「眺望」は望めないけど…タワーマンション「低層階にあえて住む人」たちの“理由” | FRIDAYデジタル

「眺望」は望めないけど…タワーマンション「低層階にあえて住む人」たちの“理由”

コンシェルジュにパーティールーム…タワマン自慢の共用施設が2~3割安く使える! 

タワーマンションは高層階に住むから意味があると思える。一方、高層階は停電になった場合や地震のとき大きく揺れるなどデメリットも。タワーマンションの低層階にはどんなメリットがあるのか。タワーマンションに批判的な不動産ジャーナリスト、榊淳司氏に聞いてみた。

「タワーマンションは戸数が多い場合が多く、1000戸以上あるところもあるし、500戸以上はザラにあります。このような戸数が多いタワーマンションの場合、共用施設が充実していて、タワーマンションの住民は高層階、低層階に関係なく利用できます。共用施設を使えるのはメリットではないでしょうか」

共用施設には、フィットネスジム、プール、スパ、サウナ、ラウンジやバー、大浴場などがあり、どのような共用施設が備えられているかは物件によって異なるという。たとえ管理費が少し高くても、フィットネスジムに通ったり、会費を支払うことを考えればお得かもしれないと思うけれど、

「利用する人にはいいかもしれませんが、利用しない人も同じ管理費を払わなくてはならないという側面はあります。また、たいていのタワーマンションには高層階にパーティールームがあり、眺望を楽しみながらパーティーができるようになっています」

都会の夜景を楽しみながらお酒を飲む。なかなか素敵じゃないか。

「ここは利用率が高いようで、会費制でしょっちゅうパーティーが開かれているようです。タワーマンションの眺望のいいところでパーティーをやるとなったら、女性たちも『ちょっと行ってみようか』という気持ちになるみたいですね。『こんなところに住んでるなんて素敵』と思われるかもしれないし」

確かに、ちょっと行ってみたい気もする。

だけど、メリットは共用施設だけなのか。フロントにはコンシェルジュがいて、いろいろなサービスをしてくれるとも聞くが、

「500戸以上だったら、フロントにコンシェルジュのような人もいるでしょう。これも物件によってサービスの内容は異なりますが、一般的にはクリーニングを預かったり、宅配便の発送、タクシーの手配、コピーやFAXのサービス、切手や電池も売ってくれる。これも利用する人にとっては便利なサービスですが、利用しなければ費用を負担するだけになってしまいます」 

一般的にタワマンの低層階は、高層階に比べると2~3割ほど安いといわれている。1億円の億ションなら、2000~3000万円オフでタワマンならではの自慢のサービスが使える! これは大きなメリットかもしれない。

一般的にタワマンの低層階は、高層階に比べると2~3割ほど安いといわれているけど…(写真はイメージ:アフロ)
一般的にタワマンの低層階は、高層階に比べると2~3割ほど安いといわれているけど…(写真はイメージ:アフロ)

セキュリティに関しては3重ロックが基本!

しかし、共用施設とコンシェルジュがメリットというのはさびしい。ほかにはないのか? セキュリティは万全なのでは?

「セキュリティに関しては3重ロックが基本です。エントランスに入るとき、エレベーターに乗るとき、そして住戸の前で。面倒といえば面倒ですが、セキュリティがいいことは確かです」

耐震性は? あれだけ高い建物を倒れないようにするのだから、耐震性はすぐれているように思える。

「耐震性に関しては、震度7の地震に耐えられるという基準を満たせばいいのですから、タワーマンションも、ふつうのマンションも変わりません。ただ、高層階に行くほど揺れるけれど、低層階ではそのようなことがないのが、低層階のメリットでしょうか」 

エレベーター待ち30分…でも、低層階なら階段を使える!

高層階はどうなのか? それなりの金額を払うのだから、それなりのことはあるんでしょうね。

「眺望だけでしょうね。風が強いので、ほぼ窓は開けられない。洗濯物を干すことはできないし、ベランダにものを置くこともできません。日照がきついので、南向きの高層階はたいへんです。夏などはカーテンを閉め切って、冷房をつけっぱなしにしなければならない。 

ただ、タワーマンションの高層階は眺望命なので、たとえば南向きの部屋から東京タワーが見えるなら、南向きが高くなるようです。 

しかも、出勤時などエレベーターがなかなか上がってこなくて、10分も20分も待たなくてはならない。低層階なら階段を使えるけれど、高層階はそうもいかない。階段を使えるのが、低層階のメリットかもしれません」 

階段を使えばいいかもしれないが、管理費の中にはエレベーターに使われる電気代も含まれている。いつも階段ばかり使っていては損ではないか。

2022年には80階建てのタワマンが完成したという北朝鮮。慢性的な電力不足が続き、限られた時間しかエレベーターが稼働しない北朝鮮では低層階が人気らしい(写真:アフロ)
2022年には80階建てのタワマンが完成したという北朝鮮。慢性的な電力不足が続き、限られた時間しかエレベーターが稼働しない北朝鮮では低層階が人気らしい(写真:アフロ)

管理費や修繕積立金が低層階なら「割引」になる物件も登場

「昔のタワーマンションは管理費や修繕積立金が㎡単位で計算されていましたから、購入価格から考えると低層階ほど割高でした。しかし、最近のタワーマンションでは階数によって少し差をつけるところが多いようです。とはいえ、高層階より2~3割ほど安いくらい。それでも、一般的なマンションと比べると、タワマンの低層階の管理費や修繕積立金は割高と言えるかもしれませんね」

うーん、なんだか低層階を選ぶ理由が見当たらない。低層階を選んだ人は、どこにメリットを感じて購入したのだろう。

「見栄でしょう。『あのタワマンに住んでいる』と言いたい気持ちが強いんだと思います。僕はタワーマンションには価格に見合うだけの合理性があるとは思えない。しかし、価値観は人それぞれなので、タワーマンションがカッコいいと思えば住めばいいと思います」 

榊淳司 1980年代後半から30年以上、マンションの広告・販売戦略立案にかかわる。その経験を生かし、一般ユーザーを対象に住宅購入セミナーを開催するほか、新聞や雑誌に記事を定期的に寄稿、ブログやメルマガで不動産業界の内幕を解説している。著書に『マンションは日本人を幸せにするか』(集英社新書)、『すべてのマンションは廃墟になる』(イースト新書)、『限界のタワーマンション』(集英社新書)ほか。

  • 取材・文中川いづみ

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