「フィリピン全土に郵便局を建設する」と…”被害額”3億円超か「フィリピン郵政投資」の巧妙手口 | FRIDAYデジタル

「フィリピン全土に郵便局を建設する」と…”被害額”3億円超か「フィリピン郵政投資」の巧妙手口

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「フィリピンの国家プロジェクトへの投資話に騙(だま)されて、2000万円以上のカネが今も返ってきません。私の知る限り、少なくとも3億円以上の被害が出ているはずです。これ以上、被害者を出さないためにも、彼らの手口を明かそうと思いました」

そう語るのは50代の男性投資家X氏。彼のもとに”怪しい話”が持ち込まれたのは’16年春頃のこと。知人らとの会食で、不動産会社を経営する堀内隆(仮名)という人物に出会ったのが始まりだった。

本誌に「フィリピン郵政投資」の被害を告発するX氏。「これ以上被害者が出ないように」と取材に応じた
本誌に「フィリピン郵政投資」の被害を告発するX氏。「これ以上被害者が出ないように」と取材に応じた

「堀内は愛想がよく、人懐(ひとなつ)っこい性格で、その後何度か会食で会うようになった。ある時、彼から、フィリピンの郵政省が、国家全土に郵便局を建設する国家事業を進めており、そこに投資をしているという話を聞かされました。当時は胡散臭(うさんくさ)いと思い、話を聞き流していました」(X氏)

それからしばらく後のこと。堀内は、X氏に対し、投資が順調に進んでいて、今度ランボルギーニを買うことや、儲けたカネで新規事業をしたいから相談に乗ってほしいなどと言うようになった。

実は、’06年3月、アジアの経済情報を配信するメディアに、日本のソフトウェア会社「R社」が提案するフィリピン郵政公社の近代化に向けた事業計画が、政府によって承認されたという報道が出たことがある。堀内は、このR社の社長とビジネスパートナーで、資金調達を担っているとX氏に説明していた。

ところが――。’19年、X氏のところへ突然、堀内はこんな相談を持ちかける。

「フィリピンの事業でトラブルが起きて、カネが入らなくなるかもしれない」

堀内はX氏に対して、事業が止まれば10億円前後のカネが入らなくなるため、一時的な運転資金を貸してほしいと懇願したのだった。

「カネがあればすぐに事業は継続され、『色を付けて返す』と説明されたこともあり、約2400万円を貸しました。『1週間以内に返す』という彼の言葉を信じ、私は急いで資金を用意したのです」(X氏)

だが、1週間が過ぎても返済はなかった。

「最初はイギリスに本社がある銀行HSBCにR社の預金があり、そのカネで返済するから待ってほしいと言ってきました。その証拠にと、HSBCとR社が交わした書類の画像、R社社長と堀内のやり取りの内容がLINEで送られてきました。他にも堀内からはメトロポリタン銀行の預金証明書、三井住友銀行浜松町支店の口座証明書などR社の膨大な内部資料が送られてきました。そして、こちらが督促する度、『フィリピン財務省の手続き待ち』『いま金融詐欺やマネーロンダリングが横行しているために金融庁や中小企業庁のチェックを受けている』などと理由をつけ返済を遅らせてきたのです。ある時は、返済用のカネが海外から関西アーバン銀行(現・関西みらい銀行)に入金されてくるが、ロックがかかり引き落とせなくなったと言い始め、一緒に銀行まで行ったことも」(同前)

もちろん、X氏は堀内の”言い訳”を信用していたわけではない。そこで、「もう理由なんてどうでもいいから早くカネを返してくれ」と堀内に迫ると、彼は200万円弱の返済を行ったという。だが、残金は今も返済されず、その後、堀内に問い合わせをしても折り返し連絡が来なくなったというのだ。

事実関係を確かめるため堀内に電話やショートメールで取材を申し込んだが応答はなかった。一方、R社の社長に取材を申し込むと、こう答えた。

「うちは関係ない話。堀内さんを通じて投資を募(つの)ったことはない。堀内さんが、いろいろな人にお金を借りているというのは聞いています」

さらに後日、R社社長は堀内と電話で話したとして、改めてこう説明した。

「堀内さんに聞いたら『X氏からは借りていません』と言っていましたよ。逆にX氏にお金を貸しているそうです。(フィリピン事業の話も)X氏にはしていないと言っています」

だが前述した通り、X氏のもとには堀内から送られてきたR社の資料やLINEが多数残されている。X氏が話す。

「関西在住の人など、私のように堀内にカネを渡した被害者は他にもいます」

この怪しい投資話が事件化する日も近いのか。

左:堀内が提示した書類。他に預金証明書など様々な英文書類を見せ、返済遅れを弁明 中:X氏と堀内のLINEやり取り。伏せ字部分にはR社の社長名 右:X氏と堀内のLINE(右がX氏)。「フィリピン財務省」などの名前を出し、入金遅れを説明
左:堀内が提示した書類。他に預金証明書など様々な英文書類を見せ、返済遅れを弁明 中:X氏と堀内のLINEやり取り。伏せ字部分にはR社の社長名 右:X氏と堀内のLINE(右がX氏)。「フィリピン財務省」などの名前を出し、入金遅れを説明

「FRIDAY」2023年2月10日号より

  • 取材・文甚野博則(ノンフィクションライター)

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