事故車が街の駐車場に放置される事例が多発…カーシェアリング「ボコボコ大破車両」乗り捨て現場
テープでぐるぐる巻きにされた車が都内某所に停(と)まっている。さらに埼玉県川口市でも脱輪し、フロントバンパーが完全に落ちてしまった車を発見。周りの車もすべてカーシェアリングの事故車だ。’09年からこうした事故車を撮り続ける40歳代の男性はこう明かす。
「私が予約していたカーシェアリングの駐車場に行くと、ボコボコになった車両が停まっていて、その衝撃で思わず撮影したのがきっかけで、撮り続けています。コロナ禍に入って、大破した車を見かける回数も増えました」
昨年の日本国内のカーシェアリングの会員数は約263万人。コロナ禍に突入した’20年より58万人も増えた。電車など公共交通機関よりも感染リスクが低く、車通勤を勧める企業もあったため、マイカーを持たず運転経験の浅い人でも気軽に利用するようになった。
レンタカーのように人を介さず利用できる手軽さもあってか事故が増えた。’20年7月、無免許の少年がカーシェアリングの車で事故を起こした。母親に嘘をついて車のドアを開閉できる会員カードを借り、専用アプリで車を予約後、入手したカードでカギをあけ、運転してしまったのだ。その後入会審査が厳しくなった。
カーシェアリングの車のすぐ後ろを運転したベテランドライバーが語る。
「運転マナーを知らない人が多いから、車線変更のときなどに急に割って入ってきて危ない思いをしました。自分の車ではないから運転が雑で、それが事故のリスクを生んでいる、という自覚がない」
大手カーシェアリングの株主総会で、事故が多発している原因を問う質問も出たが、会社側から明確な回答はなかった。原因を究明しようとする姿勢を見せない限り、ボコボコになったカーシェアリングの大破車両が減ることはないだろう。
- 取材・文:加藤久美子
- 写真:『カーシェアの闇 事故写真集』(カーシェアマニア)より
自動車生活ジャーナリスト
山口県下関市生まれ。大学卒業後は日刊自動車新聞社に入社。その後、フリーへ。『くるまのニュース』『AUTOCAR JAPAN』『ベストカー』などの自動車メディアへの寄稿も多く、年間約300本の自動車関連記事を執筆している。