2話で急落『いだてん』に挽回あるか? スタート失敗ドラマの行方

大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』をデータで細密分析する 鈴木祐司(メディア・アナリスト)

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始まったばかりの大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』。
初回の視聴率15.5%(ビデオリサーチ調べ・関東地区/以下同)は歴代ワースト2位。しかも2話で視聴率12.0%と急降下してしまった。初回から2話へ視聴率の下落率22.6%は大河史上今世紀最大だ。

『八重の桜』(2013年)は、初回21.4%を受け2話が18.8%と12.1%(下落率)を失った。そして年間平均視聴率は15.8%。出だしでつまづいた後、挽回できずに終わっていた。

『花燃ゆ』(15年)の場合も、初回16.7%・2話13.3%で下落率が19.8%と『いだてん』登場までの最大値だった。年間平均視聴率も12.0%の歴代最低に終わった。スタートダッシュでの失敗が尾を引いた格好だった。

その『花燃ゆ』より初回が低く、2話での下落率が大きい『いだてん』は、相当苦しいスタートを切ってしまったと言わざるを得ない。

土砂降りのような番宣…直前3日間に13時間超!

そもそも『いだてん』は、2020年東京オリンピックの前年に、オリンピック噺を1年かけて展開するタイムリーな放送だ。

しかも13年度上期の朝ドラ『あまちゃん』と、スタッフや出演者が多く重なる。『あまちゃん』が朝ドラの流れを変えたように、『いだてん』も画期的な大河ドラマになることを期待されていた。

放送の直前、NHKは番宣にも例年以上に力を入れた。
スポットやミニ番組が大量に投入された他、特別番組や通常番組とのコラボで、直前3日間に13時間を超える番宣番組が放送された。

『カウントダウン!大河ドラマ』(3日昼と4日深夜)
『ごごナマ いだてんSP』(4日午後)
『チコちゃんに叱られる コラボスペシャル」』(4日夜と5日朝)
『ファミリーヒストリー 宮藤官九郎』(4日夜と6日午後)
『いだてんが駆け抜けた時代』(4日夜)
『あなたが主役50ボイス』(4日深夜と6日昼)
『メイキングオブ大河ドラマ』(5日午前)
『いだてん×ラン×スマ』(5日夕方)
『ダーウィンが来た! コラボSP』(6日夜)

ところがこうした努力の甲斐もなく、初回視聴率は歴代ワースト2位。担当者の衝撃は、かなり大きかったであろう。

初回の失敗 接触率動向から見えたのは、やはり

初回の失敗については、「『いだてん』は『あまちゃん』の再来となる!?~初回の不安解消は2話以降次第~」に詳述したので、興味のある方は参照していただきたい。

要は放送中に大量の流入者(他の番組からザッピングで覗きにきた視聴者)がいたにも関わらず、定着させられないまま大半に逃げられてしまった点が痛恨だった。初回が“魅力的な出来でなかった”の一語に尽きる。

インテージ社「Media Gauge」の流入率・流出率を使って、もう少し詳細に見てみよう。

大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』 初回の接触率動向

テーマもタイムリーで、クドカンが初めて挑む話題の大河だけに、グラフにある通り、CMのたびに流入者が発生していた。

例えば8時13分。裏の3番組がCMになったため大量のザッピングが発生し直前より6%強に相当する人々が、『いだてん』を試し見に来ていた。ところが1~2分で、ほとんどの人が逃げ出してしまった。番組に留めることが出来なかった。

この瞬間は、嘉納治五郎がフランス大使館でオリンピックについてのやりとりの最中だった。議論・外国語・歴史的な映像などが構成に散りばめられていたが、こうした要素はプラスには働かず、むしろ流出の原因になっていた。
他にも要因があった。

明治と昭和とを50年ほどワープする構成が多用されたが、そこで脱落した人が少なくなかった。時間の感覚が混乱し、話が見えなくなってしまったようだ。

最大の流出ポイントは、たけし演ずる志ん生が登場する場面。
「滑舌悪くてセリフ聞きづらい」「何喋っているかを聞き取るので疲れる」などの不満がネット上に多く出ていたが、登場シーンでの流出率も高かった。話題性やビッグネーム依存のキャスティングが裏目に出た例といえよう。

第2話下落の要因 強敵『イッテQ』『ポツンと一軒家』は休止だったが

初回の低迷を経て、第2話はさらに視聴率が下がった。
前述の通り、下落率22.6%は今世紀で最大。原因の第一は、番組スタート時の視聴者数にある。発射台が低ければ、ロケットは遠くに飛びにくいからだ。

