世界がいろんな意味で大注目…「タリバン政権お墨付きスーパーカー」の実力は?
地を這うような漆黒のボディ。まるで映画『バットマン』に登場するバットモービルのようなデザインだが、これは「MADA9」と呼ばれる実在の車である。昨年末にアフガニスタン史上初の国内生産スーパーカーとして発表されて以来、世界中で大きな注目を集めている。

「最高速度は時速200㎞、燃費はリッターあたり13㎞ほどと思われます。エンジンは新規開発ではなく、’98〜’09年にTOYOTAのカローラなどに使われた1ZZ型というモデルを積んでいる。そのため、製造コストは5万ドル(約650万円)ほどと、かなり抑えられています。一方で、F1で導入されているサスペンションが組み込まれるなど最新技術も使われており、現在のアフガニスタンの技術レベルを考えると、かなりの高水準といえます」(自動車生活ジャーナリスト・加藤久美子氏)
’21年8月にタリバン政権が復権して以来、国内情勢が不安視されているアフガニスタン。国連からはいまだに正式な政府として認定されておらず、国際社会から支持を得られているとは言い難い。
そういった背景もあってか、タリバン政権はSNSなどで積極的に「MADA9」を宣伝。開発を行ったデザイン会社エントップの広報担当者は「アフガンの未来の象徴になってほしい」と語る。
「国内には約220万トンのリチウムが埋まっているとされ、埋蔵量は世界トップクラスです。将来、この資源は電気自動車などを作るうえで役立つでしょう。我々はイーロン・マスクさんに『アフガンで一緒に電気自動車を作りませんか!』と伝えたい。今後は多くの海外の投資家がアフガンの自動車産業に参入してくれることを願います」
アフガン情勢に詳しい国際ジャーナリストの山田敏弘氏も、国際社会へのPRとして効果的だと分析する。
「この車で、国のイメージを『戦場』から『スーパーカーが走る先進都市』へと変えることができるか注目です。これは国際社会に認められるための大きな一歩です。ゆくゆくは現政権のクリーンな資金源としても発展してほしいですね」
自動車産業の発展がアフガニスタンの平和に繋がればよいが、はたして――。

PHOTO:エントップ社提供