<p>今月4日、映画『THE FIEST SLAM DUNK』（以下：『スラムダンク』）が韓国でも公開された。文在寅（ムン・ジェイン）政権下で繰り広げられた反日運動も「どこ吹く風」で、韓国では依然として日本のアニメが根強い人気を誇っている。</p>
<p>観客動員数はすでに100万人を突破しており、今月21日からは旧正月の連休に突入する。この勢いだと2年前に韓国で公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の215万人を追い抜く可能性もある。</p>
<figure id="attachment_291252" aria-describedby="caption-attachment-291252" style="width: 1044px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="942806e3"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/smg_re_tougou_re.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291252" class="wp-caption-text">動員100万人突破を祝う『THE FIEST SLAM DUNK』韓国公式インスタグラムの投稿。映っているのは韓国語版の吹き替えキャストたちだ（『THE FIEST SLAM DUNK』韓国公式インスタグラムより）</figcaption></figure>
<h3>リピーター率の高い『スラムダンク』</h3>
<p>そもそも『スラムダンク』はアニメが終了してから26年が過ぎている。それでも韓国では「待ってました！」とばかりに注目度が高い。原作をすっかり忘れてしまったという40代の韓国人女性も大絶賛している。</p>
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<p><span class="strongInContent">「学生時代に『スラムダンク』にハマった世代だけでなく、中年の夫婦が子供を連れて劇場に観に行っています。若い子はアニメをリアルタイムで観ておらず、劇場で初めて『スラムダンク』を知る子も多いのですが、テンポのいいストーリーが面白く、原作を知らなくても楽しめるようです」（40代韓国人女性）</span></p>
<p>圧倒的な支持層は30～40代で、青春時代を懐かしんでいる人が多い。ストーリーを知らない若者も親と一緒に劇場で観てハマり、口コミで評判が広がっているという。リピーター率も高く、字幕版と吹替版の両方を観る観客も少なくないそうだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「字幕版と吹替版を観た人は『感動したからあと1回！』という感じで、3回観たという人も少なくありません」</span>前出の韓国人はそう話す。</p>
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<p>声優陣の変更など、日本では賛否両論だった『スラムダンク』だが、韓国では絶賛の声が多い。</p>
<p>「スポーツ感覚で観られる」というのも魅力の一つで、2年前に公開された『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』と同じく、<span class="strongInContent">「深いメッセージ性のあるストーリーに感動を覚える」</span>と韓国人男性も口にする。</p>
<p>一方、韓国映画界ではちょっとした異変も起きている。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="“１億俳優”ソン・ガンホがまさかの事態に……"></div>
<h3>ソン・ガンホの主演作で興行不振!?</h3>
<figure id="attachment_291031" aria-describedby="caption-attachment-291031" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="06662aa0"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/78a4bc1a84096a36ffd8ca869ef5a6bb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291031" class="wp-caption-text">『非常宣言』© 2022 SHOWBOX AND MAGNUM9 ALL RIGHTS RESERVED.　</figcaption></figure>
<p>韓国では主演作品の累計観客動員数が1億人を超えると“1億俳優”と呼ばれる。代表的な“1億俳優”といえばソン・ガンホだが、『パラサイト　半地下の家族』から3年――。昨年は是枝裕和監督の『ベイビー・ブローカー』でカンヌ国際映画祭の最優秀男優賞に輝いたが、『パラサイト』以降、自身の主演作に大ヒット作は出ていない。</p>
<p>ハングルができるまでを描いた時代劇映画『王の願い－ハングルの始まり－』は史実にあるハングル創製をめぐって歴史認識問題に発展。監督が釈明する事態となった。観客動員数は96万人にとどまり、ソン・ガンホの主演作としては寂しい結果に終わっている。</p>
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<p>続く『ベイビー・ブローカー』も注目度の高さのわりには客足が伸びなかった。韓国人にとって違和感だらけのセリフに、共感しづらいキャラクターとストーリー展開。コロナ禍とはいえ観客動員数は126万人で、1千万人を記録した『パラサイト』のようにはいかなかった。</p>
