宮台真司さん襲撃事件の容疑者が「死亡」していた…「犯人への刺激を避け」捜査協力も、解明は暗礁に
東京都立大教授の宮台真司さんがキャンパス内で切りつけられ、重傷を負った事件の容疑者とみられる人物が死亡していたことがわかった。
容疑者は相模原市の41歳で、昨年12月17日に自宅から約300メートル離れた別宅で首をつっているのを母親が発見した。遺書があったが、宮台さんの事件に関する記載はなかった。宮台さんは警視庁捜査1課に対し、この男について「心当たりはない」と話したという。
事件は昨年11月29日夕方、宮台さんが講義後、キャンパス内をひとりで歩いていた時に起こった。身長180~190センチほどの大柄な男が刃物を持って襲いかかり、宮台さんは、首や耳、脚など全身に数十ヵ所の怪我を負った。とくに膝の傷は深く、10センチほど切りつけられた。
直後、2日に分けて2度の手術を受け、「全身何針か数えきれない」ほど縫ったという。退院後はハードなリハビリを行って、2ヵ月後の現在、奇跡的な回復をみせている。
宮台さんは、退院の直後からインターネット放送で発言、「事件の所感」や、自身の著作に対する「誤読をふせぐ」ことなどを発信してきた。一方、事件の詳細については、
「犯人への刺激を避け、捜査の進行を妨げない、という観点から」
取材への対応を控えていた。捜査1課と相談のうえでの判断であったという。警視庁の公式HPによると、この「事案の概要」は、
「殺意を持って所携の刃物でその頸部などを数回突き刺すなどしたが、被害者に全治1か月を要する傷害を負わせたにとどまり、殺害の目的を遂げなかったもの」
とされていた。
「安全地帯でしゃべっていると思われたくない」
1月30日、宮台さんは、厳戒警備のなか事件後初の「対面講演」を行った。東京音大で、50人ほどの聴衆に語りかけた後、記者団に対し、
「多くの人の顔を直接見ながら話すことができてうれしい。首や脚を切られた傷はある程度回復したものの、階段を使う時にはかばうように歩くなど、影響は残っている。ただ、襲撃によって、怖くなって安全地帯にとどまり外に出なくなることは避けたい」
と、暴力に怯まない、暴力によって萎縮しないことを訴えた。
容疑者の姿は、周辺複数の防犯カメラが捉えており、その映像は早くから公開されていたが逮捕には繋がらず、捜査が進まないことに疑問の声もあった。容疑者は、公開手配の直後に自殺していた。
捜査1課が殺人未遂の疑いで行方を追っていた容疑者の「死亡」という急展開だが、言論を脅かした犯罪の「真相」解明が待たれる。


写真:共同通信