インテージ社が全数調査の対象としているネット接続テレビは、全国で90万台をこえている。これらの中で、番組の冒頭でNHKにチャンネルを合わせていたテレビは、第2話の方が初回より4000台以上少なかった。約1割減っていた。
初回の途中で脱落、あるいは最後まで見たが「次を見たい」と思わなかった人が少なからずいた影響が大きい。

大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』 初回と2羽の接触率動向-冒頭5分での比較-

それでも2話には追い風が吹いていた。
実は初回の放送日には、裏番組に『イッテQ』『ポツンと一軒家』など、視聴率15%前後の強敵が2番組あった。ところが2話の時は、共に休止だったのである。
この結果か、冒頭2分間の流入が初回より3500台以上多くなった。スタート時の劣勢をかなり挽回できる数といえよう。

ところが流出数も半端なかった。同じ2分間で逃げた数が4000台以上。つまり初回と2話の差は、冒頭2分で逆に開いてしまった。
実は2話冒頭は、初回で流出の最大の原因となった“たけし演ずる志ん生”のシーンだった。初回で“間が悪い”が笑いのポイントになっていたが、2話では“間の悪さ”は笑えない事態となってしまった。
志ん生という設定は、2度のオリンピックをつなぐために設定されたが、初回と2話を見る限り、これはプラスよりマイナスに働いてしまっている。

当初4000台ほどだった初回と2話のテレビ台数の差は、冒頭5分間で5000台以上に広がった。キャスティングの失敗は、致命的と言わざるを得ない。

ドラマとしての課題 魅力は伝わっているのか?

番組オープニングの後でも、気になる点がある。
番組開始5分から20分までの前半、初回と2話の流入数はほぼ互角だった。ところが後半になると、2話が上回り始める。やはり裏番組が初回ほど強くないのが幸いしていた。

大河ドラマ『いだてん~東京オリムピック噺~』 初回と2羽の接触率動向-5分以降40分までの比較-

ところが流出は、あまり改善していない。
初回はプロローグ的な展開で、ドラマっぽくなかった。このためか流出も想定以上に多かった。ところがドラマ前半の主人公・金栗四三の物語が2話で動き始めても、相変わらず流出は初回とほぼ同じ水準。ドラマの魅力が伝わっていない証拠だ。

唯一改善していたのは、16分から20分あたり。
金栗四三の幼少期を、演技経験のない“素人”久野倫太郎君が演じたあたりだ。出産を見て長距離走の呼吸法を身に着けていくプロセスなどが描かれたが、流出は低水準におさまっていた。

ところが20分台に入って中村勘九郎が金栗四三を演じ始めると、流出数が増えた。初回との比較で言えば、久野倫太郎君の16分から20分ではリードしたが、中村勘九郎の26分から30分が劣勢だった。
今後しばらくは中村勘九郎の物語となるだけに、心配と言わざるを得ない。

第3話は視聴率的にいきなり正念場! 物語の基本構造を視聴者は受け入れるか?

今世紀の主な大河ドラマを振り返ると、年間平均で15%超となったものには条件があった。初回が15%以上で、2話も好調を維持するか、下落しても1割程度に留まった大河だ。

『いだてん~東京オリムピック噺~』と主な大河ドラマの視聴率動向

初回が20%超で、2話がさらに上がった『篤姫』や『功名が辻』は、年間平均も20%と好調だった。
初回が20%前後、2話で大きく下落しなかった『真田丸』や『軍師官兵衛』は、平均15%超とまずまず。

ところが2話が初回より1割超下落した『八重の桜』や『花燃ゆ』は、平均が2話よりさらに大きく下がっていた。
もちろん例外はありうるので、過去のデータ通りになるとは断言できない。それでも2話が初回より2割以上さがり、その2話が12%と史上最低だった『いだてん』は相当苦しい。

もし中村勘九郎の金栗四三物語が中心となる3話で、もう一段の視聴率下落があるようなら、当分の間『いだてん』は浮上しないだろう。物語の基本構造が、視聴者に受け入れられていないことを示すからだ。

その意味で第3話は、今後を占う正念場となりそうだ。

  • 鈴木祐司

    メディア・アナリスト。1958年愛知県出身。NHKを経て、2014年より次世代メディア研究所代表。デジタル化が進む中で、メディアがどう変貌するかを取材・分析。著作には「放送十五講」(2011年、共著)、「メディアの将来を探る」(2014年、共著)。

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