WBC台湾代表から漏れた「英雄」…陽岱鋼「日本球界復帰にアピールも」厳し過ぎる「今後」
「英雄」は選ばれなかった。
3月から始まるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)。日本ハムや巨人に在籍し、台湾で圧倒的な人気を誇る陽岱鋼(36)が母国の代表選考から漏れたのだ。
「陽は日本ハム時代にゴールデングラブ賞を4度獲得し、盗塁王をとったこともある走攻守三拍子揃った選手です。しかしFAで16年に巨人へ入団してからは、目立った結果を残せませんでした。巨人は5年総額15億円といわれる破格の契約をしましたが、陽が100試合以上に出場したのは19年だけでしたから。
21年の出場はわずか7試合。とても年間3億円の働きをしたとはいえません。要因はケガの多さにあります。巨人に入ってから、太モモを痛めるなどケガが常態化していた。日ハム時代は足が自慢でしたが、満足に走れる状態ではありませんでした」(球団関係者)
「プライドが許さない」

巨人は22年も契約する意向を示したが陽が拒否。「新たなステージに挑戦したい」という本人の意向が尊重され、退団が決まった。
「契約延長要請は、巨人の陽に対する敬意ですよ。陽は小学生時代からナショナルチームに所属し日本でプレーする、台湾のスーパースターです。巨人戦は台湾でも放送されています。『英雄』陽は、台湾での巨人人気を支えていましたからね。
ただ、戦力になっていなかったのも事実。巨人は22年の年俸として、3000万円程度の大幅減俸を提示したといわれます。減額制限(40%)をはるかに超え、21年の10分の1ほどです。成績を考えれば妥当な金額だと思いますが、陽としてはプライドが許さなかったのでしょう」(同前)
メジャーにも興味を示していた陽だが、移籍先はなかなか決まらない。結局、22年は渡米し独立リーグでプレー。冬場に入ると、オーストラリアのウィンターリーグに参加した。
「米独立リーグでもオーストラリアでも、打率2割台半ばとイマひとつの成績でした。身体の状態は悪くないようですが、年齢的な衰えは隠せない。いくら『英雄』とはいえ、陽が台湾代表に選ばれなかったのも仕方ないでしょう。
ただ本人は現役続行を希望しています。日本球界にも働きかけているそうですが、獲得に乗り出す球団があるとは思えません。陽は台湾のスターとしてプライドが高く、チームとしては扱いにくい選手ですから」(スポーツ紙担当記者)
現実的なのは台湾プロ野球への加入だ。だが、ここにも障害がある。福岡第一高へ野球留学し日ハムへ入団した陽は、いきなり同国のプロ野球でプレーすることができない。ドラフトを経て入団しなければならないのだ。
「台湾のドラフトは、例年6月下旬から7月に行われます。普通に考えれば、社会人など台湾のアマチュア野球を経験し来年の指名を待つことになるでしょう。社会人チームとしては、ドラフト前の数ヵ月だけでなく1年はプレーしてもらわないと、さすがに腰かけと思われ体裁が悪いですから。しかしプロ復帰までの1年は、30代後半の陽にとって大きなタイムラグとなります」(同前)
明るい展望が見いだせない陽。「台湾のスター」は、どんな決断をするのだろうか。


写真:AP/アフロ