【試し読み付き】ミニスカ魔女に惹かれシリアスなギャグに笑う『そんなヒロキも異世界へ』が描く新境地
かわいい女子高生の無人島サバイバル生活を描き累計発行部数100万部を突破した大ヒット作『ソウナンですか?』を手掛けた岡本健太郎×さがら梨々コンビの新作『そんなヒロキも異世界へ』の第1巻が発売された。今作は異世界モノというレッドオーシャンに挑んだ意欲作だ。
2002年以降、小説投稿サイト「小説家になろう」の投稿から人気に火がついたジャンルである“異世界モノ”。今流行っているのは、現世で不幸な目にあった主人公が、死亡または召喚されることで別世界に転生・転移し、転生者ならではのチートスキルで幸せになるというものだ。
『そんなヒロキも異世界へ』は“異世界モノ”のセオリーをひと通りおさえた上で、もうひとひねり加えてパロディ作品としても完成度の高い作品になっている。ヒロキを異世界に召喚したのはスタイル抜群の魔女エルフのミリア。しかし、つければ魔導師になるという「マジカルリング」を外すと、もっさいオタク女子に大変身してしまう。性格はギャルっぽくて現代の日本事情に詳しいなど、 “魔女”から想像されるキャラクター性をことごとくズラす設定となっている。
そして読者のアバターともいえる主人公ヒロキは、現代日本の世知辛い価値観と、青少年らしいエロさをキープしており、読者が「そんなワケないだろ」と思うところで的確なツッコミを入れる。「エルフの耳を見せるのが、胸を見せるより嫌だ」と恥ずかしがるミリアに対し、「だったら僕…乳首の方がいいです」とちゃんと欲望を口に出すなど、読者とのシンクロ度の高さがポイントだ。そんな性格のヒロキなので、すんなり“モテモテヒーローの美女ハーレム”展開とはならず、似ているけれど、どこか違った形で物語が展開していくのも見どころである。
なにかと気疲れが多い現代社会。ストレス解消に岡本健太郎の小気味良いテンポのギャグとさがら梨々が描くエロかわ魔女が巻き起こす、異世界ラブコメディをお楽しみあれ!
- 取材・文:中村美奈子