写真家・名越啓介氏が捉えた日系ブラジル人「終わりなき日常を生きる」 | FRIDAYデジタル

写真家・名越啓介氏が捉えた日系ブラジル人「終わりなき日常を生きる」

愛知県豊田市 在日外国人たちの経済苦、差別、そして家族愛…… 公開中の映画『ファミリア』のモチーフとなった写真集から珠玉ショットを公開

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Pedro the GodSon氏。約4000人の日系ブラジル人が住む保見団地のまとめ役として人望が厚い(’21年撮影)
Pedro the GodSon氏。約4000人の日系ブラジル人が住む保見団地のまとめ役として人望が厚い(’21年撮影)

役所広司主演の映画『ファミリア』が注目を集めている。日系ブラジル人を取り巻く貧困・差別、そして家族愛を描く本作には、実はモチーフとなった写真集が存在する。世界を舞台に活動する写真家・名越啓介氏が「保見(ほみ)団地」(愛知県豊田市)に住む日系ブラジル人たちの日常を捉えた『Familia 保見団地』(’16年)である。

名越氏は’14年から’16年まで実際に団地に住み、4万枚以上の写真を撮影。写真集を出版した後も足を運びつづけている。

「保見団地は、私が初めて日本を舞台に撮影した場所です。フィリピン・マニラのスラム街『スモーキーマウンテン』を10年以上撮影し、次は国内で撮ってみたいと思っていた矢先に出会ったのが保見団地でした。日系ブラジル人の少年少女がポルトガル語で話しながら遊んでいる姿に興味を持ちました。

住んでみてわかったのは、日本人にもブラジル人にもなれないという葛藤の存在です。文化の違いから日本に馴染めず、ブラジルに帰っても、一部の人は現地で浮いてしまってリンチの餌食にされたり、引きこもりになってしまったり。結局、日本に戻ってくるケースも多いんです。一方で、団地の一体感というか、家族愛が非常に強い。複数家族で行うBBQは当たり前。離婚した元旦那と今の旦那、子供たちで一緒に帰省する女性もいました。その独特な〝日常〟に惹かれて、いまも撮り続けているんです」

今日も保見団地は、そこに在る。

ガールフレンドの誕生日を親戚の家で祝う様子。親戚中のカップルが熱烈に口づけを交わす、それがブラジル流
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愛知県豊田市にある保見団地。田んぼのすぐ隣に67棟が立ち並ぶ。名越氏によると、’13年ごろは3000人ほどだった外国人は近年約4000人まで増えている
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久屋大通公園(名古屋市中区)にて開催された「名古屋ブラジルフェスタ」にて出会った女子高校生。同フェスタでは、ブラジル料理やサンバで盛り上がった
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過去には日本人とブラジル人の常識の違いからトラブルがあり、エスカレートすると車が燃やされてしまうこともあった。写真のように、流血騒ぎになることも
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中学校の卒業式の様子。年々外国人が増え、現在は近隣の中学校の約半数の生徒が日系ブラジル人のため、学校HP等ではポルトガル語が併用されている
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団地近くのコンビニエンスストアの張り紙。ポルトガル語で新型コロナ対策の注意書きが書かれている。コロナ前は盛んだった酒盛りも減った(’21年撮影)
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サンバ隊が登場し、団地の夏祭りを盛り上げる。近隣住民も当初は困惑したそうだが、ブラジル人が住み始めて30年以上が経過した今では恒例行事となったという
サンバ隊が登場し、団地の夏祭りを盛り上げる。近隣住民も当初は困惑したそうだが、ブラジル人が住み始めて30年以上が経過した今では恒例行事となったという
現地の暴走族に加入した青年。特攻服を着て日本人メンバーと行動を共にした。現在、豊田では暴走族は衰退の一途を辿っているという
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日系ブラジル人には走り屋が多く、近所のサーキットに時折集まる。赤ん坊は下写真の夫婦の子(’21年撮影)
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名越氏が3年間の住み込みの撮影で最も強く感じたのが「家族愛」。写真集のタイトルの由来にもなっている
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名越啓介/写真家。奈良県出身。45歳。大阪芸術大学卒業。インスタ(@keisuke_nagoshi)。被写体と寝食を共にするスタイルが特徴。過去作に、『CHICANO』(東京キララ社)など多数。保見団地の写真展が4/12(水)〜4/29(土・祝)にKiyoyuki Kuwabara Accounting Gallery(東京・千代田区)にて開催予定(タイトル未定)

『FRIDAY』2023年2月10日号より

  • PHOTO名越啓介

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