「ウクライナ侵攻1年」ロシアが脅す世界最大級火山への「サルマト攻撃」と核魚雷「ポセイドン」の脅威
ロシアのウクライナ侵攻から2月24日で丸1年が経過した。当初、数日でウクライナの首都キーウを落とせると考えていたロシア側の目論見は外れ、戦局は混とん。地域によってはウクライナ軍が攻勢を強めている。
プーチン大統領は23日の演説で
「以前と同じようにわれわれは3大核戦力の強化にさらに多くの関心を注ぐだろう」
と宣言。3大核戦力とは大陸間弾道ミサイル(ICBM)、潜水艦発射弾道ミサイル(SLBM)、長距離戦略爆撃機を意味する。ロシア国内でも戦局を一変させる核兵器の使用について、しきりに議論がなされている。なかには標的はウクライナではなく、後方支援する米国に向けてのものだ、と主張する人物もいる。
このほど、ロシア国営テレビ『ロシア1』の司会者であるウラジーミル・ソロヴィヨフ氏が主催したトークショーで、ある軍事専門家が恐るべきシナリオを披露した。
『サタン2』と呼ばれる大陸間弾道ミサイル『サルマト』の使用方法について、この専門家は
「サルマトは1度に大量の核弾頭を搭載できる特殊兵器だ。防衛システムを構築することは不可能。これは米国がサルマトに対し、脆弱であることを意味する。つまりは米国領土で最も恐れられているイエローストーン火山に脅威を与えているということだ」
と語った。
サルマトは1万1000キロ以上の射程を持ち、マッハ20の超音速で飛行し、10~16個の核弾頭を搭載できる。それが世界最大のマグマだまりがあるイエローストーン火山を直撃したら…。
「サルマトによる核攻撃で『破局噴火(超巨大噴火のこと)』が起きれば、大量の火山灰はヨーロッパにまで届きます。噴煙と火山灰で太陽の光は遮られ、地球の平均気温は10度下がるとまでいわれています。人類に対する最大の脅威となるでしょう」(軍事アナリスト)
この手の“脅し”をロシアはプロパガンダを通じて、しきりに流布している。「使えば世界が終わる」と言われる核魚雷『ポセイドン』もそうだ。
昨年7月にオスカーII級潜水艦「ベルゴロド」が就任。全長約184メートルで、米海軍最大のオハイオ級潜水艦(全長171メートル)よりもはるかに大きい。ここに「黙示録の兵器」と呼ばれるポセイドンを搭載予定だ。
ポセイドンは水の中を進み、海中で爆発すると放射性物質を含む高さ500メートルもの津波を発生させる。昨年4月にイギリスのジョンソン首相(当時)がキーウを電撃訪問した際、ロシア国営テレビは
「ポセイドンは最大100メガトンの核弾頭を搭載できる」
「イギリスの海岸近くでこの魚雷が爆発すれば最大500メートルの高さの津波がイギリスをのみ込み放射能の砂漠と化すだろう」
と“威嚇”した。
米国が標的にされた場合も同様だ。ニューヨークの自由の女神は高さ93メートル、エンパイアステートビルは443メートルで、これらを津波が飲みこみ、海岸の大部分は数十年間は居住不能となる。
「ポセイドンは水深1000メートルの深さを時速130キロで進むため、通常のミサイルでは迎撃困難。“使えば世界が終わる”というのは決して大げさではありません」(同・軍事アナリスト)
ロシアの核兵器使用については欧米だけではなく、中国やインドも使わぬよう再三にわたり要請している。現時点で使用する兆候はないが、このまま戦局が悪化すれば、過去に例がないほど緊張がピークに達することも考えられる。
「核を使えば、ロシアは壊滅的な報復を受ける。戦局を一変させるために使った核兵器が逆に戦局を悪化させる。そう合理的に考えられるうちはいいが、追い込まれたプーチン大統領が錯乱状態に陥った時が怖い」(全国紙国際担当記者)
侵攻から1年が経過しても、戦争の落とし所は見えない――。
- 写真:代表撮影/ロイター/アフロ