<figure id="attachment_295477" aria-describedby="caption-attachment-295477" style="width: 1955px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="04206a92"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/013.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295477" class="wp-caption-text">「舞台で役をやるってことはオーディションと同じ」と語る市村。「良い芝居をすれば次に繋がるし、誰かが必ず見ていてくれる」</figcaption></figure>
<p><span class="strongInContent">「高校の時、夢中になれるものが無くていろいろな部活をやっては辞めてを繰り返していました。ある時、そんな僕を演劇部の先生が劇団民藝の舞台『オットーと呼ばれる日本人』に連れて行ってくれたのです。国際スパイ団に関わった主人公オットーこと尾崎秀実（ほつみ）の、戦争回避と平和への願いが鮮烈に描かれている２～３時間の舞台なのですが、主演の滝沢修さんが尾崎の人生をまるで自分の人生のように激しく演じている姿にガツンと衝撃を受けました」</span></p>
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<p>高校卒業後、「この仕事がしたい！」と舞台芸術学院に入学。「あれが俳優になったキッカケでした」と市村正親（74）は振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「学院２年生の頃、舞芸の特別講座をしてくださっていた講師陣の中に、後に付き人をやらせていただくことになる西村晃さんがいてね。その年の夏、西村さんから学院宛に舞台の手伝いの募集があって、学院が無遅刻無欠席だった僕を推薦してくれたんです」</span></p>
<p>この手伝いを縁に市村は西村の付き人として３年間を過ごし、24歳の時に受けた劇団四季『イエス・キリスト＝スーパースター』（現在は『ジーザス・クライスト＝スーパースター』）のオーディションに合格。以来、40本以上のミュージカルと舞台に出演し、業界を代表する看板俳優となった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「&#8221;初めて自分の力で勝ち取った仕事&#8221;という意味で僕の原点は『イエス・キリスト＝スーパースター』でデビューしたあの日。様々な人と出会ったり、多種多様な役を演じたり……いろんな重みのあった50年でした。主演した『ミス・サイゴン』のエンジニア役や『オペラ座の怪人』のファントム役を主な作品として挙げる方がいるかもしれないけれど、僕自身はそれぞれの舞台の、それぞれの役に思い入れがあります」</span></p>
<p>遠くを見つめ昔を懐かしんでいるかと思いきや、一転して力強い眼差しでまっすぐ記者を見つめ、こう続けた。</p>
<p><span class="strongInContent">「&#8221;喜び&#8221;こそが、僕の役者人生の礎です。浅利慶太さんと出会った喜び、蜷川幸雄さんと出会った喜び、三谷幸喜さんと出会った喜び……一流の人と仕事をさせていただいたことが、次へのステップとなりました。マンネリを感じたり、辞めたいと思ったことは一度だってないね。僕はどんな役を演じる時も、旅をしている感覚で、毎回新鮮な体験をしているので飽きないんです。マンネリを感じるような、ちんけな役をやっているつもりもない」</span></p>
<p>記者の「天職ですか？」という問いに市村はすかさず頷き、「まさに天職だね」と拍手を打ち、豪快に笑った。</p>
<p>’97年に旗揚げをしたひとり芝居『市村座』は、今年２月26日からの東京公演で10回目を迎える。今回は三遊亭圓朝の落語『死神』を演じるほか、この50年間に市村が出演してきた40本以上のミュージカル全作品をその楽曲とともに振り返る。</p>
<p><span class="strongInContent">「第１回公演は、二子玉川の高島屋のアレーナホールでした。いわゆるデパートの中のホールみたいなところで始まったのが、今や日生劇場でやれるようになるんだから……。往年の大スターたちが立っていた場所にひとりで立たせていただくのはとても光栄なことです。そうそう、東京公演では、子供たちも手伝いで少し出演するんですよ。男３人で『どうしたらお客さんに面白かったと思ってもらえるものを作れるかな？』と話しています。市村座って意外に人気があるみたいで（笑）、『市村さんの過去はこんなことがあったんだ』『市村さんでもこんなに苦しい時期があったんだ』という声が寄せられるんです。今回も変に硬くならずに、身も心も素っ裸になるという気持ちで対峙して、お客さんに満足してもらえれば嬉しいです」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="息子に送る弁当メッセージ・・・"></div>
<h2>息子に送る弁当メッセージ</h2>
<p>長男・優汰さん（14）と初めての親子共演を果たしたのは’21年秋公演。次男（10）も役者を目指しているという。先輩俳優として、父として二人を育てつつ市村座を盛り上げなければならない。働く74歳には負担が大きすぎるようにも思えるが、市村は「両立？　普通ですよ、普通！ 今日は朝６時に起床して、犬に餌をあげて、子供たちと自分の分のお弁当を作りました」と笑い飛ばした。</p>
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<p><span class="strongInContent">「お弁当を作り終えたらちょうど下の子が学校に行く時間になる。その後、上の子が出かける時に、僕も犬の散歩ついでに一緒に家を出ます。帰ってきたら９時30分からマグマヨガで汗をかいて、12時45分に仕事開始って感じだね。動けるうちは動いておこうと思ってます。芝居もやれるうちはやり続けようと決めてる。死んだら何にもできないんだから。死んだら犬の散歩もしなくていいし、お弁当作りもしなくていいからラクだけど……どれもこれも全部楽しいんだよね」</span></p>
<p>お弁当作りは息子たちとのコミュニケーションにも一役買っているという。</p>
<p><span class="strongInContent">「僕の昼ごはんは子供たちに作ったのと同じ弁当です。食べながら今日はうまくいったなとか、冷めていてもこの味が出るんだなとか、振り返っています。ちなみに今朝のお弁当は、昨日ママが来て作ってくれた鶏肉のホイコーローと、お兄ちゃんが好きなトマトの卵和えを作ったよ。あとは、ほうれん草の胡麻和えとチーズ入りちくわ、それにもやしのナムルも。おかずが２個くらいだとちょっと寂しいから。やっぱりバッと開けた瞬間に色合いがあったほうがいいよね」</span></p>