<p>『王の願い－ハングルの始まり－』、『ベイビー・ブローカー』と結果を残せなかったソン・ガンホだが、続く『非常宣言』（1月6日公開）では思わぬ騒動に巻き込まれた。</p>
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<p>ソン・ガンホにイ・ビョンホン、チョン・ドヨンといった豪華キャストが顔をそろえた『非常宣言』は制作費だけで250億ウォン（約25億円）に上るといわれる。ハワイへと向かう航空機の機内でバイオテロが発生し、乗客が次々と感染して死んでいくという、まさに韓国映画界が得意とするパニック映画だ。機内で乗客はウイルスへの感染のみならず、墜落の危機にも直面する。</p>
<p>公開前から期待が高まっていたが、観客動員数は損益分岐点といわれた520万人には及ばず、205万人にとどまった。その理由として浮上したのが“逆バイラル疑惑”だ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="組織的な口コミ疑惑で、警察まで動員の大騒動に"></div>
<h3>興行の行方を握る口コミサイトで操作？</h3>
<p>“逆バイラル”とは意図的に悪意の口コミを広める行為のこと。</p>
<p>『非常宣言』という作品に対する評価はストーリーや結末をめぐって賛否両論だった。エンターテインメントとして楽しんだ観客がいる一方で、結末を批判する人もいた。だが、あまりにも低評価の口コミが多いと指摘されたのだ。</p>
<p>“逆バイラル”を組織的に行ったとして疑われたのは「BY4Mスタジオ」（以下：BY4M）という会社。『非常宣言』とほぼ同時期に公開されていた『ハンサン　―龍の出現―』（3月17日）をはじめ幾つかの作品に投資をしている。</p>
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<p>『ハンサン』は日本軍との海上決戦を描いた歴史スペクタクル。豊臣秀吉の朝鮮出兵時、朝鮮半島を守り抜こうとする李舜臣（イ・スンシン）と攻め入る脇坂安治が海上で壮大な戦いを繰り広げる。</p>
<p>歴史に残る戦だが、単なる“日本憎し”で終わらないのは、ピョン・ヨハン演じる脇坂安治が思いのほか魅力的に描かれているからだ。李舜臣は“静”で、韓国人から見て敵将であるはずの脇坂が“動”というキャラクター。日本人目線で見ても惹きつけられる。</p>
<figure id="attachment_291033" aria-describedby="caption-attachment-291033" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4a50f39d"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/01/d5142f08770ec074d4d29c560c53fa07.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-291033" class="wp-caption-text">『ハンサン　―龍の出現―』©2022 LOTTE ENTERTAINMENT &amp; BIGSTONE PICTURES CO.,LTD.ALL RIGHTS RESERVED.　</figcaption></figure>
<p>『ハンサン』も300億ウォン（約30億円）もの制作費が投じられた超大作で、損益分移転は600万人といわれる。</p>
<p>1週間後に『非常宣言』も公開され、話題のブロックバスターの直接対決となったわけだが、BY4Mは『ハンサン』には投資していても『非常宣言』には投資していない。そこで映画評論家の一人が“逆バイラル疑惑”を定義し、『非常宣言』の配給会社は警察に捜査を依頼した。</p>
<p>ところがBY4Mも「“逆バイラル”とは無関係」として映画評論家を告訴。おまけに映画関係者と名乗る人物によって、今度は『非常宣言』に高評価を書いたという“バイラル疑惑”まで浮上する事態となった。</p>
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<p>かねてから問題視されていたが、映画サイトの口コミは不透明だ。“コメント部隊”と呼ばれれる人たちの評価点によって映画の興行が左右されるともいわれる。</p>
<p>まったく評価されていない映画に満点をつけて大絶賛するコメントに対し、別のユーザーが「アルバイトさん、お疲れ様です」と皮肉っていることもある。</p>
<p>かつて1万ウォン（約千円）だったチケット代は1万5千W(約1,500円）になっている。観客は映画1本を観るのにお金だけでなく、貴重な時間も使うのだ。多くの人が口コミを信じ、チケットを買うのも無理はない。</p>
<p>結果として韓国では『ハンサン』が730万人近くを動員し、205万人の『非常宣言活』に勝利したが、『非常宣言』に続いて『ハンサン』も日本で公開される。</p>
<p>上空を舞台にした『非常宣言』は日本政府との対峙も描いており、『ハンサン』は海上で日本軍と激突。韓国で『スラムダンク』の快進撃が続く中、日本ではどちらの韓国映画に軍配が上がるのだろうか。</p>


韓流エンタメ誌、ガイドブック等の企画、取材、執筆を行う韓国ウォッチャー。<br />
メディアで韓国映画を紹介するほか、日韓関係のコラムを寄稿。

児玉愛子（韓国コラムニスト）

映画『THE FIEST SLAM DUNK』（スラムダンク）が韓国で快進撃を見せている。その一方で、韓国映画界にはとある異変が。ソン・ガンホも巻き添えをくらった「逆バイラル疑惑」騒動とは……？

『スラムダンク』大ヒットの一方で…韓国映画界に起こっている異常事態

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