ついに監督の解任が発表…「日常的に体罰」報道された東海大菅生野球部で「本当に起きていたこと」
選抜選考委員会まで1週間を切った1月22日昼、東海大菅生(すがお)高(東京都あきる野市)を訪ねると、野球部員たちが粛々とグラウンド整備をしていた。
本誌記者に気づくと、全員が帽子を取り、大きな声で挨拶――したのだが、その表情にはどこか不安が滲(にじ)んでいた。彼らをセンバツに導いてくれたリーダー、若林弘泰監督(56)がこの場にいないばかりか、センバツ出場そのものが危惧されているからだ。
「若林監督の体罰の件で……」
ベンチ前でミーティングを始めた選手たちにこう声をかけると一瞬、動きが止まったが、すぐ全員でこちらに向き直り、真っ直ぐ記者を見つめた。体罰報道に対する〝無言の抗議〟――に見えた。
発端となったのは週刊文春1月26日号が報じた「バットで殴り…東海大菅生監督に暴力常習〝告発〟」という記事だ。若林監督が一年生部員のA君をノックバットのグリップエンドで殴りつけたり、蹴りを入れたり、胸ぐらをつかんで壁に押し当てるなど、毎日のように暴力をふるっており、A君は暴力行為に基づく適応障害との診断を受けて、昨年末に退学。他の有力選手も「十五発ほどビンタを受け」るなど日常的に暴力行為があった、という凄まじい内容だった。
いまどきそんな指導者が存在するのか。
選手に直接確認すべく、現地に飛んだ記者が見たのが冒頭の光景である。「日常的な暴力」によるアザやキズは、少なくとも本誌には確認できなかった。
記者が学校関係者に排除される直前、グラウンドにヤクルトOBの宮本慎也氏(52)が現れた。同校の臨時コーチであり、長男・恭佑(きょうすけ)君を通わせている「父兄」として、宮本氏は重い口を開いた。
「息子が菅生に通い始めてから若林監督の指導をちょくちょく見させていただきましたが、僕が見た限り体罰は一度もありませんでした。高野連に報告が行っているわけですから、体罰自体はあったのでしょうし、それ自体許されることではない。ですが、少なくとも記事に書かれていたような『日常的な体罰』はなかった。もちろん、生徒が叱られることはありますよ。ただ、例えばカバーリングを怠ったとか、必ず明確な理由がある。私の息子も叱られたことがあります。〝宮本慎也の子〟ということもあってこれまで一度も怒られたことがなかった彼は、『菅生に行って良かった』とむしろ感謝しています。『若林先生をセンバツに連れて行きたい』『ベンチにも入れないのですか?』と生徒たちに聞かれて、心が痛みます」
文春記者に直撃された若林監督は「言いたいことは山ほどある」としつつも具体的な反論はしなかった。知人が言う。
「俊足巧打のA君は一年生ながらベンチ入りした有望株。目にかけていたからこそ、熱心に指導した結果が『日常的な体罰』の告発……若林が不憫ですよ」
1月26日、同校は若林監督の解任を発表した。リーダー不在で、ナインは運命のセンバツ出場校発表を迎える。

『FRIDAY』2023年2月10日号より
PHOTO:小松寛之