<figure id="attachment_298043" aria-describedby="caption-attachment-298043" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="5aaa691f"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/6ac2397867767a902ce2217f0a58282f.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298043" class="wp-caption-text">「子供の頃からお笑い番組が大好きでした」と語る昇吉</figcaption></figure>
<p>今から2年前、東大卒で初の真打となったことで注目された落語家・春風亭昇吉（43）。真打に昇進して以降、高座で全国を飛び回るのはもちろん、人気バラエティ番組『プレバト！』（TBS系）では俳句勝負で立川志らく（59）に勝ち、自身の落語会へのノーギャラ出演を承諾させたことも話題になった。さらには経済番組のMCを務めたり、気象予報士としてお天気キャスターの経験もあるなど、活動のジャンルは落語だけにとどまらず実に多彩だ。なぜ彼が東大を出ながら落語家になったのかを聞くと、その多才ぶりの源が見えてきた。</p>
<p>「中学校、小学校の頃は、休み時間など、教室の隅でよく大喜利をやったりしていましたね」と言う昇吉。当時、観ていたお笑い番組を聞くと、深夜番組時代の『ダウンタウン』から『ウッチャンナンチャン』に始まり、志村けん、『とんねるず』、『爆笑問題』などの人気芸人のコンビや名前がまるで落語の一節のように滔々と出てくる。</p>
<p><span class="strongInContent">「なかでも放送作家をされている高須光聖さんの『放送室』（TOKYO FM）というラジオ番組をめちゃくちゃ聞いていましたね。また『IPPONグランプリ』（フジテレビ系）で「写真で一言」というお題がありますが、それを最初にやった『一人ごっつ』『松ごっつ』（フジテレビ系）も好きで、浪人のときに僕、わざわざ大阪まで展示を観に行きました」</span></p>
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<p>落語との出会いもこの時期だ。</p>
<p><span class="strongInContent">「高校生のとき見たテレビ番組に、たまたま（立川）談志師匠（享年75）が出ていたんです。世の中にこんな面白いおじさんがいるんだと思って、談志師匠の『現代落語論』という本を読んでみたら、これがまた面白かった。その談志師匠の面白さはこれまで私が好きだった『とんねるずや』や『ダウンタウン』、『爆笑問題』と同じ面白さだなって思ったんです。また、私は浪人時代に代々木ゼミナールの岡山校に通っていたんですが、田舎なんで電車が１時間に２本しか来ないから駅では必ず待たされる。それで何をしていたかというと、駅の本屋で志の輔師匠の『古典落語100席』という本を読んでいました。当時の僕は落語をまったく知らない状態です。それでも『時そば』や『初天神』などの噺が見開き２ページに書いてあるのを読んで、電車を待ちながら『さっきの話はこんな話でこんなオチだったなあ』というのをずっとリマインドしていました」</span></p>
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<figure id="attachment_298047" aria-describedby="caption-attachment-298047" style="width: 1649px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="308b1644"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/6929b940e4802cf13960acbb172247c2.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298047" class="wp-caption-text">東大・落語研究会でも、漫才やコントをやる部員が多い中、一人だけ古典落語志向だった</figcaption></figure>
<p>しかし、まだその頃は昇吉にとって落語は大好きなお笑いの中の一つのジャンルだったのだろう。だから５年間浪人して23歳で東大に入り、落語研究会に入ったのも落語というよりは純粋にお笑いが好きだったからだった。</p>
<p><span class="strongInContent">「落語研究会とはいえ、落語をしている人は少なくて私も最初は漫才とかをしていたんです。その当時は『レッドカーペット』（フジテレビ系）とか『エンタの神様』（日本テレビ系）が流行っていたころで、そういうのが悪いというわけではないんですが、私が好きな『放送室』とか『一人ごっつ』とかの自分が好きなものとは違うなと。また東大には山本進先生やそうそうたる落語の研究者の方がいらっしゃって、その人たちが私にけっこう目をかけてくださったんです。それで本格的に落語をやり始めたら、これが面白いんですね。古典落語は波打ち際のところはそうでもないんですけど、深いところにいったら面白いんです。『爆笑問題』の太田光さん（57）とか立川談志師匠とか松本人志さん（59）とは世界観としてつながるようなところがあるかもしれません」</span></p>
