牛肉・海鮮丼・ケーキも…クラウドで遠隔から在庫・売り上げ管理もできる「フード自動販売機」最前線 | FRIDAYデジタル

牛肉・海鮮丼・ケーキも…クラウドで遠隔から在庫・売り上げ管理もできる「フード自動販売機」最前線

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自動販売機販売代理店と製造メーカーに聞いた最新情報 

コロナ以降、街中ではさまざまな食品の自動販売機が増え続けている。当初は、餃子をはじめとする冷凍食品ばかりだったが、現在は総菜やスイーツなどの冷蔵商品が買えるものも度々目にする。

着実に進化を続ける食品自動販売機だが、コロナ以降の拡大状況、自動販売機自体の進化、導入店や消費者への貢献度の広がりなど、意外と知らないことが多い。自動販売機を取り巻く最新情報を探ってみた。 

宮城県仙台市で魚の卸や販売をする株式会社魚銀の冷凍自動販売機(株式会社パルサー提供)
宮城県仙台市で魚の卸や販売をする株式会社魚銀の冷凍自動販売機(株式会社パルサー提供)

トレンドは冷凍自販機じゃなくて冷蔵自販機

冷凍食品用の冷凍自動販売機が登場したのは2021年の春頃。その後、すぐにメディアで取り上げられたこともあり、全国各地でさまざまな食品を売る冷凍自動販売機が生まれた。

食品汎用自販機の導入実績が600台を超える販売代理店の株式会社パルサー営業部東京支店長の塩野優さんは、「コロナになって、多くの大手チェーン店様や個人店様からご相談いただき、多種多様な業種・業態向けの冷凍自動販売機を取り扱いました。最近では、地方の企業様がテストマーケティングとして、都心に冷凍自動販売機を出店されるケースもありますし、1台をいくつかのお店さんでシェアして使われるケースもあります。そういったこともあって、冷凍自動販売機で買える商品のバリエーションが増えました」と話す。

「今までは、冷凍自動販売機内にセットできる容器のサイズがネックになっていて、扱えない商品もあったんです。しかし、今年は容器のサイズが大きくなったものが発売される予定なので、容器をリサイズできずに断念した企業やお店さんの利用が増えるんじゃないかと思っています」(株式会社パルサー・塩野優さん/以下同) 

自動販売機をよりユニークな存在へと後押ししたのが、昨年の5月に登場した冷蔵自動販売機だ。冷蔵(10℃以下)と弱冷(18℃±5℃)での販売を可能にした使い勝手のいい1台として人気急上昇中。

「最近は冷蔵の引き合いの方が増えている印象です。というのも、冷蔵は今まで通りの製造・保管作業の延長に導入できるんですが、冷凍の場合は自動販売機本体とは別に、急速冷凍機と保管用の冷凍庫も用意しないといけないんです。それに、冷蔵よりも冷凍の方が構造的に上位機種に当たるんで、冷蔵だと大体100万円程度なのですが、冷凍になると150万円程度になります。ちなみに、リースだと冷蔵が月々17,000円程度で、冷凍が26,000円程度になります」

「以前から冷凍食品を製造・販売していたり、『業態転換等支援事業』などのコロナ関連の補助金を利用する場合は、そこまで大きな負担にはなりませんが、まったくの新規で導入する場合はハードルが高いと思います」

「容器のサイズがアップした冷凍自販機」と「用途が豊富な冷蔵販売機」の2点が食品自動販売機業界の最新キーワードとなるようだ。塩野さんの話をさらに深堀りするため、老舗の自販機製造メーカー 富士電機株式会社に、最新機種について話を聞いてみた。

自動販売機老舗メーカー渾身の最新2機種 

昨年2月の発売から好調に伸び、今年度の3月決算では、予定通りの1000台を見通しているという富士電機株式会社の冷凍自動販売機「FROZEN STATION」。セットできる容器のサイズを大きくしたのが、今月リリース予定の最新機種「FROZEN STATIONⅡ」だ。 

FROZEN STATION。ラッピング前の製品
FROZEN STATION。ラッピング前の製品

「既存のサイズより大きいものをたくさん売りたいという声をうけて改良した」と、同社商品企画部の吉野正洋さん。本体の大きさはそのままに、収納できる容器のサイズを約30%拡大した(マックス幅230㎜×奥行155㎜→同幅250㎜×奥行180㎜)。

