1979年、神奈川県出身。幼少の頃からサッカーに親しみベルマーレ平塚（現湘南）の下部組織でプレーした経験を基に、04年からフリーランスのスポーツライターとして活動。サッカー、カーリング、メジャーリーグベースボールなどを中心に取材を続けている。2019年１月に出版された元日本代表・本橋麻里著『0から1をつくる 地元で見つけた、世界での勝ち方 』(講談社現代新書)　では構成を担当

竹田 聡一郎

<figure id="attachment_294728" aria-describedby="caption-attachment-294728" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="3f666bdf"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/RYA_7167.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-294728" class="wp-caption-text">２連覇を達成したスキップ藤澤五月（中央）とセカンド鈴木夕湖（右）とリード吉田夕梨花（左）　（C）JCA IDE</figcaption></figure>
<p>カーリング日本選手権は２月５日、女子決勝が行われ、昨年の北京五輪で日本代表として銀メダルを獲得したロコ・ソラーレがSC軽井沢クラブを破り、２年連続４度目の優勝を飾った。３月の世界選手権に日本代表として出場する。１月、カナダで行われた「CO-OP CANADIAN OPEN」で優勝。初めてグランドスラムを制し、日本の女子カーリング界の新たな歴史を刻んで挑んだ凱旋試合だったが、５日の決勝を戦うまで２敗を喫するなど、順風満帆ではなかった。それでもライバルの台頭をむしろ歓迎するコメントが出てきたことには、深い理由があった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「もちろん勝負ごとなので負ければ悔しいですけれど、ライバルが増えるのは嬉しい。みんなずっと続けてほしいです」</span></p>
<p>オフにロコ・ソラーレのスキップ藤澤五月は、昨年の日本選手権で続々と出現した若手についてそう語っていた。特に当時平均年齢が20歳に満たない北海道銀行が躍動し、３位に入賞している。 さらにジュニアのカテゴリーではあるが、SC軽井沢クラブJr.が日本カーリング史上初めて世界大会での金メダルを獲得した。若手の台頭の目立つシーズンでもあった。</p>
<p>藤澤は若い世代について「私が同い年だった頃と比べると、知識や経験、情報も多いですしみんな確実に私より上手です」と認めた。リードの吉田夕梨花に同じ質問をすると「頼もしい後輩がたくさん出てきて嬉しいです」とやはり笑顔を見せた。 今年の日本選手権もさらに次世代の台頭は進んだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「若い子たちは本当に上手でどんどん出てきているので、日本のカーリングの未来は明るくてハッピーです」</span></p>
<p>セカンドの鈴木夕湖がそうコメントしたように、１月にカナダで行われた「CO-OP CANADIAN OPEN」で初めてグランドスラムを制して挑んだ凱旋試合だったが、世界の頂点を獲っても国内では簡単には勝たせてもらえない。</p>
<p>ラウンドロビン（総当たり予選）で、世界ジュニア金メダルメンバーの山本冴を迎えた北海道銀行に黒星をつけられた。東北勢として６年ぶりの４強進出を果たしたフィロシーク青森にも敗戦を喫した。元々、ライバル関係だった中部電力には勝ったものの、接戦を強いられた。</p>
<p>それでもロコ・ソラーレは崩れなかったし、さらなる若手の成長を喜んだ。 昨季の終わりに「そろそろ好きなようにできる」と吉田夕が話してくれたことがあるが、ロコ・ソラーレは常に伸び伸びと「好きなように」カーリングに取り組んでいるように見える。自分勝手にという意味ではなく、勝ちたいという欲に忠実にトレーニングを積み、やってて楽しいカーリングを求め、欲しいタイトルに向かって邁進してきたはずだ。</p>
<p>それでも「好きなように」とは具体的に何を指すのか、と吉田夕に質問をすると「いくつかありますが、例えばスラムを本格的に勝ちにいくこと」と答えた。「スラム」とは、ワールドツアーで上位ランキングチームのみが招かれるメジャータイトル「グランドスラム」のこと。現在は６大会がそれに該当する。2018年の平昌五輪の前あたりから目標に掲げていたが、前述のように今年１月の「CO-OP CANADIAN OPEN」で優勝。実に、20回目の挑戦で初めて頂点に立ったグランドスラム制覇は５年越しの夢で、アジアのチームとしても初となる歴史的な快挙だ。</p>
<div data-friday-nextpage-lead="無意識に存在していたプレッシャー"></div>
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<figure id="attachment_294729" aria-describedby="caption-attachment-294729" style="width: 1024px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="d2d1897c"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/YAR_8701.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-294729" class="wp-caption-text">優勝したロコ・ソラーレ（最前列）とともに、準優勝のSC軽井沢クラブ（２列目）、３位の中部電力も記念撮影に収まった（C）JCA　IDE</figcaption></figure>
<p>2016年の世界選手権で銀メダル、2018年の平昌五輪で銅メダル、そしてグランドスラム制覇も含め、彼女らの実績には常に「日本カーリング界初」という枕詞がつくようになった。加えて流行語大賞を獲得するなど、カーリングというスポーツを知らない人は極めて少なくなったのは彼女らの人気によるところが大きい。 さらに男子やミックスダブルスが北京五輪出場を逃したことで、いつの間にかロコ・ソラーレはカーリングのアイコンになっていた。</p>
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<p>もちろん人気が出ること、応援してもらえることはポジティブなことだが、一方で、カーリング界全体がロコ・ソラーレ頼みという一極化のリスクもあった。カーリング界を背負って走り続けなければ、というプレッシャーが無意識に存在していたかもしれない。過去数年はシーズン最終戦後に「今は少し休みます」と安心したような笑顔で語っていたのが印象的だった。</p>
<p>世界最高峰のタイトルを獲得するけれど、日本では苦戦する。強力なライバルの存在を笑顔で歓迎する。普通なら矛盾をはらんでいるのだが、ロコ・ソラーレの場合はそれが成立しうる。あるいはそれは安堵に似た感情でもあるのではないか。</p>
<p>2021年でパシフィック・アジア選手権（現パンコンチネンタル選手権）を制した北海道銀行フォルティウス（現フォルティウス）や、昨年の世界選手権でクオリファイ（プレーオフ進出）目前だった中部電力（新型コロナウイルス感染で途中棄権）など、自分たちを脅かすライバルが競技力を高めている。さらに、北海道銀行をはじめとした有望な後進が出現してきた。</p>
<p><span class="strongInContent">「自分たちだけが日本のカーリングを背負わなくていいんだ」</span>と肩の力を抜いて「好きなようにやる」には十分な材料だ。人気も良い意味で分散され、突き詰めれば競技人生にいつ区切りをつけても、カーリングの灯は消えないという安心感を得たのではないか。</p>
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<p><span class="strongInContent">「私たちは世界選手権に出たいという気持ちが誰よりも強くあった」（藤澤）</span></p>
<p><span class="strongInContent">「世界選手権に出られるのがワクワクが止まりません」（吉田夕）</span></p>
<p>日本選手権優勝後の会見でそれぞれが語ったように、ロコ・ソラーレの次なる目標は世界選手権だ。</p>
<p>トップランナーとしての矜持やカーリングの未来というある意味での重荷は、手強いライバルや頼もしい後輩が分担してくれることが分かった。そろそろ結果よりも内容、自分たちのやりたいカーリングを好きなようにやるために100%集中して楽しんだ上で勝ち方を選んでもいい頃だ。そして、そういうロコ・ソラーレこそ強い。</p>
<p>解き放たれた彼女らがどんなカーリングを見せてくれるのか、楽しみでしかない。世界選手権の開幕は３月18日だ。</p>

