「カンテレ」のドラマは凄い!…『エルピス』での“忖度ナシ”姿勢に賞賛の声と“関西での意外な評判” | FRIDAYデジタル

「カンテレ」のドラマは凄い!…『エルピス』での“忖度ナシ”姿勢に賞賛の声と“関西での意外な評判”

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政治と報道の「闇」を忖度ナシに描き視聴者を釘付けに…

10月期ドラマで「最も面白い」「最も攻めている」という声が、特にマスコミ業界において多かった長澤まさみ主演の『エルピス-希望、あるいは災い-』の最終回が22年12月26日に放送された。

架空のテレビ局「大洋テレビ」を舞台に、とある事情から、女性アナウンサーの浅川恵那(長澤)と若手ディレクター・岸本(眞栄田郷敦)が10代の女性を狙った「八頭尾山連続殺人事件」の真相を追うことになる、実在の複数を事件に着想を得た社会派エンタテインメント。

報道部とバラエティの関係や、「後追い報道ならできるけど、スクープとしては扱わない」というテレビ局の及び腰のスタンス、局内のセクハラ・パワハラ、報道加害の問題や、「森友学園問題」を想起させるもの、東日本大震災にまつわる報道、東京五輪招致に関する安倍晋三元首相の「アンダーコントロール」発言、麻生太郎を思わせる人物などなど、政治と報道の「闇」を忖度ナシに描き、視聴者を釘付けにしてきた。

最終的に冤罪を晴らすことはできたものの、大きな権力を前に諦めたこと、闇に葬られたことが多い着地点には、モヤモヤする視聴者も多かったが、こうした作品を世間に届けた制作者たちの熱意と覚悟には賞賛の声が多い。

撮影:近藤裕介
撮影:近藤裕介

そもそも同作は佐野亜裕美プロデューサーが2016年から『カルテット』(TBS系/2017年)の撮影の合間を縫って、島根在住でNHK連続テレビ小説『カーネーション』(2011年度下半期)や『今ここにある危機とぼくの好感度について』(NHK総合/2021年)などを手掛けてきた脚本家・渡辺あやのもとに通い続け、6年がかりで作り上げてきたもの。

テレビの報道の闇を忖度ナシに描く点では、「テレビドラマ」というよりもむしろ東海テレビの開局60周年記念番組で映画化もされたドキュメンタリー『さよならテレビ』や、富山のローカルテレビ局・チューリップテレビが地方政治の不正に挑み、報道によって人間の狡猾さや滑稽さを浮き彫りにしたドキュメンタリー番組&その後を追いかけた映画『はりぼて』にも近いスタンスに見える。

ジャニーズにも忖度なし!?

なぜこれをゴールデンプライムの民放地上波連続ドラマで描くことができたのか。その問いに対して、佐野Pは各種インタビューでこう語っている。

「脚本を先に作っていたことが大きかったと思うんですよね。なんでこの企画が通ったのか、実は私もよくわかってないです(笑)。会社も、あまり深く考えずにうっかり通しちゃってから『こんな話だったのか』と思っている人もいるかもしれない(笑)」 

「カンテレの制作現場はいい意味でユルさがあるというか、現場の自由にさせてくれる最後のユートピアだと思います」(『女子スパ!』2022年12月26日)

「具体的に光が見えたのは、カンテレに入る前のことなんですけど、(カンテレの)東京制作部の河西秀幸プロデューサーに、転職のことを相談したり、いろいろなドラマの企画書と一緒に『エルピス』の台本も読んでもらったりしていた時ですね。 

河西さんは、『エルピス』の次に放送される草彅剛さん主演の『罠の戦争』のプロデューサーでもあるんですけど、その河西さんが脚本を読んで、『これは面白いから、やるべきだ』と言ってくださって。その当時、河西さんに企画の決定権があったわけではないんですけど、(以下略)」(『TOKION』2022年12月23日)

視聴者の中には、外部の圧力や社内政治、忖度によりスクープを握りつぶされ、諦め、自嘲気味になっていたものの、決定的証拠を握る人物を葬り去られたことで怒りを爆発させ、暴走する村井(岡部たかし)のような人物がカンテレ内にいるのではないかといった推測をする者もいる。

思えば綾野剛×藤井直人監督の『アバランチ』(カンテレ制作・フジテレビ系/2021年)も、国家権力が闇に葬ろうとする犯罪を暴いていく作品だった。また、同じカンテレ月10枠で1月期に放送されるのは、草彅剛主演6年ぶり“戦争シリーズ”の『罠の戦争』である。

草彅と言えば、多数のヒット作を持つ名優にもかかわらず、民放ドラマに出演するのは、『嘘の戦争』以来のこと。理由は言うまでもなくテレビ局の「ジャニーズ忖度」によるものだが、そうした事情も積み重なって、「カンテレの忖度のなさはすごい」という一定の評価ができ上って来ている。

“準キー局”だから背負うものが少ない?

あるフジテレビ系列局役員はこんな話をする。

「カンテレはフジテレビ系列とはいえ、資本関係はないから、企画や脚本などにフジテレビから口出しされることがない分、番組作りは比較的自由にできるんです。 

それに、『エルピス』の場合、キー局の有名プロデューサー(佐野亜裕美さん)が企画し、脚本・渡辺あやと主演・長澤まさみまで引っ張ってきた、全てお膳立てされた状態だったのだから、カンテレにとっては『ラッキー』くらいのもんでしょう」

また、芸能プロダクションの社長も言う。

「『エルピス』の中にも、『後追いはできるけど、スクープは無理』といったセリフが出てくるでしょう。 

“辞めジャニ”を出さないことも含めて、本当はダメなわけでもないのに、キー局はみんな権力や大手芸能事務所の顔色を見て、横並びで忖度し合って、自分のところが最初にやるのが怖いだけ。 

実際、NHKには以前から大河ドラマをはじめ、いろいろなドラマに草彅さんが出ていますし。その点、カンテレは唯一の“準キー局”ということで、背負うものが少ないことはあるでしょう」

撮影:菅原 健
撮影:菅原 健

関西での評価…

ただし、そんなカンテレが全く忖度ナシのテレビ局なのかというと、そういうわけではないと関西在住者は指摘する。

「カンテレはドラマに関しては以前から骨太な良い作品をたくさん作ってきました。でも、大きな権力批判などができるのは、カンテレと政府与党とのつながりが薄いからというだけ。

逆に関西のメディアは日本維新の会の批判は全然しません。 例えばカンテレが今月19日、本社ビルに隣接する大阪市北区の『扇町公園』の指定管理者に選定されたことが発表されましたし、大阪城も電通関西支社と讀賣テレビ、大和ハウス、大和リース、NTTファシリティーズによる『大阪城パークマネジメント共同事業体』が指定管理者になっています。 

このように、関西メディアはもともと大阪府や大阪市の指定管理者で利益を得ていて、府や市から飴を与えられていることで、維新がいくら不祥事を起こしてもあまり追及することができないように抑え込まれているんです」

つまり、政府の批判はできても、維新批判はできないという別の忖度が働くのがカンテレを含めた関西メディアだということだ。

結局、自分の会社の不利益になる批判はできないというのはどこも同じ。ある意味、『エルピス』はそうした一面をあぶりだす作品になってしまったのかもしれない。

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