<p>瞳をキラキラと輝かせながら、少年のように市村は続けた。</p>
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<p><span class="strongInContent">「お弁当はその人の”心”が出る。例えば、上の子。『明日のお弁当はキュウリ１本だけにして』『明日のお弁当は人参１本だけにして』って言うんですよ。周りのクラスメイトから注目されたいって”心”がよく出ているでしょ？（笑）僕は、お弁当にメッセージを添えます。下の子が歯を抜いた時は【歯が無くても食べられるよ】【薬も今日で最後だから必ず飲んでね】【今日は寒いけどパパ弁の愛でほっかほか】とかね。上の子は喜ぶけど、下の子は『こんなの恥ずかしいからやめてよ』って言うんです」</span></p>
<p>仲の良い市村親子。市村の子育てモットーは『反抗させないこと』だという。</p>
<p><span class="strongInContent">「あれやれこれやれって言い方はしない。『もう起きたほうがいいんじゃないかなぁ？』みたいに言う。『わかってるよ』って反抗させないよう、言い方に気を付けてる。甘いって言われるけど、『優しく伝えて何が悪いの？』って思う。父親がいろいろやっているのを子供たちは見ているから、普段から助けてくれますよ。この間は『今度一緒にパスタ作ろう』って言ってくれて。子育ては教えるよりやって見せることが大切ですし、芝居も見て盗むほうが自分のものになる。将来子供にはいっぱい本を読んで、いろんなものを見て、感じて、悩んで、苦しんで、それでも前進していってほしいですね」</span></p>
<p>役者人生にも父としての子育てにも、根幹には「喜び」があふれていた。</p>
<figure id="attachment_295481" aria-describedby="caption-attachment-295481" style="width: 2630px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="26eee181"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/7b15996702463164b416b222cc9b3734.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295481" class="wp-caption-text">主演舞台の中でも代表的な当たり役となった『ミス・サイゴン』のエンジニア役。写真提供／東宝演劇部</figcaption></figure>
<figure id="attachment_295482" aria-describedby="caption-attachment-295482" style="width: 2548px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b6bc5713"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/66fde8810a6c6f90000937fd44c04bd4.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295482" class="wp-caption-text">今年は東京・大阪・博多・川越・仙台の５会場を回るという市村座。50周年を振り返る特別な公演となる</figcaption></figure>
<figure id="attachment_295480" aria-describedby="caption-attachment-295480" style="width: 1615px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="f43d657a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/099.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295480" class="wp-caption-text">得意料理を問うと、「息子たちの好きな料理は僕の作る納豆チャーハン」と自信ありげな笑顔を見せた</figcaption></figure>
<figure id="attachment_295478" aria-describedby="caption-attachment-295478" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="8b6a7c37"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/033.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295478" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　市村正親 芸能生活50周年 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<figure id="attachment_295479" aria-describedby="caption-attachment-295479" style="width: 1667px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e8c0de9a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/095.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-295479" class="wp-caption-text">本誌未掲載カット　市村正親 芸能生活50周年 スペシャルインタビュー</figcaption></figure>
<p>『FRIDAY』2023年2月24日号より</p>


吉場正和

芸能生活50周年の"市村正親"に、本誌はスペシャルインタビュー！「"喜び"こそが、僕の役者人生の礎です。」そう役者人生について語る傍ら、瞳をキラキラさせ息子のこと話す、父親の顔を見せた――。

日課は息子の弁当作り…市村正親が語る「役者を辞めたいと思ったこと？一度もないね！（笑）」

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