映画『イチケイのカラス』が正念場…フジテレビ「ドラマ→映画化」路線存続を決める興収10億円の壁 | FRIDAYデジタル

映画『イチケイのカラス』が正念場…フジテレビ「ドラマ→映画化」路線存続を決める興収10億円の壁

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映画『イチケイのカラス』に出演する主演の竹野内豊(下)とヒロインの黒木華(左)。そして師匠である小日向文世(右)の姿も…
映画『イチケイのカラス』に出演する主演の竹野内豊(下)とヒロインの黒木華(左)。そして師匠である小日向文世(右)の姿も…

竹野内豊が主演する映画『イチケイのカラス』が、公開1週間で興行収入4億円を突破。興行収入10億円突破を狙う好スタートを見せている。

このドラマは、’21年4月期に放送された“月9ドラマ”を映画化。型破りなクセ者裁判官・入間みちお(竹野内)と、上昇志向の強い堅物エリート裁判官・坂間千鶴(黒木華)の“ちぐはぐコンビ”が織りなすリーガルエンターテインメントだ。

全話平均12.6%と高視聴率をマーク。ドラマから2年が経ち、2人は瀬戸内海ののどかな街で偶然、再会するところから映画はスタートする。

「連ドラを映画化するのは、興行収入100億円超えを記録した『踊る大捜査線』シリーズ以来、フジテレビの得意とするところ。しかし昨年公開された『劇場版ラジエーションハウス』(興行収入9億円台)、『バスカヴィル家の犬 シャーロック劇場版』(興行収入5億円台)といずれも不発。“連ドラの映画化”の今後を占う意味でも、今作に注目が集まっていました」(ワイドショー関係者)

連ドラが高視聴率だからといって、必ずしも映画がヒットするわけではない。逆に『コンフィデンスマンJP』シリーズのように平均視聴率一桁台でも映画化され大ヒットする場合もある。要するに、映画向きの作品かどうかが決め手だ。

そうした点から見て、『イチケイのカラス』が果たして映画向きなのか。当初疑問視する声もあった。

「今作の主人公は、民放の連ドラ史上初の“刑事裁判官”。その点では、変わり者の検察官を主人公にした『HERO』シリーズにも似ています。だからといって、入間と坂間が裁判官のまま映画化していたら、好スタートを切ることができたでしょうか。

今作では坂間(黒木)が裁判官の他職経験制度を利用して弁護士という新たな舞台を選んだからこそ、『また新しい出会いや経験もあり、そこにフォーカスすることができた』と、映画『コンフィデンスマンJP』シリーズも手掛ける田中亮監督は話していますね」(制作会社プロデューサー)

偶然にもみちおの隣町で働き始めた坂間は、人権派弁護士の月本信吾(斎藤工)と組んで、街を支える地元大企業に持ち上がった疑惑にメスを入れる。しかしそれは開けてはならない“パンドラの箱”。イージス艦と貨物船の衝突事故に疑問を持ったみちおは、伝家の宝刀(職権発動)を抜き、裁判所主導で国家権力に立ち向かう。

クライマックスを迎える長い法廷シーンは、特に圧巻。弁護士として経験を積む内に、坂間は“正義は必ずしも一つではない”ことを知る。そうした葛藤を抱える坂間の成長の軌跡こそが、今作のカタルシスなのかもしれない。

しかし黒木演じる坂間の見せ場は、それだけではない。坂間と月本の間に、なんと連ドラにはなかった恋愛フラグまでもが立ち上がる。

「不審に思った地元大企業に深夜2人は潜入。ところが見つかってしまい、自転車を盗んで逃げる。その時、月本の背中にしがみつき、頰を寄せる坂間の恍惚とした表情は忘れられません」(制作会社ディレクター)

思い返せば連ドラの頃から、堅物の坂間が心震わせる場面を黒木は何度も演じてきた。特に第4話、誰もいなくなった法廷から唇を噛み締め嗚咽する姿は神回と呼んでもいい。

そして今作では男女の恋ではない、信頼や連帯感の中から生まれてくる本人も気がついていない“切ない恋心”を、黒木は見事に演じて魅せた。

そんな女優・黒木華の魅力を一言で表すことは、難しい。今シリーズでタッグを組む竹野内豊は

「素の黒木さんは、穏やかな一面とパンキッシュな一面が彼女の中に混在していて、そのなんとも言えないアンバランスさが彼女の魅力のひとつだと思う」

と話しているが、このコメントこそ、まさに言い得て妙。連ドラ、そして映画と共演を重ねてきた竹野内豊だからこそ、見えてきた黒木の魅力ではないか。

「黒木は’13年に出演した映画『小さいおうち』で、山田洋次監督に“日本一割烹着が似合う”女優と呼ばれ、ブレイクを果たした。しかし彼女の素顔は、決して楚々とした古き良き昭和の女性ではありません。

黒木は、セックス・ピストルズが好きで古民家よりも都会のスタイリッシュな暮らしを愛し、しかも『水曜日のダウンタウン』『有吉の壁』といったバラエティ番組を録画して観るほどのお笑い好きでもある。竹野内が言うように、このギャップこそ彼女の魅力であり、最大の武器なのかもしれません」(前出・ディレクター)

分岐点に差し掛かったフジテレビによる“ドラマの映画化”。今年の秋には、昨年1月期に放送された菅田将暉主演の月9ドラマ『ミステリと言う勿れ』が映画化される。

そのためにも映画『イチケイのカラス』、興行収入10億円超えに期待したい――。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)

    バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版中

  • PHOTO近藤 裕介

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