<h3>病気をきっかけに「女装をして生きる」著者自らの体験がコミックに…</h3>
1月6日、作者自身の実話を元にした『男をやめてみた～癌になったので女装して恋をすることにしました～』の連載が、ebookjapanでスタートした。 
主人公は、マンガ家の渚素（なぎさはじめ/♂）。癌の宣告をきっかけに、残りの時間を自由に使うと決め、女装をはじめた。内気で引っ込み思案だった主人公が外の世界を知り、思いもしなかった事件が、次々と押し寄せるというストーリーだ。 
同作の著者であるはふみ先生に、本作が誕生した経緯や見どころをうかがった。 
<figure id="attachment_296905" aria-describedby="caption-attachment-296905" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296905 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/7990262d4d48c079e60e1203a2e6f2e7.jpg" alt="" width="8192" height="5464" data-expapp-watermark-gravity="south_west"><figcaption id="caption-attachment-296905" class="wp-caption-text">「どこまで本当なの？」と聞かれますが、ほぼ本当です。フィクションなのは猫が1匹なところくらい。本当は3匹飼っています（笑）（ebookjapanオフィスにて／撮影：川戸健治）</figcaption></figure>
<h3>本当は死にたかった？</h3>
――本作は、主人公が女装外出するシーンからはじまります。女装をした理由が癌宣告を受けたからという衝撃的なスタートですが、実際にはふみ先生が癌宣告を受けたのはいつなのでしょうか？
はふみ先生（以下、はふみ）：2017年の冬です。その前から貧血を起こしたり、血便が止まらなくなることがありました。その後、健康診断に引っかかって、病院で検査してみたら大きなポリープが見つかって、おそらく癌だろうと。その場で宣告されて、すぐに手術の予約をしました。 
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<figure id="attachment_296906" aria-describedby="caption-attachment-296906" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296906 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/003.jpg" alt="" width="2048" height="2884" data-expapp-watermark-gravity="none"><figcaption id="caption-attachment-296906" class="wp-caption-text">『男をやめてみた』冒頭シーン『男をやめてみた～癌になったので女装して恋をすることにしました～』より）（ (C) はふみ/大洋図書）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296908" aria-describedby="caption-attachment-296908" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296908 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/004.jpg" alt="" width="2048" height="2884" data-expapp-watermark-gravity="none"><figcaption id="caption-attachment-296908" class="wp-caption-text">（ (C) はふみ/大洋図書）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296909" aria-describedby="caption-attachment-296909" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296909 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/005.jpg" alt="" width="2048" height="2884" data-expapp-watermark-gravity="none"><figcaption id="caption-attachment-296909" class="wp-caption-text">（ (C) はふみ/大洋図書）</figcaption></figure>
――癌宣告を受けた時の主人公の表情からは、どんな心境なのかが読み取れなかったのですが、その時、はふみ先生はどう思われたんですか？
はふみ：私もあんな感じでした。何も考えられなかったというか……。実はその頃、自分の人生もうどうでもいいやって、いま死ねるんならそれでもいいなって思ってた時期なんです。そこに癌っていう死ねる材料が出てきたんで、ポカンとしちゃいました（苦笑）。
<figure id="attachment_296910" aria-describedby="caption-attachment-296910" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296910 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/012.jpg" alt="" width="2048" height="2884" data-expapp-watermark-gravity="none"><figcaption id="caption-attachment-296910" class="wp-caption-text">（ (C) はふみ/大洋図書）</figcaption></figure>
<figure id="attachment_296911" aria-describedby="caption-attachment-296911" style="width: 2048px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296911 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/013-1.jpg" alt="" width="2048" height="2884" data-expapp-watermark-gravity="none"><figcaption id="caption-attachment-296911" class="wp-caption-text">癌宣告を受けて茫然とする主人公…（『男をやめてみた～癌になったので女装して恋をすることにしました～』より）（ (C) はふみ/大洋図書）</figcaption></figure>
――……失礼ですが、自殺願望があったということですか？
はふみ：実は（笑）。漫画の中でも少し触れていますが、私は女ばかりの大家族みたいな環境で育ちました。一緒に遊んでた姉たちの影響もあったと思いますが、男の子の遊びよりも女の子の遊びの方が好きでしたし、姉たちのようにかわいい格好もしたかったんです。 
でも、当時はまだ「男は男らしく、女は女らしく」っていう風潮が強かったんで、一生懸命男として過ごしました。 
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漫画家になろうと思ったのも、姉がきっかけです。自分でも漫画が描けるんだっていうことと、コンクールに応募して入賞したら賞金がもらえるっていうことを知りました。それからは、少年向け・少女向け関係なく、いろいろな出版社に作品を送り続けて、17歳の時にデビューが決まって、高校中退して上京しました。 