スーパーで売っているお惣菜といった標準サイズのフードパック容器に対応しているため、冷凍自動販売機用に容器を変更する手間が省ける。もちろん、取り出し口も大きくなり、商品を取りやすくなった。さらに、商品パネルを照らすLED照明の明るさを約2倍にすることで、訴求効果もアップした。 

「自動販売機本体の大きさを変えずに、容量だけを大きくすることが難しかった」と吉野さん
「自動販売機本体の大きさを変えずに、容量だけを大きくすることが難しかった」と吉野さん

そして、冷凍自動販売機とともに人気を集めているのが、小型汎用自動販売機の「マルチ君」だ。マルチラック式なので、セットできる容器のサイズが自由に選べるようになっており、食品・物品・飲料といったさまざまな商品を1台で販売できるという。最大で、10種類220個の商品の販売が可能になった。

幅745㎜と一般的な飲料の自動販売機(1030㎜)よりもスリム
幅745㎜と一般的な飲料の自動販売機(1030㎜)よりもスリム

「今までの汎用自販機の商品収納スペースはスパイラル状になっていて、そこに商品を挟み込む形になっています。そのため、挟むことができる商品の大きさが決まっているのですが、マルチ君の内部はラック棚になっているので、棚の上に乗せられれば、容器の形状や材質は問わずに販売できます。高さを調整すれば、サンドイッチみたいなやや大きめでビニール袋で包まれているようなものでも入ります」(富士電機株式会社・吉野正洋さん/以下同) 

今までの汎用自販機の内部。収納する商品のサイズが限られる
今までの汎用自販機の内部。収納する商品のサイズが限られる
マルチ君の内部。ラックに乗せるだけなので、形状を問わない。誰でも簡単に補充できるという利点も
マルチ君の内部。ラックに乗せるだけなので、形状を問わない。誰でも簡単に補充できるという利点も

「もうひとつの選ばれるポイントは、商品の選択ボタンを1ヵ所にまとめていて、商品ディスプレイ内を自由に設定できるようになっていることです。1商品を大きく訴求したり、空いたスペースに広告を掲示したりもできます」

ディスプレイの上半分にオススメ商品を大々的に訴求するパネルを置き、下半分には商品サンプルをまとめて展示するという使い方もできる。演出の仕方を自分たちで考えて実践できるのは、売り手にとっても買い手にとっても有利に働くという。 

商品を展示したり、パネル・ポスターでPRしたり、自由に使える
商品を展示したり、パネル・ポスターでPRしたり、自由に使える

食品ロスを目指したサービス搭載も視野に 

弊社では、エネルギー・環境事業で社会に貢献するのが理念でもあるので、省エネや脱炭素にも注力しています。主力の飲料自販機では、先月、新たにサステナ自販機シリーズを発売しました。自販機内を効率的に冷却・加温する技術や、冷却時の排熱を加温に再利用する技術などを搭載しており、年間消費電力量を最大20%削減します。冷凍自販機・汎用自販機でも、省エネを追求した商品開発を行いました」 

今後は、人材不足や食品ロス軽減に貢献できるサービスに注力したいと語る吉野さん。 

「どの業界にも共通して人手不足という問題があります。現在、少人数でも効率的な運用を可能にするために、電子マネーにも対応したり、クラウドサービスを使い、在庫・売上管理が遠隔操作できるオプションも設けています。今後は、さらにステップアップして、独自開発の通信端末を使ったダイナミック・プライシングの適応も考えています。在庫状況や賞味期限などの情報をもとに販売価格を変動させるシステムで、こういった最新のテクノロジーを利用して、食品ロス問題の力にもなりたいですね」 

豚タン串(居酒屋花むしろ)
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冷凍餃子(餃子のあかつき)
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まぐろサラミ、生甘えび皮むき、トロほっけ刺身…魚の卸や販売をする株式会社魚銀(仙台市)の冷凍自販機
まぐろサラミ、生甘えび皮むき、トロほっけ刺身…魚の卸や販売をする株式会社魚銀(仙台市)の冷凍自販機

 

■株式会社パルサー

■富士電機株式会社

 

  • 取材・文安倍川モチ子

    WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

  • 撮影川戸健治

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