オズワルド・伊藤俊介インタビュー「M-1には優勝するまで出る。でも優勝したら二度と出ない」
120分本音インタビュー 人気芸人が明かした胸の内 4年連続決勝進出でも届かない頂点……
「基本、緊張しない人間なんです、自分は。でも、M-1決勝の舞台だけは違う。めちゃくちゃ緊張する。なぜだろう? 順位が明確に出るからなのかな? あんな場所、何回出ても絶対慣れることなんてないと思う」
オズワルド・伊藤俊介(33)は4年連続で立った大舞台をそう振り返った。
2022年、「M-1グランプリ」優勝候補大本命と言われたオズワルドは、準決勝で一度は敗退するも、敗者復活戦で圧倒的なファンの支持を受け、4年連続4回目の決勝進出。しかし、またしてもあと一歩、王者の座には届かなかった。
いまや若手屈指の人気芸人となったオズワルドがそもそも賞レースを目指したのは、ほかに出世のための武器がなかったからだという。
「正直、オズワルドってコンビには、これといった特技もないし、変わった経歴があるわけでもない。だから世の中に出ていく方法がM-1しか思いつかなかったんです」
2019年、初めての決勝の舞台。オズワルドの直前に登場したのはミルクボーイだった。彼らは社会現象にもなった「コーンフレーク」ネタで史上最高得点を獲得する。
「あのネタを超えるのは不可能なんですよ。気合とかでなんとかなるレベルじゃない。
1年間M-1だけに照準を合わせて、ほぼ1年間1本のネタをずっとやってきて、朝起きてから寝るまでずっとM-1のことばかり考えていたけれど、あのネタには笑っちゃったもん、『これはちょっと無理だな』って思った」
夢の舞台には立てた。しかし、まさに売り出そうというタイミングでコロナ禍が日本を襲う。
「M-1決勝に行けば売れるんじゃないか、って漠然と考えていたんですけど、全然違った。それから1年、テレビ出演は、6〜7本しかなかった」
翌2020年は決勝5位と順位を上げ、2021年は、3年連続決勝進出。優勝候補に挙げられた。大方の予想通り首位で最終ラウンドに進出。優勝は目前に迫ったが、錦鯉に大逆転を許してしまった。
「錦鯉さん、すごかったなぁ。なんか錦鯉さんのそれまでの人生に負けたって感じがした。あとやっぱり自分たちも調子こいてたと思います。1本目終わって優勝すると思ってました、マジで」
そして昨年も、大きな期待の中、悔しい結果に終わった。
「面白くて当然」「決勝行って当然」「優勝して当然」――。オズワルドへの期待が高まるほど、笑いのハードルは上がっていく。それでも伊藤は言う。
「優勝するまで出る。出ますよ、そりゃあ! でも1回優勝できればもういい。二度と出ない。一生出ない(笑)。賞レースを意識しないで漫才を作りたい。コントだけのライブとかもやってみたい。あっ、でも『キングオブコント』には出ませんよ(笑)」
将来、伊藤はどんな芸人になりたいと思っているのだろう。
「〇年後に何をやって、みたいな目標はないんです。ただめちゃくちゃ売れたい。有名になって面白いって言われたい。めちゃくちゃ稼ぎたい、っていうだけですね。まだ自分はM-1で優勝していない。胸を張って自慢できる結果も出してない、そう思っています」
謙虚、そしてハングリー。オズワルドは闘志満々で2023年を迎えている。

取材:いけるか小机PHOTO:東山純一