『逃げ恥』待望の連載再開! みくりと平匡の生活に「大変化」が?

海野つなみ先生インタビュー

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待望の続編スタート、ということで「Kiss」3月号は表紙も付録も『逃げるは恥だが役に立つ』一色に

みくりと平匡(ひらまさ)が帰ってきた!——先月末、ネットに歓喜の声が踊った。

1月25日に発売された月刊漫画誌「Kiss」3月号で再び連載が始まったのは、海野つなみ作の超人気コミック『逃げるは恥だが役に立つ』。そう、2016年に新垣結衣・星野源主演でドラマ化され、視聴者を翻弄する「ムズキュン」なシチュエーションや、エンディングのキャッチーな「恋ダンス」で全世代を巻き込み一大センセーションを起こした、あの『逃げ恥』である。

続編となる新作は、感動のエンディングから2年後の物語。契約結婚から始まったみくりと平匡の〝マジ婚〟生活ぶりはいかに? そして、巻き起こる「大きな変化」とは? 作者である漫画家・海野つなみさんに聞いた。

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まだ描いていないテーマがあった

 「自分の描いた物語がドラマになって、リアルタイムで皆さんに反応してもらえたことは、とても新鮮でした。たとえば、みくりちゃんと平匡さんが電車の中でキスする回は、私もツイッターで実況しながら観ていたんですが、その瞬間の反応がまあすごくて(笑)。翌日、ネットニュースを見たら『2ちゃんねる(現・5ちゃんねる)のサーバーが落ちた』とあったんですが、読者の反応を直に受け取るあのライブ感は、漫画家になってはじめての体験でしたね」

2016年の秋冬、ドラマ版『逃げ恥』が社会現象とも呼べる大ヒットの渦中にあったときの実感を、海野つなみさんはこう振り返った。人や自分の行動をつい心理学的に分析してしまい、過去の恋愛相手から「小賢しい」と疎まれた経験を持つヒロイン・森山みくりと、やはり論理優先型の堅物で「高齢童貞」の津崎平匡が、お互いの利益のために思い立った契約結婚から真実の愛に目覚めていく、不器用ながらも愛すべき物語。理が先に立ちストレートに思いを表現できないふたりの「ムズキュン」ぶりは多くの人々を魅了し、毎回、共感の笑いや涙を誘った。

再連載第1話は、みくり&平匡がこれまでの2人の物語を歌って踊って振り返るミュージカル(!)シーンからスタート。遊び心たっぷりの『逃げ恥』ノリは健在だ

ドラマとほぼ同時に終了した前作から約2年の歳月を経て、1月から待望の続編がスタート。前連載を終えたとき、「自分としては描き切った感じがあって、もういいかなと思っていた」という海野さん。しかし、その後のある体験が、再び作家の心に火をつけた。

「連載終了後に、全国の男女共同参画推進センター(行政、公益財団法人などが運営)に呼ばれて、女性学の先生や男性学の先生などさまざまな方と対談をさせていただく機会があったんですが、そこでの会話の中で『あ、このテーマはまだ描いてなかったな』『こんな部分をもうちょっと掘り下げればよかった』という気持ちがちょこちょこ湧いたんです。そのときは『きっといつか、誰かが描いてくれると思うんで!』と逃げてきたんですが(笑)、でも結局、やっぱり自分で描かないとだめなのかなー、と思い始めて……」

恋愛物語の過程に「社会問題」がある

そう。『逃げ恥』のもうひとつの魅力は、働き方や恋愛観、家族観、セクシャリティや老いの問題など、現代に生きる誰もが抱える悩みや課題を取り込んで物語が展開すること。2人を含めた登場人物たちが自身の境遇について率直に語り合い、お互いの差異を認めながら向き合う描写が胸を打った。

そのリアルさは、新連載にも健在だ。たとえば初回、30歳のみくりは正社員になり平匡と家事を分担しながら共働き生活を送っているが、同じ会社で働く同世代の女性たちとのランチタイムに、こんな会話を交わしている。

