「2・21」ついに中国への帰国が決定…シャンシャン「やんちゃパンダの5年間」
上野動物園の大スターの成長を秘蔵写真と共に振り返る
上野動物園(台東区)のスターパンダ・シャンシャン(5)が、今年2月21日に中国に返還されることがついに決まった。
シャンシャンは日本で生まれたが、協定により所有権は中国にある。本来は満24ヵ月になったところで返還をしなければならないが、新型コロナウイルス感染拡大の影響のため、5度にわたり渡航が延期されていた。
誕生から5年間もその愛くるしい姿を見られたのは幸運だったが、その分、別れは寂しくなる。上野動物園教育普及課の大橋直哉氏に思い出を聞いた。
「シャンシャンが生まれたとき、公開は抽選制を採用していました。その倍率は、土日には80倍になることも。整理券制になってからは、150分待ちにもなりました。本当に老若男女に愛されていました」
赤ちゃんの時からその成長を見てきた大橋氏は、シャンシャンのやんちゃな子供時代についてこのように語る。
「シャンシャンが子供のときに、お母さんのシンシンが餌を食べているところに近づいて、餌を取ろうとして怒られたことがあります。パンダは基本的に群れを作らず、単独で暮らす動物です。シャンシャンも1歳半頃に母親の元から離れて一人暮らしを始めたので、小さいときにしか見られない親子の微笑ましいやりとりにほっこりしました」
そのやんちゃな性格で飼育担当を困らせてしまうこともあった。
「シャンシャンは小さい頃から木登りが好きでした。まだ子供なのに、そんなに高いところまで登るのかというくらいで、ある時、木のてっぺんまで行ってしまったことがあります。なかなか降りてくれず困りましたよ。飼育員が帰る時間があるので、それまでに降ろすのが大変でした」
シャンシャンはこれまでに大きな病気もなく健康に育ったが、餌の好き嫌いが多く、飼育担当を苦労させたという。
「パンダなので主食は竹ですが、シャンシャンは竹の選り好みが他の子と比べて激しかった。同じロットの竹でも次の日は食べてくれなかったり、その時その時で好みが変わります。そのため、常にいろんな種類の竹を用意しないといけない。餌の確保が大変で、餌代も他の子よりかかりました」
歩き出して、初めて木に登って、お乳と並行してりんごを口にし始めて、そのうち一人で暮らすようになる……大橋氏は我が子のようにその成長を隣で喜んだ。そんなシャンシャンが日本から離れることをどう思うのか。
「動物園で暮らしていますが、パンダはあくまでも野生動物です。寂しくなりますが、園としてもパンダの保全を大切にしているので、中国に帰って子孫を残して欲しいという気持ちが大きいです」
保全と繁殖の推進という大きな使命を背負い、シャンシャンは中国へとわたる。だからこそ、園の人々もこれまでの思い出を胸に、笑顔で送り出すのだ。近い将来、シャンシャンの子供たちが見られる日が来るかもしれない。




『FRIDAY』2023年2月3日号より
PHOTO:(公財)東京動物園協会