鹿児島では4m超えのイタチザメが…漁師&専門家が緊急警鐘!「人喰いザメ」大量発生中!
「深夜1時頃、サワラ漁をしていたら急に大きな水飛沫が上がったんです。なにかと思って覗くと、突然ヤツの顔がヌッと現れて。本当に怖かった……」
昨年5月下旬、山口県の小さな港町を恐ろしいニュースが駆け巡った。周防(すおう)大島の浮島(うかしま)漁協に所属する中村忠嘉さんの仕掛け網に掛かったのは、体長約3.5mのホオジロザメだ。
「弱ってはいましたが、それでも迫力は十分でした。80歳になる私の父は長年地元で漁師をやっていますが、姿を見たのは初めてだと驚いていましたね」
令和に入り、日本中でサメによる被害が急増中だ。’21年には茨城県でメジロザメと思われるサメにサーファーが襲われ、21針を縫う大怪我を負った。愛知県でも同様の事故が発生。各地で「人喰いザメ」の目撃情報や被害が相次いでいるのだ。
漁業にも甚大な影響をもたらしている。鹿児島県ではイタチザメによる漁業被害が増加。もともと生息域ではあるが、近年は大型の個体も増えているという。
「全長4m、300㎏超えの大物が掛かったこともあった。サメは仕掛けの網や養殖のネットを食い破ってしまうので、漁業が成り立たない。漁師には死活問題だよ」(奄美漁協組合所属の漁師)
同じく奄美大島にある名瀬(なぜ)漁港でも、深刻な被害が発生している。
「年を追うごとに被害は増えている印象です。今では漁獲量の1割程度は水揚げ時にサメに齧られたりして売りものにならない。被害額にすると、1隻あたり年間100万円は下らないでしょう。私たちの漁協だけでも約1000万円の被害が出ていると思います」(名瀬漁協関係者)
被害が続出する背景には、何があるのか。サメの生態に詳しい東海大学海洋学部の堀江琢准教授はその一つに温暖化を挙げる。日本近海の海水温はこの100年で1.19℃上がっており、これは世界平均の2倍以上の上昇率だという。
「温暖化により日本近海がサメにとって快適な場所になっている可能性は見過ごせません。人間による影響も大きい。乱獲によりエサとなる魚が近隣諸国の海域から減少する一方、日本では屋久島でエサとなるアオウミガメの保護を行っている。それらも影響していると思います。サメの生息数は、実は多くの種で減少傾向なんです。たとえばメジロザメは昨年、ワシントン条約で国際取引の規制対象になった。それにもかかわらず日本近海で遭遇率が高いのは、それだけ日本に集まってきている証拠と言えます」
昨年、オーストラリアやバハマでは観光客がサメに襲われ、死亡するケースが発生した。「人喰いザメ」が増加すれば、今後このような死亡事故が日本でも発生する可能性が高い。堀江氏が続ける。
「一番の問題点は有効な対策がないことです。被害が多い地域では夏場に駆除を行っていますが、日本が生息域になっている以上、効果はもって数ヵ月です。電気ショッカーも導入されていましたが、コストがかかり継続性はない。サメはイタチザメなど夜間に活発になる種が多いので、夜から明け方にかけては海に入らないことが、唯一できる対策でしょう」
現場からは悲痛な声が上がっている。
「被害があまりにも増えすぎて、民間では対応できない。国には真剣にこの問題に向き合い、補助金の増額など対策を講じてほしいです」(前出・奄美の漁師)
悲惨な事件が起きる前に、早急な対応が求められる。


『FRIDAY』2023年2月17日号より
PHOTO:なぎさ水族館提供(ホオジロザメ) 名瀬漁協の地元漁師提供(イタチザメ)