木村拓哉「何やってもキムタク」を脱皮した『レジェンド&バタフライ』 現場をあ然とさせた”鬼迫” | FRIDAYデジタル

木村拓哉「何やってもキムタク」を脱皮した『レジェンド&バタフライ』 現場をあ然とさせた”鬼迫”

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映画『レジェンド&バタフライ』で主演・織田信長を演じた木村拓哉
映画『レジェンド&バタフライ』で主演・織田信長を演じた木村拓哉

木村拓哉が主演する東映創立70年記念作品『レジェンド&バタフライ』。公開から9日間で、興行収入10億円を突破。この映画は、50歳を迎えた木村自身にとっても記念すべき作品になりそうだ。

今作は尾張の“大うつけ”織田信長と、美濃の“マムシの娘”と呼ばれた男勝りの濃姫(綾瀬はるか)が政略結婚。お互いに寝首をかくチャンスを伺う日々。そんな2人の前に今川義元の大軍が迫り、絶望しかけた信長を濃姫が奮い立たせ勝利を納めると、2人は徐々に信頼を深め、やがて天下統一を目指す、総制作費20億円をかけた超大作である。

織田信長といえば、大河ドラマを見ても、渡哲也、高橋英樹、役所広司、反町隆史などこれまで錚々たるスターが演じてきた、戦国随一の人気武将。しかし今回、木村が演じる“信長”は一味も二味も違う。今の世に“信長”その人が蘇ったかと思うほどの存在感は、他の追従を許さない。

「今作でメガフォンを取る大友啓史は、『“魔王”にならないと国を治められないと決断した信長と、“スター・木村拓哉”で在ろうとし続ける木村さんの覚悟は、どこか重なるところがある』、大ヒット御礼舞台挨拶に登壇した中谷美紀は、『天下統一のために、多くの人命を犠牲にした信長の孤独と木村拓哉さんという大スターの孤独が重なって見えた。普通の人間には理解できない、険しい道を進んでいらっしゃると思うと、少し泣きそう』と、木村演じる信長について語っています」(制作会社プロデューサー)

木村自身も去年6月に行われた制作発表会見で、歴史上の人物の中で、信長に最も魅力を感じており、

「織田家の家紋・木瓜と木村家の家紋が同じ」
「(幼い頃から)親近感を覚えていた」

といったエピソードも明かしている。

’14年、木村はスペシャルドラマ『宮本武蔵』に主演。東映京都撮影所を去る際、

「次は信長で、ここに戻ってきたい」

と語っている。その言葉通り、東映京都撮影所に再び舞い降りたのが、木村拓哉49歳の時。信長が本能寺に斃れる、まさにそのタイミングで信長を演じる。この強運こそ、選ばれし者の宿命なのかもしれない。

“魔王”と恐れられた信長は、もはや人にあらず。仏門の総本山・延暦寺を、「焼き払え」と命じる軍議の場面には衝撃が走った。

「このシーンが撮影されたのは、日本最大級の禅寺・臨済宗妙心寺。テストの段階で木村は、信長を諌める丹羽長秀(橋本じゅん)の腰から刀を奪い投げ捨てていました。ところがそれでは物足りなかったのか、本番では長秀から奪った刀をなんと床に突き刺す。

この鬼気迫る演技には、俳優やスタッフたちも度肝を抜かれました。スチールカメラマンの菊池修氏は、『撮影中の木村さんは信長の魂が憑依していて、この人は信長の生まれ変わりなんだと、何度も感じることがありました』。さらに『カメラ越しに魔王・信長に睨まれてとても怖かった』と感想を漏らしています」(制作会社ディレクター)

そんな“魔王”信長が人としての心を取り戻すきっかけとなったのが、濃姫との再会。

「魔王であろうとしても、悪夢にうなされ悶え苦しむようになる信長。神も仏も失ってしまった信長にとって、唯一すがることができたのが濃姫ただひとり。病に臥せった濃姫のために薬草園を作り、甲斐甲斐しく世話を焼く場面は今作の隠れた名シーンとなりました。

また、安土城の天守閣に登り自慢してみせる信長に『こんなもん作って喜びんさんのは、ただのわっぱじゃ!』とやり込める濃姫。この2人のやりとりは、もはや時代を超えたラブコメ。だからこそ、人の心を取り戻した信長の最期が切なく感じられます」(前出・ディレクター)

今回のいくさを終えたら、名もなき2人に戻って南蛮に行こう、と誘う信長。それは濃姫が若かりし頃から抱いていた夢。南蛮に旅立つ夢を見ながら、2人が同じ刻に同じ思いを抱いて死んでいく。それだけに燃え盛る本能寺で呟く最期のセリフ

「ずっと、好いておった」

には、心奪われる。

「実は本能寺のシーンはロケの中盤に行われたため、このセリフを言うために、木村さんはあるお願いを綾瀬さんにしています。それは、まだ収録していない前のシーンに書かれた、

信長『帰ってきたらば、南蛮の楽を聞かせよ。よいな』
濃姫『合点じゃ』

この濃姫のセリフ『合点じゃ』を音声データで送ってもらい、撮影に臨んだと告白しています」(前出・プロデューサー)

更に本能寺のシーンでは、もうひとつ見逃してはならない名場面がある。

血まみれの白装束姿で、敦盛を舞う。みずから命を絶つ刹那、魔王信長が一瞬蘇り、床の間に描かれた龍にいきなり刀を突きつける。このアドリブシーンにも目を奪われる。

本作に、“何をやってもキムタク”と揶揄された木村拓哉の姿は、もはやない。俳優・木村拓哉は、レジェンドになるべくもう一段、ギアを上げたのかもしれない。

  • 島右近(放送作家・映像プロデューサー)
  • PHOTO原一平

島 右近

放送作家・映像プロデューサー

バラエティ、報道、スポーツ番組など幅広いジャンルで番組制作に携わる。女子アナ、アイドル、テレビ業界系の書籍も企画出版、多数。ドキュメンタリー番組に携わるうちに歴史に興味を抱き、近年『家康は関ケ原で死んでいた』(竹書房新書)を上梓。電子書籍『異聞 徒然草』シリーズも出版

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