62歳1ヵ月で最年長出場記録を更新!ラグビー界の鉄人・吉野俊郎 「週6で朝ウェイトの肉体美」
「よっさん、もらってー!」
「よっさん、GO!」
息子、いや孫ほども年の離れた若者たちが大ベテランに声をかける。パスを受け、ステップを踏みながらグラウンドを駆け抜ける「よっさん」。トップイーストリーグ『ワセダクラブ』に所属し、62歳にして現役ラガーマンの吉野俊郎だ。還暦を過ぎてもラグビーを続ける理由を聞くと、吉野は笑って答えた。
「私にとってラグビーは趣味なんです。趣味はずっと続けられるでしょう。釣りが好きな人が、60歳になったからといって止めますか」(以下、発言は吉野)
吉野がラグビーを始めたのは、茨城県の進学校・日立第一高時代だ。
「受験勉強中、一日30分だけテレビを見ようと決めていたんです。たまたま中継していたのがラグビーの早明戦。魅力にハマり、中学では野球部に所属していましたが高校からラグビーを始めました」
早稲田大学に進学した吉野は、快足センターとして憧れの早明戦に出場。同級生の本城和彦、津布久誠(つぶくまこと)とともに「ワセダ三羽烏」と呼ばれた。早大卒業後はサントリーに入社する。
「酒をともなう会合も多く、仕事とラグビーの両立は大変でした。営業終了後に飲食店の人たちと深夜1時まで打ち合わせをし、試合会場近くのホテルへ車で移動。短時間仮眠し、プレーしたこともあります。足が痙攣(けいれん)しそうになりました」
’96年には、全国社会人大会決勝で3トライをあげサントリーを初優勝に導く。’98年に大阪へ異動になったことを機に、ラグビー部を退部。すでに38歳だったため、現役引退となりそうだが……。
「(早大の後輩でサントリーの同僚)清宮(克幸)が、こう言うんです。『よっさん、まだラグビーやるっしょ』と。『やるよ』と気軽に応じて勧められたのが、関西クラブチームの『六甲クラブ』。4年半ほどプレーし、再び東京へ異動になり加入したのが今いる『ワセダクラブ』です」
吉野は昨年10月、日本IBMのクラブとの公式戦に出場。62歳1ヵ月で、トップイーストの最年長試合出場記録を更新した。高校時代から46年もプレーを続けられる秘訣は、どこにあるのだろうか。
「ミスしても落ち込まないことかな。グラウンドで落ち込んでいたら試合にならないでしょう。反省3秒、後は前向き」
吉野が若い頃から欠かさず続けているのは、週6回、朝7時から始める1時間のウェイトトレーニングだ。
「毎朝の歯磨きのようなもので、サボると気持ち悪いんです。若い頃は大胸筋や広背筋など、強化したい部位を重点的に鍛えていました。今は身体のバランスを考え、全体的に鍛えるようにしています。おかげで高校時代から176㎝、68㎏の体型は変わっていません」
吉野には62歳にして目標がある。
「明日、少しでも上手くなっていることですね。今のラグビーは、昔とまったくスタイルが違う。若い人たちから話を聞いて、学ぶところはたくさんあります」
ラグビー界の鉄人「よっさん」は、若者に交じり47年目のシーズンを迎える。




『FRIDAY』2023年2月24日号より
PHOTO:小松寛之 吉野氏提供