『宝島』で直木賞!真藤順丈「何よりも大事にした沖縄取材ノート」

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もともと近現代史に関心があったという真藤氏。過去にはカンボジア内戦を題材に作品を書いたこともある

「僕が『宝島』を書くうえで何よりも大事にしていたのが、取材ノートです。今回の沖縄取材でも、思いついたことは全部、このノートに書き留めました。脳ミソに浮かんだ言葉をそのまま、考えるのと同じスピードで書くんです。登場人物『グスク』の名前を思いついたときもそうでした。歩いているときに突然、『グスクだ!』とひらめき、すぐに書き殴った。それから、『彼は何人家族で、両親は沖縄戦で失っていて……』と、彼のプロフィールもどんどん浮かんできました」

そう語るのは、1月16日に、『宝島』(講談社) で第160回直木賞を受賞した真藤順丈(じゅんじょう)氏(41)だ。

『宝島』は戦後、アメリカの統治下に入ってから日本に返還されるまでの沖縄を舞台に、若者たちの青春を描いた物語。語り部が登場人物に合いの手を入れる軽快な文体と、戦後の沖縄という重厚で複雑なテーマを明るく描いた筆力が評価され、受賞に至った。

そんな真藤氏が作品を書くにあたって肌身離さず持ち歩いていたのが、冒頭の取材ノートだ。『宝島』執筆前も、この取材ノートを片手に舞台である沖縄を隅々まで歩き回った。

「足の裏にはもう一つの脳ミソがある気がします。歩くと思考が活性化して、その土地から物語が立ちのぼってくるんです。塀の貼り紙やボロボロの階段、三叉路に立つ石敢當(いしがんどう)(魔除けの石碑)、鉄筋コンクリート製の建物、道端に生えるガジュマルの木……。沖縄には、味わい深い風景がたくさんあります。そんな風景の中を歩きながら、『ここでは、誰がどんな暮らしをして、何を話していたんだろう』と考え、ノートに書き留めるんです」

『宝島』を書き上げるにあたって真藤氏が費やした年月は、なんと7年。本作は、ノートに残された膨大な情報をもとに想像力を膨らませて完成させた力作だ。その一方、彼は取材ノートに走り書きした表現をそのまま小説内で使うこともあったという。

「比喩を交えた風景描写を思いつくままに書きつけることもあります。『宝島』では、起伏の激しい細い路地を抜けていく登場人物を、『藪(やぶ)のなかでとぐろを崩した蛇のよう』だと表現しました。これは、メモした表現をそのまま使ったんです」

目にしたこと、浮かんだことはもちろん、真藤氏は現地の人々とのやり取りも取材ノートに記録している。それが作品に幅を持たせている。

「『宝島』にはアメリカの軍司令部が登場するのですが、『その軍司令部のスパイだった』なんていう方もいましたね。ホントかなあと思って後で調べたら、現地の人たちが協力していたスパイ組織についての記述にも突き当たったりして」

540ページ超の大長編にもかかわらず、軽快な文章で『宝島』を書き上げた真藤氏。だが、その過程はけっして順調ではなかった。”東京出身の自分に沖縄の繊細な問題が書けるのか”というプレッシャーに負け、執筆を止めたこともあった。

「沖縄のことも含め、世界中がいま、様々な問題を抱えています。『宝島』が描く、アメリカの統治下に置かれてから日本に返還されるまでの沖縄には、そうした問題の根幹が隠されている気がしたんです。それを小説の形で語り切ることが、作家である自分にとって越えていくべき壁だ、そう思って、自分を奮い立たせました」

最後に真藤氏は、「本作が読者の皆さんへの問題提起になれば」と語り、インタビューを締めくくった。

1月16日、受賞記者会見で芥川賞受賞者2名と共に壇上に上がる真藤氏。ジャージにハットというカジュアルな姿で話題を集めた
真藤氏が『宝島』執筆に際し実際に使用していた沖縄関連の資料
本誌未掲載カット 1月16日、受賞記者会見 左から 直木賞受賞 真藤順丈氏、芥川賞受賞 町屋良平氏、上田岳弘氏
本誌未掲載カット 真藤順丈氏 1月16日 直木賞受賞記者会見
本誌未掲載カット 真藤順丈氏『宝島』で直木賞受賞 スペシャルインタビュー
本誌未掲載カット 真藤順丈氏『宝島』で直木賞受賞 スペシャルインタビュー
本誌未掲載カット 真藤順丈氏『宝島』で直木賞受賞 スペシャルインタビュー

真藤順丈氏 スペシャルポートレート 撮影:森清

〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
〔スペシャルポートレート〕真藤順丈氏。『宝島』(講談社刊)で第161回直木賞を受賞。撮影:森清
  • 撮影結束武郎(会見、インタビュー他)撮影森清(スペシャルポートレート)

Photo Gallary14

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