「三田ガーデンヒルズ」のモデルルームイメージ画像(PARK MANSION棟)(三井不動産株式会社のプレスリリースより)
「三田ガーデンヒルズ」のモデルルームイメージ画像(PARK MANSION棟)(三井不動産株式会社のプレスリリースより)
綱町三井倶楽部から臨む完成予想イメージ画像(左中央)(三井不動産株式会社のプレスリリースより)
綱町三井倶楽部から臨む完成予想イメージ画像(左中央)(三井不動産株式会社のプレスリリースより)

日本の富裕層は336万人に達している

かような状況を裏付けるように、保有する株式や不動産価値の増加や新たなる投資で得られた利益などもあり、日本を含む世界の富裕層数は増加している。

クレディスイスの「グローバル・ウェルス・レポート2022」によると、日本の富裕層(100万ドル以上の資産を持つ成人数)は、336.6万人に達している(2021年)。さらに、2026年には、2021年と比較してなんと42%増の479万人に達すると予想されている。

世界最大の富裕層国である米国でも富裕層数は増加しており、2021年は2,448万人であり、2026年には13%増加して2,766万人に達するという。

日米に加え中国、インド、ブラジルなどにおける富裕層の増加を主因に、2021 年末の全世界の富裕層の数は、6,248万人に達している。2026年には40%増加して8,756万人となり、今後5年間で約2,500万人も増加するという。

「消費よりも投資」…岸田政権は「新しい資本主義」と提言するが(写真:アフロ)
「消費よりも投資」…岸田政権は「新しい資本主義」と提言するが(写真:アフロ)

更なる格差社会を生むことにもなる

コロナ禍もあり、人生100年時代、FIRE、早期退職、テレワーク、在宅勤務、ワーケーション、メタバース、べーシックインカム、ワークアンドバランスなどといったキーワードが示し実現しつつあるように、個人における資産運用や働くことの意義やあり方が改めて問われるようになってきている。

日米欧での中央銀行に対する高い信用力と安定的な金融政策により、富裕層の増加が続くことで、消費よりも投資の世界への転換、一部ながら、働かなくてもいい時代の到来が近づいてきているのかもしれない。

もっとも、富裕層の増加と働かなくてもいい時代の到来は、そうでない者との更なる格差を生むことになる。岸田政権の提言する「新しい資本主義」や富裕層を対象とした課税強化の動きも、格差是正が喫緊の課題となっていることの裏返しといえよう。

  • 高橋克英(たかはし・かつひで)

    株式会社マリブジャパン代表取締役、金融コンサルタント。1969年、岐阜県生まれ。三菱銀行、シティグループ証券、シティバンクなどを経て、2013年に同社を設立。世界60カ国以上を訪問。バハマ、モルディブ、パラオ、マリブ、ロスカボス、ドバイ、ハワイ、ニセコ、京都、沖縄など国内外リゾート地にも詳しい。映画「スター・ウォーズ」の著名コレクターでもある。1993年慶應義塾大学経済学部卒、2000年青山学院大学大学院 国際政治経済学研究科経済学修士。著書に『銀行ゼロ時代』(朝日新聞出版)、『なぜニセコだけが世界リゾートになったのか』(講談社+α新書)、『地銀消滅』(平凡社)など多数。

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