家康「天下取り」の最大要因は長寿! 和田秀樹が教える「好きなことをして幸せに」幸齢者のすすめ
ダイエットは現代の纏足です…!
ふっくら家康、ガリガリ秀吉の「差」に注目
「家康が天下をとれた最大の要因は、健康オタクで長生きしたことです」
大ベストセラー『80歳の壁』の著者で、精神科医の和田秀樹先生はこう断言する。
「家康は、ふっくらした体型でした。対して秀吉はガリガリ。人間はちょっと太めなほうが長生きするんですよ。たいていの日本人は痩せすぎ。生活習慣病の予防とか言って粗食を勧めるなんて、ほとんど犯罪だと思う。美容目的のダイエットは、現代の纏足(てんそく)ですよ」
和田先生は怒りもあらわに言うのだ。徳川家康は、「人生50年」の時代に73歳まで生きた。当時としてはかなりの長寿だった。
家康のように健康で長生きするためには「どうする」? 高齢者医療に長く携わる和田先生が、内外の文献、最新の研究、そして自身の経験をもとに至った結論はあんがいシンプルだ。
「幸齢者(こうれいしゃ)を目指せばいいんです。栄養をしっかりとって、ちょっと太めの体型で、性欲もふくめた意欲の高い人が健康で長生きできる例をたくさん見てきました。そういうお年寄りを、僕は幸齢者と呼びます。50代60代の人はもちろん、70代80代の人も、もっと自由に、好きなことをして生きていい。好きなものを食べていいんです。
今の日本の医療は『引き算』の考え方が主流です。血圧が高いとか、血糖値が高いとか、コレステロールが高いとか、まだとくに症状がないのに、検査の数値をもとに食事制限をかけたり、薬を飲んだりする。でも、そのことで活力が奪われたら、幸せには生きられません。
自由に生きる
ワイドショーなどで喧伝される誤ったダイエット志向も問題です。また、低カロリー低脂肪の食品を『健康にいい』と思い込む空気もありますが、ナンセンスです。
認知症の特効薬は今のところありません。が、脳に栄養がよく行き渡ってる人ほど認知症にはなりにくいということが、たくさんのデータ、研究でわかっています。日本人の肥満なんて、欧米人に比べたらレベルが違う。むしろ多くの日本人はコレステロールが足りないくらいです。
食べたいものを食べ、やりたいことをやる。へんな我慢をしないで自由に生きることが、じつはなによりの『健康法』なんです」
艶福家·家康を見習って恋をしよう
「家康は、戦にはけっして強いほうではなかったけれど、慎重な性格、そしてなにより健康で長生きしたことで、天下を固めていくことができたのだと思います。健康への気遣いは人一倍で、漢方や薬学の本を読んでいたとか。強精剤も好んで飲んでいて、生涯にたくさんの子どもを授かっています。
恋愛は、若い人だけのものではありません。いくつになっても恋をしているほうがいい。日本人は性欲、とくに中年以上の人の恋愛や性欲をタブー視しがちですが、本来性欲というのは自然な欲求で、とても大切なものなんです。残念ながら、性欲は年齢とともに落ちていきます。とくに男性は、男性ホルモンが減るために、性欲が減退、意欲や記憶力も低下します。
男性も女性も、歳をとるほど、むしろ積極的に恋をして心を弾ませることが幸齢者になれる道でしょう。水戸藩初代藩主になった徳川頼房は、家康が60歳のときの子どもです。
嫌なことはせず、好きなことだけを選んで生きていく。楽しんでこその人生ですから」

和田秀樹:1960年生まれ。東京大学医学部卒業後、米国で精神医学、カウンセリングを学ぶ。精神科医として、30年以上にわたり医療の現場に携わる。現在、ルネクリニック東京院院長、一橋大学・東京医科歯科大学非常勤講師、日本大学理事。受験アドバイザー、映画監督としても活躍している。2022年、『80歳の壁』がベストセラー第1位に。著書多数。
イラスト提供:アフロ