コロナ感染して授業を受けられず留年は不当…!大学を訴えた現役東大生の「切実すぎる」学生生活 | FRIDAYデジタル

コロナ感染して授業を受けられず留年は不当…!大学を訴えた現役東大生の「切実すぎる」学生生活

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赤門の前で訴状を持つ杉浦さん。キャンパスを訪れるのは久しぶりだという
赤門の前で訴状を持つ杉浦さん。キャンパスを訪れるのは久しぶりだという

「裁判で主張は訴え続けていきますが、時間がかかりますし、必ず勝訴するとも限らない。大学の主張に納得はできていませんが、医師になるという目標のためにも、『もう一度2年生として頑張る』という心の準備もしないといけないと思っています」

東大教養学部理科Ⅲ類2年生の杉浦蒼大さん(20)は、現在の心境をそう語る。

杉浦さんは昨年、必修科目の受講期間中に新型コロナに感染。授業が受けられず留年が決まったが、「救済措置を行わず留年処分を下したのは不当」(杉浦さん)として「処分取消」を求めて昨年8月19日に東京地裁に提訴した。昨年10月17日、杉浦さんの訴えは地裁で却下されたが、同月末に抗告し、現在も審理が続いている。

現役東大生が大学を訴えるという裁判は注目を集めたが、現在、杉浦さんはどのような学生生活を送っているのか。現状と心境を聞いた――。

愛知県内のサラリーマン家庭で育った杉浦さんは、「医学部を目指すなら国立限定」という条件の中、東大教養学部理科Ⅲ類に現役で合格。’21年4月に入学した。

翌年、順調に進級、2年生の前期に選択した必修科目は、「基礎生命科学実験」だった。後期進学に必要な単位はこの科目以外すべて履修しており、最後の単位だった。だが、受講期間中の5月17日、新型コロナに感染し講義が受けられなくなった。

「喉の痛みや頭痛が数日続いた後、17日の朝、急に熱が上がって39度を超えていました。頭痛や吐き気に、意識が朦朧として、布団から起き上がることもできなかった。この日が授業ということもわからない状態でした。夕方近くになって、今日が課題レポートの提出期限だったことを思い出して、未完成のままでしたが、布団の中でパソコンからなんとか送信だけはしました」

杉浦さんは都内のアパートで一人暮らし。発熱の翌日に近くの診療所を受診し、PCR検査で陽性が確認された。その日以降も、倦怠感や意識が朦朧とする症状は続き、5月24日にあった6回目の授業も受けられなかったという。

「25日になって、ようやく担当教官にメールで事情を説明できるまでになりました。ですが、補講が認められたのは24日の分だけで、17日の分は『時間が経ちすぎている』と認められず、6月17日の成績発表で『不可』と通知されたのです。最初に受診した診療所と後遺障害で通院していた診療所から2通の診断書を取り、大学に事情を説明してもらうよう担当教官に頼みましたが、『もはや特段の意味はないので提出不要』と拒否されました。一方的に不当な処分がされたことはとても納得できず、8月4日に文科省記者クラブで会見を行い、8月19日に大学を提訴しました」

東大教養学部は、杉浦さんが記者会見した翌日の昨年8月5日、ホームページでこの問題の追及記事を掲載した東京新聞に対して「抗議文」を掲載している(現在は削除)。その中で、杉浦さんへの対応について、「(当該学生は)5月17日夕刻に学習管理システムにアクセスしていることが確認されていますので、所定の手続きを取れないほど重篤であったとは認めがたい」との見解を示している。この内容が、杉浦さんをさらに追い詰めたという。

「この抗議文の反響は大きく、『嘘つき!』などといった僕に対する批判がSNSに飛び交いました。教養学部は抗議文をすでに削除していますが、SNS上には今も残っている。何もしないと既成事実になってしまうと考え、大学に慰謝料請求の損害賠償裁判も合わせて提訴しました。教養学部は、診断書も見ずになぜこのような主張を一方的にしたのか、民事の裁判でもそれを明らかにしていきたいのです」

現在、留年処分の取り消しを求める裁判は高裁で審理が続き、損害賠償請求訴訟は地裁で係争中だ。

留年したため、今年4月まで杉浦さんは授業がなく、当然、キャンパスにも行っていないという。現在の心境を杉浦さんはこう語る。

「留年が発表された時は、落ち込み、やり場のない怒りにも襲われました。ですが、これで医師への道が閉ざされたわけではありません。『1年間医療の勉強に携われる時間ができた』と切り替え、いまはできることをやっています。具体的には、東大卒の血液内科医である上昌広先生のところでインターン生として勉強をさせてもらっています。おかげで、アパートに閉じこもることもなく、気持ち的にも緊張感を持続できています。昨年12月半ばから今年上旬までは、関西地方で医療現場の手伝いにも参加させていただきました」

杉浦さんはアパート代や生活費を両親からの仕送りに頼っているが、裁判費用は「貯金から出している」という。

「もう底が突きそうですけど、自分の事ですから。卒業が1年延びる分、親に負担をかけることは申し訳ないと思っています。感染の可能性は誰にでもあります。いつ僕のような立場に追い込まれる学生が出ても、おかしくありません。大学には、もっと学生の立場に立った対応をしてもらえるよう、本当に望んでいます」

大学と裁判をしながらの学生生活は、さぞかし肩身の狭いものだろう。春から改めて2年生として学び直し、「医師になる」という夢を叶えることはできるか。

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