<figure id="attachment_295939" aria-describedby="caption-attachment-295939" style="width: 2576px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8c6467ea"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/4128ee4844514ec82fe954405070ebc5.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295939" class="wp-caption-text">「うどん弁当」直売所を掲げた郊外型の『丸亀製麺』（筆者撮影）</figcaption></figure>
<p style="font-weight: 400;">ここのところ、回転寿司チェーンでの迷惑行為が相次いで報じられている。ただでさえ大手外食チェーンはここ数年、コロナ禍に苦しめられ、その対策に四苦八苦してきた。ようやく消費者の外食活動がもとに戻りつつある中、今度は迷惑行為が日本各地で頻発。その対策にも乗り出さなければならなくなった。</p>
<p style="font-weight: 400;">泣き面に蜂の外食産業だが、企業やチェーンによってダメージはかなり差がある。たとえば「丸亀製麺」と「はなまるうどん」は同じセルフうどんチェーンだが、明暗がくっきりと分かれているのだ。</p>
<p>下記データは(株)トリドールホールディングスと(株)吉野家ホールディングスが公表している丸亀製麺とはなまるうどんのセグメント別業績である。直近６ヵ月分の売上高と店舗数に加えて、コロナ禍になる前の2020年度の同期データ（カッコ内）を示しているのだが、丸亀製麺は店数がほとんど変わっていないにもかかわらず、売上高が4.8％増。はなまるうどんは売上高、店数ともに大きく数値を落としている。</p>
<div style="background: #fff; border: 1px #ccc solid; box-shadow: 0 2px 3px 0 #ddd; font-size: 100%; padding: 20px;"><span class="strongInContent">【丸亀製麺、はなまるうどんの直近６ヵ月業績】</span><br>
丸亀製麺<br>
※2023年3月期上半期（2022年4月1日～9月30日）<br>
売上高515億6000万円（104.8％） 店数828店（100.5％）</div>
<div style="background: #ffffff; border: 1px solid #cccccc; box-shadow: #dddddd 0px 2px 3px 0px; font-size: 100%; padding: 20px; text-align: left;">はなまるうどん<br>
※2023年2月期上半期（2023年3月1日～8月31日）<br>
売上高127億2300万円（80.0％） 店数454店（88.7％）<br>
（カッコ内は対2020年度同期比）</div>
<p>&nbsp;</p>
<p>はなまるうどんはコロナ禍によって流動人口の減少が大きかった駅前繁華街が主要立地で、やはり利用者の絶対数が激減したフードコート内に入居する店舗も多かった。セルフうどんという業態そのものがウィズコロナに不向きであったことも業績を下げた要因として挙げられている。</p>
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<p>「マクドナルド」をはじめ、コロナ禍で業績を伸ばしたファストフード（FFS）チェーンに共通するのがテイクアウト、デリバリーに強いということだ。だが、そばやうどんなどの麺類は品質の経時劣化が早いこともあり、そば・うどんのFFSチェーンのほとんどがテイクアウト、デリバリーに力を注いでこなかった。そのため、ファミリーレストランや居酒屋ほどではないものの、セルフうどんの各チェーンはコロナ禍で大幅な客数減を余儀なくされたのである。</p>
<p>初の緊急事態宣言が発出された2020年４月、５月の既存店売上高を見てみると、FFSチェーンの多くが前年比80％のラインを超えていた中、丸亀製麺も４月が前年比50.3％、５月が同63.6％と数字を落としている。</p>
<p>そんな丸亀製麺がコロナ禍下で業績を伸ばすことができたのはなぜか。その要因として３つのポイントが挙げられる。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="あの商品の大ヒット"></div>
<p>ひとつはテイクアウトニーズへの素早い対応だ。丸亀製麺も当初はテイクアウト対応を重視しておらず、テイクアウト可能な商品は天ぷらのみだった。ところが、2020年５月にテイクアウト対応商品をうどん、丼ものに拡充。これによってテイクアウト売上げをジワジワと伸ばし、３％にも満たなかったテイクアウトの売上げ比率は13％までアップした。</p>
<p>2021年４月には「うどん弁当」を投入。うどん弁当はうどん、天ぷら、おかずがワンセットになったテイクアウト限定の商品だが、ボトム価格が390円という値頃感なども支持され、１年間で2200万食を売り上げる大ヒットを飛ばしてテイクアウト売上げ比率は20％を超えるまでになった。</p>
<p>「うどん弁当直売所」の設置もその売上げ増に大きく寄与している。うどん弁当直売所は店舗に併設されたテイクアウト専用の販売窓口のことだが、丸亀製麺は様々なタイプのうどん弁当直売所を設置して実証実験を重ねた。</p>
