NHK朝ドラ『舞いあがれ!』”貴司“赤楚衛二の短歌に歌人・俵万智が熱烈エールのワケ | FRIDAYデジタル

NHK朝ドラ『舞いあがれ!』”貴司“赤楚衛二の短歌に歌人・俵万智が熱烈エールのワケ

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現在放送中のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』でヒロインを務める福原遥
現在放送中のNHK朝ドラ『舞いあがれ!』でヒロインを務める福原遥

福原遥がヒロインを演じる朝ドラ『舞いあがれ!』(NHK)。第17週「大きな夢に向かって」では、舞と幼馴染の貴司(赤楚衛二)が急接近。生番組『あさイチ』の“朝ドラ受け”でも舞の貴司に対する態度に博多華丸から「思わせぶり」「惚れてまうやろ」といったツッコミも入っている。

舞の隣に住む貴司は、お好み焼き屋『うめづ』の一人息子。根っからの文学青年で世間の“ふつう”に馴染めずに就職した会社を辞め、旅をしながらその土地で働き、自分の居場所を探している。そんな貴司の生きる希望が、1300年受け継がれてきた“五七五七七”の魔法の杖、短歌である。

「会社を辞めた貴司が、昔舞からもらった絵葉書を頼りに長崎県・五島列島の大瀬埼灯台を訪ねます。そこで一夜を明かしながら詠んだ短歌『星たちの 光あつめて 見えてきた この道をいく 明日の僕は』には、『サラダ記念日』で知られる歌人・俵万智もツイッターで《結句の倒置が、いいなあ。“僕は”って開かれて終わると、そこに無限の未来が感じられる》と称賛のコメントを寄せています」(ワイドショー関係者)

俵は『舞いあがれ!』に初めて短歌が登場した際、すかさず

《言葉にすることの大切さが、心に響く朝だった。たかし君、短歌を作ろう!》

と呟いて以来、貴司が新しい短歌を詠む度にコメントを寄せてきた。

「実家の工場を立て直すために奔走する舞に『君がいく 新たな道を 照らすよう 千億の星に 頼んでおいた』という短歌を送り、《頼んでおいた…っていう動詞の距離感が絶妙。実質なんもしてないくらいの軽さで、でも気にかけてるってことは、しっかり伝わる》と味わい深く解説。

貴司の短歌が新聞の“今月の新鋭歌人”に選ばれると《貴司くんスゴイ!》と自分のことのように喜び、《どれもええ歌ですね…みなさんの心に寄り添ったのは、どの作品でしたか?》とつぶやいています」(前出・ワイドショー関係者)

『舞いあがれ!』で貴司の短歌を詠んでいるのは、今作の脚本を手掛ける桑原亮子氏。’11年には『歌会始の儀』で入選者10人に選ばれた歌人でもある。

自らも20歳の頃、人の声がまったく聞き取れなくなり、弁護士になる夢を諦めかけた時、詩や童話と出会い、やがて短歌を詠むようになった。“ふつう”に馴染めずに就職した会社を辞め、放浪の旅に出る、悩める貴司の姿は桑原氏自身の姿なのかもしれない。

「’20年には、みずからも被災した阪神・淡路大震災の体験に基づくオリジナルフィクション『心の傷を癒すということ』(NHK)の脚本を手掛け、大きな注目を集めた桑原さん。このドラマの最終回、被災者の心の叫びと向き合う主人公の精神科医・安和隆(柄本佑)が口にする『心のケアって何か、わかった。誰もひとりぼっちにさせへん、てことや』というセリフが多くの視聴者の胸を打ちました。

桑原さんは逆風にさらされた人に寄り添い、希望の光となるドラマを書かせたらピカイチ。貴司の短歌は、今作の道しるべと言っても過言ではありません」(制作会社プロデューサー)

目には見えないけれど、心に映っているものを詠むのが短歌。今作で貴司が詠む歌にエールを送る俵万智も、逆風に立ち向かう歌人のひとりだ。

「『サラダ記念日』が出た後、“君は心の音楽を聞ける人だから、何があっても大丈夫だよ”と師である佐佐木幸綱氏に背中を押され、俵は歌人を続けました。しかし優等生のイメージを覆して、40歳の時に父親の名前すら公表せずシングルマザーになり物議を醸しました。

さらに東日本大震災の際は情報が錯綜する中、子供を連れ沖縄へ。その時《子を連れて 西へ西へと 逃げてゆく 愚かな母と 言うならば言え》と詠み、非難する声がツイッターに殺到。何度も逆風にさらされてきました。だからこそ、今作には特別な思いがあるのかもしれませんね」(前出・プロデューサー)

1月20日の放送で、短歌界の芥川賞と呼ばれる“長山短歌賞”を受賞した貴司。舞との関係もさることながら、歌人・梅津貴司の今後がますます気になるところだ――。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)
  • 写真Pasya/アフロ

島 右近

放送作家・映像プロデューサー

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

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