【試し読みつき】待望の劇場版が公開!『イチケイのカラス』が描く刑事裁判官のリアルな”日常”と本音
竹野内豊主演で好評を博したドラマ『イチケイのカラス』。東京地方裁判所第3支部第1刑事課、通称“イチケイ”を舞台に、型破りな刑事裁判官・入間みちお(演・竹野内豊)と、若きエリート裁判官・千鶴(演・黒木華)のバディを描いたリーガルドラマだ。

その待望の劇場版が1月13日より公開される。映画でも主要キャストが続投し、ドラマ最終回の“その後”の物語が描かれる。
入間がイチケイを去って2年。彼は異動先の岡山で、主婦が史上最年少防衛大臣・鵜城英二に包丁を突きつけたという傷害事件を担当することになる。事件の背景には、イージス艦と貨物船との不審な衝突事故があった。
一方の千鶴は、裁判官の「他職経験制度」で弁護士となり、奇しくも入間の隣町に配属される。町を支える地元大企業にある疑惑が持ち上がり、やがて2つの事件に隠された衝撃の事実が明らかになる――というのが劇場版のストーリーだ。
「刑事裁判」という“日常”
原作は雑誌「モーニング」で連載されていた、浅見理都さんによる同名漫画(全四巻)。
漫画では、イチケイに配属された特例判事補・坂間真平の目線を通して物語が展開されていく。
弁護士から刑事裁判官に転身した入間みちお、ベテランで温厚だがどこか掴み所のない駒沢部長、馴れ馴れしい書記官・石倉文太、独特なペースの事務官・一ノ瀬糸子など、イチケイの個性的な面々に赴任当初は当惑していた坂間。
しかし彼らにとっての“日常”――刑事裁判を通じて入間や駒沢の信条や考え方に触れ、判決について議論を重ねるなかで、坂間は裁判官としての在り方を見つめ直していくことになる。

作中では裁判員制度についても取り上げられており、裁判員に選ばれたらどうなるのか?という流れについてや、裁判へと臨んだ彼ら彼女らの心情も描かれる。法律の専門家でない彼らの不安や困惑、疑問や葛藤は、読者の目線と近く、共感できるものだ。
裁判の様子については作者の浅見さんの取材が活かされた現実的な描かれ方がされているが、コミカルなシーンも多いのが今作の特徴でもある。
現実にも充分起こり得る事件の数々や、被告人たちの心境、下された判決に考えさせられながらも、イチケイの濃い面々が交わすやり取りや坂間の辛辣なツッコミに思わずクスッとさせられる。

作者の浅見さんは現在、「Kiss」で『クジャクのダンス、誰が見た?』を連載中だ(単行本1巻発売中~以下続刊)。こちらは刑事だった父の不審死の真相を追う少女と、彼女から事件の容疑者の弁護を依頼される弁護士とのタッグを描いた本格サスペンス。
父の残した遺書で「犯人ではない」と名指しされた容疑者は、はたして本当に冤罪なのか? なぜ父は自分が誰かに殺されると思っていたのか? 刑事時代に父が担当したという一家殺害事件との繋がりは?……という謎が謎を呼ぶ展開で、今後が見逃せない作品となっている。『イチケイのカラス』で駒沢部長が語っていた「冤罪の怖さ」のことを思うと、新連載のストーリーは胸に刺さるものがある。合わせて楽しんでもらいたい作品だ。
多くの人にとって「非日常」である裁判。「弁護士や検事はドラマなんかでバンバン活躍するけど……」と、裁判官が主役の物語が少ないことに言及するシーンも『イチケイのカラス』の作中にはあるが、言われてみれば確かに。そういう意味では、世間一般的に馴染み深いというわけではない刑事裁判の裁判官に焦点を当て、人気を得た今作は珍しい作品と言える。
漫画からドラマへ、そして映画へと、広がりを見せる『イチケイのカラス』。今作が描く、裁判官にとっての“日常”をぜひ一度覗いてみてほしい。