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<p>その中から、売上げアップの効果がもっとも大きかった３～４ｍ幅のワイド窓口を標準フォーマットとし、2021年５月から設置を本格化。今期中にうどん弁当直売所の設置店舗を100店まで増やす予定だ。</p>
<p>テイクアウト販売窓口の設置効果は思いのほか大きい。イートイン客で混雑する店内に入らずにテイクアウト商品を注文できるという利便性はもちろん、窓口の存在そのものがテイクアウト利用を促すPRにもなっているのだ。</p>
<p>「テイクアウト、はじめました」といった告知だけだと、客の印象に残りにくい。また、テイクアウトは店によってシステムが微妙に異なるのが常で、注文方法がわかりにくいため、客が利用に尻込みするケースが散見される。テイクアウト販売窓口はそうしたお客の不安を払拭してくれるため、「試しに買ってみよう」という利用動機まで掴むことができるのだ。</p>
<p>ちなみにテイクアウト販売窓口の設置による成功事例は過去にもあった。アークランドサービスホールディングス(株)が展開するとんかつチェーン「かつや」の取り組みだ。</p>
<p>かつやはコロナ禍下において売上げを大幅に伸ばした勝ち組チェーンのひとつだが、同チェーンでは2010年からテイクアウト販売窓口の「かつ弁」の設置をスタートした。かつ弁設置前のテイクアウト売上げ比率は２割ほどだったが、かつ弁の設置店は４割まで上昇。現在、かつ弁の併設店店数は250店を超えている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="「楽しい」店舗づくり"></div>
<p>テイクアウト売上げを伸ばしながらも、イートインの集客強化を怠らない。それが丸亀製麺が売上げを伸ばしたふたつ目の要因だ。</p>
<p>丸亀製麺のチェーン戦略の特色は「体験価値に重きをおいている」ということである。「吉野家」のかつてのキャッチフレーズである「早い、安い、旨い」がFFSに共通する業態特性だが、丸亀製麺ではそこに「楽しい」という価値を加えるために様々な工夫を凝らしている。</p>
<p>その方針が強く表れているのが店舗造作だ。エントランスの目の前に茹で釜を設置するなど、丸亀製麺のキッチンはライブ感、シズル感（みずみずしさ）を創出する設計になっているが、コロナ禍においても改良を重ねていた。</p>
<p>たとえば2022年４月に新メニューとして、焼きたて肉うどん(並)670円を投入しているが、新型キッチンではレジのそばにIHコンロを設置し、客の目の前で肉うどんの具材を調理している。</p>
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<p>その他にも、麺茹での様子をより見やすくするために茹で釜の高さを変え、店内製麺のコンセプトがより伝わりやすくするためにうどん生地の熟成庫を厨房の前面に設置。１年間で100店の改装を実施し、体験価値の提供に磨きをかけている。</p>
<p>体験価値を高めてきたことがイートインの客数回復につながるわけだが、この点は2022年の値上げラッシュにおいても強みとなった。</p>
<p>丸亀製麺は21年４月、22年１月と10月に３回の価格改定を実施。ボトム価格である釜揚げうどん(並)290円は据え置いたが、３回の価格改定でかけうどん(並)は300円から360円に値上がりした。値上げをすると、客単価が上がり、客数が下がるのが外食ビジネスの常。しかし、丸亀製麺の既存店客数は３回目の値上げ直後の22年11月に前年比98.7％に下げたものの、12月には同103％に回復しているのだ。</p>
<p>早い、安い、旨いという商品価値ばかりを追求していると、消費者は値上げに対して敏感に反応するが、丸亀製麺は商品価値とともに体験価値を磨きあげてきた。昼時に店舗を訪れると、会社員の姿だけでなく10代の男女の姿も多く見られる。若い世代が単価以上のプレミアムを感じている証左と言えるだろう。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="出店戦略の転換"></div>
<p>そして、３つ目のポイントとして挙げられるのが、丸亀製麺が郊外ロードサイドを主要立地にしている点だ。コロナ禍による外出自粛やテレワークの普及などによって都心から郊外に人の流れが変わったため、外食マーケットも郊外ロードサイドが活気付いている。その点は従前からの立地戦略が優位に働いているわけだが、丸亀製麺は今後の出店戦略における秘策を用意している。</p>
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<p>丸亀製麺はコロナ禍で出店を抑えていたが、その間にチェーンの商圏設定を検証し、再定義したのだ。これまで猛烈な勢いで出店を進めてきたため、商圏設定を検証する時間もなかったが、出店数が減り、物件開発部隊の手が空いたため、丸亀製麺のアプリ会員の情報を元に各店の商圏をマッピングした。すると、想定以上に「自社競合」が発生していることが判明したという。</p>
<p>このデータをもとに、丸亀製麺は、すでに新しい商圏設定による店舗開発を進めているという。テイクアウトの強化、店内飲食のプレミアム感、立地戦略の改善という強みを武器に、丸亀製麺は今後も成長を続ける「のびしろ」がある。冒頭で触れたような客の迷惑行為対策にも、早めに手を打つ機動力があるはずだ。</p>


「うどん弁当」直売所を掲げた郊外型の『丸亀製麺』（筆者撮影） ここのところ、回転寿司チェーンでの迷惑行為が相次いで報じられている。ただでさえ大手外食チェーンはここ数年、コロナ禍に苦しめられ、その対策に

丸亀製麺は好調でも、はなまるうどんは失速……両チェーンの間についた「差」とは何か

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