<figure id="attachment_274197" aria-describedby="caption-attachment-274197" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7ddcd466"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/KNE4808.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274197" class="wp-caption-text">ところ常南ビーチにて。「北海道の夏は短いので海に入ることはほとんどないです」という貴重なショット（撮影：長濱耕樹）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_274201" aria-describedby="caption-attachment-274201" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="4a14d3c4"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/KNE6085.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274201" class="wp-caption-text">地元の行きつけ寿司店「松寿し」にて</figcaption></figure>
<figure id="attachment_274199" aria-describedby="caption-attachment-274199" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="655646fc"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/KNE5948.jpeg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274199" class="wp-caption-text">サロマ湖にて。「都会よりも、お米とお酒の美味しい、自然が多い場所のほうが好きです」</figcaption></figure>
<figure id="attachment_274200" aria-describedby="caption-attachment-274200" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="a4845644"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/KNE6071.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274200" class="wp-caption-text">ビールで乾杯してから日本酒に移行するのがいつもの呑み方だとか。好物は寿司、天ぷら、ジンギスカン、あんこ。嫌いな食べ物はほとんどない</figcaption></figure>
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<figure id="attachment_274193" aria-describedby="caption-attachment-274193" style="width: 768px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="29ba4c58"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2022/11/dd8752e29d989e477ed3e876417cfedd.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-274193" class="wp-caption-text">北京五輪の表彰式後。初出場だった平昌より「他競技をテレビ観戦するなど楽しむ余裕があった」</figcaption></figure>

竹田聡一郎

２連覇を達成したスキップ藤澤五月（中央）とセカンド鈴木夕湖（右）とリード吉田夕梨花（左）　（C）JCA IDE カーリング日本選手権は２月５日、女子決勝が行われ、昨年の北京五輪で日本代表として銀メダル

ロコ・ソラーレが連覇！藤澤五月が「頼もしい後輩が出てきて嬉しい」とライバル台頭を喜んだ意外な理由

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