百貨店やスーパーマーケットの年末年始の行事のひとつである「福袋」。近年では、オンラインゲームなどでも見られるようになってきたが、物騒な世相を反映してか、「強くなれる」をコンセプトとした新しい福袋が誕生した。その名も『防犯福袋』。
<figure id="attachment_284033" aria-describedby="caption-attachment-284033" style="width: 8256px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b0f69bd2"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/TZ1_2355.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284033" class="wp-caption-text">盾や護身具がたくさん入っている</figcaption></figure>
厳密には袋ではなく箱なのだが、そのフタを開けると、ムチ、攻撃用スティック、盾、止血帯、掛け具など、普通の福袋では絶対にお目にかかれないヤバ目のアイテムがこれでもかと詰め込まれている。裏面には、『本製品はご自宅やご自身の所有する敷地内等でご使用いただくことを前提にデザインされています。外出時に携帯すると法に触れる可能性があります』と、こちらも穏やかでない文が添えられている。
このロールプレイングゲームの装備一式のような福袋、なんとお値段は5万円！　にもかかわらず、11月30日に売り出されるやいなや、翌12月１日には50セットが完売したのだ。
製造・販売したのは、素人ではない。延べ１万人以上の警察官や自衛官へ戦技講習を行ってきた田村装備開発という会社が作ったものでコンセプトは『防犯用福袋』。ギャグではなく、本当の防犯用に販売されたものなのだ。
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「最近、小学校や電車内、大学構内など、かつては安全と思われた場所で、殺傷事件が起きるようになりました。特に気を付けるべきなのが、公共機関を利用するとき。駅などではサスマタを配備するようになりましたが、あれは横から簡単にすり抜けられますし、攻撃力を抑えた形状なので抑止力はゼロに近い。制圧するのは至難の業。なぜあのようなものが広まったのか不思議でならない。本当に役に立つものを作って届けたい――そんな思いから、この防犯福袋が誕生したのです」
そう語るのは、同社代表で、元警察本部警備部機動戦術部隊（通称RATS）の田村忠嗣氏（41）だ。現職時代、警察学校逮捕術大会（徒手）優勝、機動隊逮捕術大会（徒手）優勝の実績があり、武器を持った外国人犯罪集団も制圧し、検挙したことがあるという。
同社は警察や自衛隊の特殊部隊出身のメンバーで構成され、「ガチ」な局面で使用を想定した自衛・防犯グッズも製造・販売している。この福袋の使用例について田村氏はこう語る。
「例えば自宅に強盗が侵入してきました。警察や警備会社に連絡しても到着するまでに時間は要します。独身であれば、金品を盗られることは諦めて逃げ出すことや隠れることができるかもしれない。しかし、家族とくに小さな子どもがいたとしたら、逃げるわけにはいかない。命を守るためにも、何とかしないとなりません」
右利きであれば左腕に盾を装備し、右手でスティックを握る。盾は形状を見てもわかるように先端などで攻撃もでき、両手で攻撃ができる。軽くて頑丈なアルミ合金でできているので、女性でも使用可能だろう。
「大切な人を守るのも、自らを守るのも自分自身です。戦闘訓練を受けていない男性でも、あるいは女性でも、刃物をもった侵入者を制圧できる装備は何か、と真剣に考えました。
攻撃用スティックは、寝転ばした相手の両足のスネを上から押さえつければ女性の力でも相当なダメージを与えられます。ただ、攻撃力が相当高い。自宅外や敷地外で装備していると、銃刀法に該当しませんが、軽犯罪法の取締り対象になりかねない。『からまれると困るから』などの理由で護身用に持ち歩くのは難しい。あくまで家庭を守るためのものですが、であるからこそ、その効果は保証できます。
おかげさまで売れ行きは好調で、現在は品切れとなっています。欲しいという声が500ほど集まれば再製作・販売を考えます」
田村氏はそう語るが、すぐに手に入れたくともできない人のために、簡単な護身術を聞いた。まずは胸ぐらを掴まれた際にどうするか。
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<div data-friday-nextpage-lead="プロの戦闘技術集団が教えてくれた護身術"></div>
「右利きであれば左手で相手の手をロックし、それと同時に右手のスナップを効かせ下から手の甲で金的を打つ。ステップインの際、自分の金的を守るために右足でガードを忘れずに」
襲ってくる相手と距離がある際は近寄らずに逃げるべきだが、距離が詰まった状況での護身術をこう語る。
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「素手で相手の顔を殴ると歯が刺さったり、分厚い頭蓋骨を殴って怪我をしたりしかねない。親指と人差し指でＬ字をつくり、喉や鼻、目のような柔らかい箇所を狙う。ハンマーパンチという手を握った際の小指側の側面で打撃を行えば拳を痛めません。また目潰しというとチョキで目を狙うイメージがありますが、外して指を痛めますので、パーにしてムチのようにしならせて目を叩く」
<figure id="attachment_284035" aria-describedby="caption-attachment-284035" style="width: 8256px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="922f7d98"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/TZ1_2397.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284035" class="wp-caption-text">プロの戦闘技術集団が教える護身術は、世間で言われているものとは一味違った。</figcaption></figure>
大切なので繰り返すが、あくまですべて自衛のため。相手に襲われ、止むに止まれぬ際に反撃すべきものであることは心がけたい。
「殴られたら殴り返してもいいのではなく、逃げられる時は逃げる。謝って済むなら頭を下げる。しかし、どれも効果が見込めない状況に陥るかもしれない。そんな時は勇猛果敢に戦うしかない」（田村氏）
転ばぬ先の杖、ならぬ転ばぬ先の盾と攻撃スティック。福袋は「使う楽しみ」を前提としたものだが、「使わなくて済むならこしたことがない」福袋が誕生するとは、なんとも悲しい時代である。
<figure id="attachment_284036" aria-describedby="caption-attachment-284036" style="width: 5504px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b756af8c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/TZ1_2429-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284036" class="wp-caption-text">警察官や自衛官にも指導しているのだとか</figcaption></figure>
<figure id="attachment_284038" aria-describedby="caption-attachment-284038" style="width: 5504px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="ba4eea2c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/12/TZ1_2415-rotated.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-284038" class="wp-caption-text">壁に飾っていると、アンティークのようにも見えるそう</figcaption></figure>
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結束武郎

岩崎大輔

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