神戸・高校生刺殺事件 被害者の父が無念を告白「少年法」で守られる犯人への静かな怒り | FRIDAYデジタル

神戸・高校生刺殺事件 被害者の父が無念を告白「少年法」で守られる犯人への静かな怒り

’10 年10月、神戸市内で男子高校生が路上で刺され死亡 当時17歳だった犯人は11年後にようやく逮捕されたが、逃亡中、周囲に犯罪を吹聴し、SNSでも盛んに自己発信

  • Facebook シェアボタン
  • X(旧Twitter) シェアボタン
  • LINE シェアボタン
  • はてなブックマーク シェアボタン
亡くなった将太さんの父・敏さん。「息子の存在を生かし続けたい」という思いから講演活動も行っている
亡くなった将太さんの父・敏さん。「息子の存在を生かし続けたい」という思いから講演活動も行っている

いまから13年前、神戸市北区の路上でその凄惨な事件は起きた。’10年10月4日夜10時45分頃、住宅街に置かれた自販機の前で、高校2年生の堤将太さんは、知人の女子生徒と談笑していた。少し離れたところに腰掛け、二人を見つめる男……。「気持ち悪い人やね」「ほんまやな」。将太さんたちはそう怪しんだ。

そして突如、男は無言のまま将太さんたちに近づき、ナイフで襲いかかった。「逃げろ!」という将太さんの声と女性の悲鳴が現場に響き渡る。頭や首を刺された将太さんは、翌5日、搬送先の病院で亡くなった――。

それから11年の時を経た’21年8月、「神戸高校生刺殺事件」の犯人は突如逮捕された。精神鑑定を経て起訴されたが、犯人は犯行当時17歳だったため、現在も実名は報道されていない。

「犯人のXは当時現場付近に住んでおり、凶器のナイフもすぐに発見された。にもかかわらず10年以上も逮捕に至らなかったのは、警察の初動捜査が原因の一つとされています。警察は事件発生当初、怨恨の筋で捜査を進めた。しかし実際には、完全に通り魔的な犯行でした」(全国紙社会部記者)

逮捕前、Xは「人を殺したことがある」などと周囲に吹聴していたという。将太さんの衣服から検出されたDNA型とXのものが一致したことが、逮捕の決め手となった。

将太さんの父・堤敏(さとし)さんが、静かに怒りを滲ませる。

「犯人は10年以上も逃げ続け、現在30歳を超えています。しかしそれでも、犯行当時に17歳だったからという理由で少年法に守られ、犯人に関する詳細は明かされていない。釈然としません」

敏さんは昨年末、検察から連絡を受け、今年6月からようやくXの裁判が始まる予定だと伝えられたという。

「3日間、裁判員裁判が開かれるとのことです。一般的な裁判員裁判は1週間ですから、明らかに短い。被害者遺族には何の相談もありませんでした。わずか3日間で事件の全貌を明らかにできるとは到底思えず、今年1月16日に私から神戸地検に出向き、詳細を聞きに行きました」

しかしそれでも、裁判の日程が変わることはなかった。

「10年以上に及ぶ逃亡生活についても裁判では明らかにしてほしい。そのためには3日間では到底足りないと思いますが、検察には『今回の裁判とは関係ない』と指摘されました。釈然としない気持ちは残りましたね」

逮捕、起訴の取り調べの過程では、Xの驚くべき犯行動機や逃亡中の行動も明らかになった。Xは犯行に及んだ理由について、「(将太さんが)女の子と話しているのを見て腹が立った」と供述。さらに、’17年頃には高校生が刺殺される内容の小説を書いていたことも判明した。

それだけではない。ネット上ではXのものとされるSNSアカウントも発見されている。そこには、「DEATH DRIVE(死の欲動)」というタイトルがつけられた暗い背景に立ちすくむ人物や、「死滅」というタイトルに血まみれの女性といった、不気味な画像が多数投稿されている。

敏さんが淡々とした口調で語る。

「逮捕後も犯人は何の反省の言葉も口にしていませんし、彼の保護者からも何の連絡もありません。ただ……そんなことで憤るような時間はもう過ぎてしまったんです。法律にしたがって、きっちりと罪を償うようにしてもらいます」

6月の裁判で、Xは何を語るのか。敏さんは、「裁判が終わっても被害者に終わりはないんです」と語った。

将太さんの遺影のまわりには、好きだった飲み物などが供えられている。昨年9月には十三回忌法要が営まれた
将太さんの遺影のまわりには、好きだった飲み物などが供えられている。昨年9月には十三回忌法要が営まれた
将太さんが刺殺された現場で手を合わせる女性。付近の側溝から凶器のナイフが捨てられているのが発見された 
将太さんが刺殺された現場で手を合わせる女性。付近の側溝から凶器のナイフが捨てられているのが発見された 
事件以来、父親の敏さんは地元・神戸で情報提供を求めるビラを配ってきた。犯人逮捕には11年の時を要した
事件以来、父親の敏さんは地元・神戸で情報提供を求めるビラを配ってきた。犯人逮捕には11年の時を要した

『FRIDAY』2023年2月17日号より

  • PHOTO加藤 慶 共同通信社(3~4枚目)

Photo Gallery4

FRIDAYの最新情報をGET!

Photo Selection

あなたへのおすすめ記事を写真から

関連記事