<figure id="attachment_296913" aria-describedby="caption-attachment-296913" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296913 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/368A3247.jpg" alt="" width="8192" height="5464"><figcaption id="caption-attachment-296913" class="wp-caption-text">とにかくあの頃は実家を出たくて仕方がなかったんです。でも、今は無作法だったと、反省しています</figcaption></figure>
――念願の漫画家になって、実家を出て。順調のように思えます。
はふみ：そうですね。私も、東京に自分の部屋を持って、好きな仕事をしながら、まわりの目を気にせず自由に暮らせると思ってました。でも、それはほんの一瞬でした。 
週5はほぼ泊まりでアシスタントをやって、自宅に帰ったら自分の漫画のネームを描いて……。自由にできる時間なんてほとんどなくて、何よりも先に一人前の漫画家にならないといけないと思って、「女装をする」という夢にフタをしてしまいました。 
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<h3>「何もうまくいってなかったから、癌宣告もショックじゃなかった」 </h3>
――「一人前の漫画家」というのは、ハードルが高いように感じるのですが……？ 
はふみ：そうですね。漫画の世界はとてもシビアで、人気や部数などもすぐに数字でわかります。もちろん、いい思いをしたこともありますが、連載の打ち切りや雑誌の廃刊、アンケートはいいのに単行本は売れないとか、とにかくいろいろあって……。 
一度、「自分はダメな漫画家なのかな？」って思ったら自信もなくなっていって、いつしか「またイチから頑張ろう！」っていう気持ちも沸かなくなってしまったんです。 
<figure id="attachment_296916" aria-describedby="caption-attachment-296916" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296916 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/368A3363.jpg" alt="" width="8192" height="5464"><figcaption id="caption-attachment-296916" class="wp-caption-text">「自暴自棄になって、一時期、仕事中もアルコールが手放せなくなったこともあります（苦笑）」</figcaption></figure>
頑張っても頑張っても、全然うまくいかなくて、毎日「消えてしまいたい」と思うようになって、「病気に見える自殺はないのかな」と考えていた時に癌宣告をされました。医師から「すぐに手術をしてください」と言われた時は素直に予約をしましたが、「半年後の手術を受けなかったら死ねるのかな」という考えもありました（苦笑）。 
――だから、癌宣告を受けてもあまりショックではなかったんですね。
はふみ：反対に、「もういいや！ 残りの人生やりたいことやろう！」って吹っ切れました。絶頂期で、仕事も何もかもがうまくいっていたらショックだったと思います。でも、全然そんなことなかったんで。嬉しいワケではないんですが、少し肩の荷が下りた感じがしました。 
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――本作は、癌宣告を受けてから手術をするまでの半年間の記録といったところでしょうか？ 
はふみ：そうですね。私自身もそれまでは漫画のことしか頭になくて、部屋に閉じこもってばかりだったんですが、外に遊びに出るようになりました。女装もはじめましたし、漫画家として人前に出るようにもなりました。 
いろんな出会いがあって、「世界ってこんなに広いんだ」って感動して、毎日が楽しくなって。そんな私の実体験を、これからたくさん描いていきます。
<h3>誰かの背中を押す漫画になれれば </h3>
――癌宣告を受ける前に、サイン会などをされたことはなかったんですか？
はふみ：はい、漫画で認められればいいと思っていたんで。でも、癌宣告を受けた後で、同人誌を描いている漫画家の友人に誘われたので、思い切って参加してみました。どうせ死ぬんだったら、その前にいろんなところに行って、読者にお礼を言いたいなと思って。 
――どんな作品を描かれたんですか？
はふみ：『男をやめてみた』の元になった作品です。あえて女装をして男から女になろうとしてることや癌であることはメインにせず、私という一人の漫画家の今を伝えるドキュメンタリーみたいな1冊です。 
はじめてのコミケはやっぱり緊張したんですが、実際に行ってみると「ずっと読んでました」って声をかけてもらえて、それがすごく嬉しくて。 
地方に行った時に、私と同い年の読者さんが、「先生が新しい挑戦（同人誌）をしているのを見て、私も諦めてた夢に挑戦しようと思って、それを報告しに来ました」って声をかけてくださったんです。「私の漫画が後押しをしたんだ」って思ったら、涙が止まりませんでした。 
<figure id="attachment_296917" aria-describedby="caption-attachment-296917" style="width: 8192px" class="wp-caption alignnone"><img loading="lazy" class="wp-image-296917 size-full" src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/02/368A3342.jpg" alt="" width="8192" height="5464"><figcaption id="caption-attachment-296917" class="wp-caption-text">「トランスジェンダーや医療など、いろいろなテーマが入っている漫画ですが、一人の人間の一部分にスポットライトを当てたドキュメンタリーだと思っていただければ」</figcaption></figure>
はふみ：私は5年前に手術をして、現在は経過観察中です。一度は死と直面しましたが、おかげで本当の自分を解放できました。それまでは内にこもってばかりで、自分一人の力で生きるのが正しいと思い込んでいましたが、まわりの人に助けてもらうことは決して悪いことではなく、反対に、まわりの人と協力し合っているからこそ、生きていけるんだと気づきました。 
今後、主人公の渚素にどんな出来事がやってきて、どういった道を歩いていくのか。どうか、温かい目で見守ってやってください。 
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はふみ　11月1日生まれ。O型。漫画家。17歳の時、少年サンデーから商業デビュー。以後、著書多数。病気を機に残りの時間をどう生きるか考え始めたら性別迷子…。東京都在住・保護猫を含む猫三匹のママ。趣味はお弁当作り。
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<a href="https://ebookjapan.yahoo.co.jp/books/739000/A003729871/" target="_blank" rel="noopener noreferrer">◆『男をやめてみた～癌になったので女装して恋をすることにしました～』2巻はコチラ</a>
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WEBを中心にフリーライターとして活動。また、書籍や企業PR誌の制作にも携わっている。専門分野は持たずに、歴史・お笑い・健康・美容・旅行・グルメ・介護など、興味のそそられるものを幅広く手掛ける。

安倍川モチ子

川戸健治

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