高橋尚子、酒井美紀、島谷ひとみ…女子アスリート&女優「有名企業が社外取締役に続々抜擢」の利害関係
「高橋さんはスポーツ分野の第一人者としての経験や視点をお持ちで、社外貢献活動も経験も幅広い。そうしたお立場から、ESG(環境、社会、ガバナンス)対応に新鮮なご助言、ご指摘をしていただきたいと思います」
大手自動車メーカー「スズキ」の長尾正彦・取締役専務役員は2月7日の決算説明会で、シドニー五輪女子マラソン金メダリスト・高橋尚子氏(50)が社外取締役になる人事を内定したと発表した。6月に開かれる定時株主総会で承認を受け、正式決定する予定だ。
「高橋さんは金メダルを獲得した00年10月に、国民栄誉賞を受賞しました。現在は日本オリンピック委員会の理事を務め、昨年6月には不動産企業『スターツコーポレーション』の社外取締役にも就任しています。『スズキ』の発表通り、スポーツ界以外の経験も豊富で社外取締役に適任でしょう」(全国紙経済部記者)
菊間千乃や竹内香苗ら女子アナも
大手企業の社外取締役になる有名な女性は、高橋氏だけではない。21年3月には、女優の酒井美紀(44)が食品メーカー「不二家」で就任。同年12月には、いとうまい子(58)が不動産テクノロジー企業「タスキ」の社外取締役になっているのだ。以下は、社外取締役になった主な女優や女子アナである。
・島谷ひとみ(歌手) 抗原検査サービス企業「ICheck」
・菊間千乃(元フジテレビ) 化粧品メーカー「コーセー」
・竹内香苗(元TBS) 金融特殊会社「SBIホールディングス」
・国谷裕子(元NHK) 船舶企業「日本郵船」
・草野満代(元NHK) アパレル企業「オンワードホールディングス」
・福原愛(元卓球選手) 卓球チーム「琉球アスティーダ」
なぜ多くの企業が、女優や女子アナを社外取締役に抜擢するのだろうか。経済ジャーナリストの松崎隆司氏が解説する。
「東京証券取引所がガバナンスの視点から、2人以上の社外取締役を選任するよう上場規則に加えたのは15年のことです。第三者の目で、不正がないか厳しくチェックしようというのが狙い。当初は『キッコーマン』の茂木友三郎氏や『オリックス』の宮内義彦氏など、有名経営者や名門大学の教授、弁護士などが選ばれていました。
しかし徐々に第三者を登用する意識が薄れ、なり手も不足し始めます。企業としても、社内事情をあまり厳格にチェックされたくないというのが本音でしょう。目的が形骸化し、高学歴でイメージの良い俳優など企業にハクをつけられる人たちが重宝されるようになったんです」
さらに女優や女子アナ選任を後押ししたのが、政府が掲げる「上場企業の女性役員比率を10%にする」という目標だ。松崎氏が続ける。
「女優や女子アナは、女性役員としてうってつけの存在でしょう。彼女たちは知名度が高いため発信力が強い。ブログなどで企業活動を公開すれば、宣伝効果はバツグンです。
女優としても、企業の役員は魅力的な役職だと思います。自身のキャリアアップになりますから。もともと彼女たちには、番組などを通じて企業トップと人脈があります。女優や女子アナの社外取締役が増えるのは、自然な流れなんですよ」
背景には有名企業と女優にマッチした、利害関係があるようだ。
- 写真:AP/アフロ