「えっ、田中さん妊娠?」「そうなのー。先越されちゃったー」

「産休の間、仕事は残り2人でやらされるみたいで」

「次に産むのは、田中さんが復帰する1年半後まで待たなくちゃ」

まさに働く女性〝あるある〟なこの会話をはじめ、前作同様、社会や組織において感じる悩みや疑問が随所に織り込まれる。作品執筆前には作品に関連する属性や職業の人々に会い、取材やリサーチを行うという海野さん。だが、「社会問題を皆に伝えよう! ということを第一にしなかったことが、結果的によかったんだと思うんです」と語る。

「そのことがメインになると、やっぱり説教くさくなって鼻についてしまうと思うので……。『逃げ恥』は基本、みくりちゃんと平匡さんの恋の物語。ちょっと変わった結婚の形態をとった2人がさまざまな社会的問題にぶち当たるんだけれども、それらを、あくまで恋愛という心の動きの過程で起こることとして描いた。そこが読みやすかったのかな、と思います」

心躍る物語の中に、刺さるセリフやジワジワくるシチュエーションがある。「そのくらいのスタンスを目指している」という姿勢が、『逃げ恥』独自のノリと後味を生み出しているのだろう。

「今回、描いてみたいなと思っているのは、男性の問題。自分が女性だということもあって、これまでも、みくりちゃんや百合ちゃん(みくりの伯母。ドラマでは石田ゆり子が好演)を通していろいろ描いてきたんですが、男性の生きづらさというものも確かにあり、それは女性の生きづらさとセットになっているんだと思うようになって……。男性の問題が解決しないと女性の問題も解決しない。前作のときと同様にいろんな方にお話を伺ったり本を読んで調べたりしながら、ちょっと深掘りしてみたいと思っています」

マンガを読んでいるときくらいは、笑ってほしい

前回の連載時は「どこまで続くかわかんないけど、描いてみるか! と軽い気持ちで始めた」という『逃げ恥』。原作の読者のみならず続編、そして、ふたたびの映像化に期待は高まる一方だ。

「ドラマを見た人にとっては、みくりちゃんはガッキーだし、平匡さんは星野源さんで想像しますよね。そして『ドラマの続きはあるの?』とも思われるでしょうし……。自分の作品であること以上にいろんなものを背負ってしまったな、という気が(笑)。でも、まず大事なのは、読んでいて楽しいこと。今はとくに、誰もが実生活でしんどいじゃないですか。それでマンガの中までがしんどいと、心休まらないですよね。マンガを読んでいる時間くらいは笑ったりドキドキしたりして息抜きできる、そんなエンタテインメントの部分は忘れないようにしようと思っています」

とにもかくにも始まった、期待の続編。初回は仲睦まじい姿を見せていたみくりと平匡の日々に、まもなく大きな変化が起こるという。

「第1話を読んだ時点で、『ははーん』と思う方がいらっしゃるかもしれませんが、まあ、それは読んでのお楽しみということで(笑)。今回はそう長い連載ではなく、1年と期限を決めているので、ある程度ゴールを見据え、お話を組み立ててからスタートしています。時間を現実と同時進行にしていて、1話から1ヵ月経ったらその1ヵ月後の物語、という感じで物語が進行していくので、読者の皆さんも、これから2人に起こる出来事を一緒に体験していただきたいと思います」

注目の第2話は2月25日発売の4月号に掲載される。また、2人の結婚後の新展開を楽しむ前に、まずは前作のおさらいをしてみるのもオススメだ。

 

海野つなみ 兵庫県出身。1989年、『お月様にお願い』でなかよし新人まんが賞に入選しデビュー。2012年から連載された『逃げるは恥だが役に立つ』で講談社漫画賞少女部門を受賞。作品に『彼はカリスマ』『デイジー・ラック』『回転銀河』『小煌女』『くまえもん』などがある。

 

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『逃げるは恥だが役に立つ』 第1巻1話

  • 取材・文大谷道子

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