「もはや綱渡りですらない」生活保護おじさんが見た「闇バイトに堕ちる若年困窮者」のリアル | FRIDAYデジタル

「もはや綱渡りですらない」生活保護おじさんが見た「闇バイトに堕ちる若年困窮者」のリアル

支援現場は大忙し…「生き抜くためにできることを」佐々木大志郎さんの挑戦

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「困ったら、深呼吸」生活保護おじさんの動画に「救われた!」人多数。「スマホは命綱」と、Wi-Fi、充電ステーションの設置にも尽力している
「困ったら、深呼吸」生活保護おじさんの動画に「救われた!」人多数。「スマホは命綱」と、Wi-Fi、充電ステーションの設置にも尽力している

「飛び石を飛んでるような危うい状況の人が増えました。綱渡りの生活、っていう言葉がありますけど、今、経済的に厳しい若い人たちの生活には、綱もないんです。こっちの石からあっちの石に飛び移る。でも、石に届かないこともあって、そのときはボチャンと落ちちゃう。困窮の質が明らかに変わったんです」

こう話すのは、生活に困っている人を支援する民間団体「つくろい東京ファンド」の佐々木大志郎さん。「生活保護おじさん」として発信するTikTokでも注目の「おじさん」だ。

「コロナ禍の初期は、お金も仕事も家もないという本当に『なにもない』人が多かったんです。けど今は『半端に困っている』。住まいがなくてもネットカフェとか個室ビデオ店で過ごし、アプリでアルバイトを見つけてつなぐ。炊き出しや食糧支援を利用すれば、飢えることはない。じっさい炊き出しの現場には、ものすごい数の人が並んでいます」

炊き出しをはじめ、さまざまな支援の現場でも「フェーズが変わった」ことを実感するのだという。

「ネットカフェをカプセルホテルのように利用して、週単位月単位で滞在する人も多い。ネカフェに『住む』ことが、あたりまえになっているんです。不景気で、もともと不安定だった非正規雇用の人が契約を切られる。今の時期、年度末はとくに多いです。寮付き、住み込みの仕事をしてた人は、職と同時に住まいを失う。次の住み込み仕事が決まるまでの、たとえば1週間とか1ヵ月とか、その期間だけ、生活保護を受けることもできるんです。けれども、福祉に結びつかず堕ちていくケースをたくさん見ました。

てっとり早い『金策』のひとつが『口座を売る』こと。まとまったお金になるようですが、もちろん違法だし、容易に犯罪に結びついてしまう。そこまでいかなくても、グレーなバイトに手を出してしまったり、飛び石を踏み外すポイントはあちこちにあります」

気づけば「闇バイト」なのだ。最初は、ちょっとしたアルバイト。真っ黒ではなく「グレー」な「仕事」から入ってしまう。銀行口座を売る、名義を貸す。そんなことがきっかけで、犯罪から抜け出せなくなってしまう。とくに若い人に向けて、そういった「罠」が仕掛けられている。

「これまでに対応した人のなかにも、そういった罠にハマってしまった人がいました。お金に困っているとき『バイト』感覚で、自覚もなく犯罪に足を踏み入れる。そこには、福祉に頼るより『自分でなんとかしなくては』という自己責任のような思いがあるんですね。でも、生活保護って、そういうときのためにあるんです。

生活保護を受けることが『おしまい』じゃない、そこから『始める』んです。一時的に保護を受けて生活を立て直す。次の仕事や住まいが見つかるまでの『つなぎ』として活用したらいい。それは、僕自身の経験もあって、強く伝えたいんです」

「家賃が払えない? まず深呼吸!」

佐々木さんは20代のとき、作家を夢見て北海道から上京した。アルバイトをしていたが、仕事が途切れてしまって友人宅に身を寄せたこともあった。そして「支援」に結びついた。一時的に生活保護を受けていたのだ。

「支援団体に相談に行きました。そこで、生活保護を勧められ、数ヵ月間受給したんです。助かりました。その期間に仕事を見つけることができましたから。生活保護は『必要なときに受け、生活が立ち直ったら抜ける』制度です。失職や居住喪失といったピンチのときに、もし帰りやすい家があれば『実家に帰る』という選択がありますけれども、遠隔地だったり、親との関係によってはそうもできない。ならば、ということです」

「今月家賃が払えなくてやばいっていう相談、めっちゃ多いんだけど。まずは深呼吸!」から始まる「生活保護おじさん」を、TikTokで展開する理由は、

「生活保護に関する誤解や、そもそもの敷居の高さを払拭したいんです。住所がないと申請できない、とか、親族に連絡が行くのでは、と心配される方もいるので、正しい情報を発信しています」

現在17本上がっている動画はどれも、コンパクトにわかりやすく、支援に繋がる方法を説明している。また「予定外の妊娠をした人」に向けたメッセージや「生活に困っている人からのこれは悔しい相談あるある」という現場ならではの実感に基づいたメッセージが心に響く。

「高齢の方や病気の方など、困窮の理由や状況はさまざまで、一括りには言えません。

そのなかでも、若い人、東京など都市部で、定まった仕事がなく不安定なのに『自分はうまくできる』と思っている人が心配です。犯罪に結びつく危険、飛び石を飛びきれずに堕ちてしまう危険と隣り合わせですから。今、ネカフェや個室ビデオ店で暮らしている人に食料のお渡しや荷物の一定期間預かりなどをする『夜のセーブポイント』という支援をやっています。活用してほしい」

自らの体験から、困っている人を支援する側に回った佐々木さんだからこそ、の温かい視点で熱く語る「生活保護おじさん」活動。誤った情報も飛び交うなか「本当に信頼できる」情報をキャッチして、未来をつかんでほしい、という思いが強くある。当事者だけでなく、社会全体に正しい情報が伝わり、困っている人を追い詰めるような言説がなくなることを期待したい。

TikTokで展開する「生活保護おじさん」の活動が注目されている
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「気軽に使おう」に至る精神的、制度的な「壁」をどう乗り越えるか、そのヒントもたくさん伝えている
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