<div data-friday-nextpage-lead="「やってみたいこと」は…"></div>
<figure id="attachment_298044" aria-describedby="caption-attachment-298044" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="06e53eed"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/f6f77a1616e27fc34eb1a81aa7dc6262.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298044" class="wp-caption-text">盲学校で落語をした際、生徒から「声がとても聞きやすい」と言われたのが励みに</figcaption></figure>
<p>落語にのめり込んだ昇吉はすぐに頭角を現す。06年、落語の学生大会である『全日本学生落語選手権・策伝大賞』で優勝、審査委員長の桂文枝（79）から「粗削りやけどまくらがおもろい」と褒められた。4年生のとき、ボランティアで目の不自由な子供たちの前で落語をして喜ばれた経験もきっかけとなり、春風亭昇太（63）のもとへ弟子入りした。</p>
<p>昇太師匠の弟子としての修業は「ほったらかし」だったのだという。しかし、それは昇吉にとってはかえって水が合っていたようだ。</p>
<p><span class="strongInContent">「うちの師匠は〝春風亭のほったらかし〟で家に来て掃除をしろとかは言わないんです。談志師匠の言葉で『やらないやつはやれって言ってもやらない。やるやつはやるなと言われてもやる』というのがありますがその通りで、この落語面白いな、やりたいな、というのは自分で勉強しなきゃいけない。私は運動もできないしイケメンでもない、でも落語は好きだという気持ちはあるし、稽古したり勉強したりするのは好きなんですね。それで16年やってきましたから。でも、ほったらかしはほったらかしなんですけど、箸の上げ下げまで言うのではなくて、やる気をもってやればすごく応援してくれるんです」</span></p>
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<figure id="attachment_298046" aria-describedby="caption-attachment-298046" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="e82d99ea"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/4d2898cc519c4468d541cbcfe0072ef6.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298046" class="wp-caption-text">東大卒業時には、落語選手権優勝や落語ボランティア活動が評価され、東京大学総長賞を受賞している</figcaption></figure>
<p>実際に気象予報士の資格を取れと言ったのは昇太師匠だったし、そのための援助もしてくれたという。そのおかげもあって13年にはフジテレビの番組で気象レポーターに抜擢され、同年のテレビ出演ランキングの落語家部門の１位にもなった。そして11年に二つ目に昇進したことはさらに世界が広がるきっかけとなった。</p>
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<p><span class="strongInContent">「東大落研の山本先生に『昇吉さん、二つ目になったら時間ができるだろうから講談、講釈、三味線、長唄、日本舞踊をちゃんとやりなさい、あと歌舞伎鑑賞と俳句をやりなさい』と言われて全部やりました。歌舞伎は今でも毎月観にいっていますし、俳句も毎月句会に行っています。それはもう半分ぐらい飲み会みたいなものですが、それがプレバトにもつながっているんです。落語と俳句それから気象予報士というのは私の中で全部合体しています。日本には四季があって、折々の風物を５・７・５におさめるのが俳句だし、落語の中には俳句がいっぱい出てきます。季語を考えるときに、この季語はこの時代にできた季語だとか、落語もこの言葉は江戸時代にはなくて明治時代にできた言葉だとか、そういうことを勉強するのは面白くて面白くてしょうがないですね」</span></p>
<p>とにかく自分が好きなことを勉強するのが好きだという昇吉。そしてその勉強の熱量がハンパないのだ。そしてそんな毎日がストレスもなくて楽しいのだという。</p>
<p><span class="strongInContent">「私は今、岡山で経済番組をやらせていただいてるんですが、経済の勉強も好きなんです。MCだからといって番組のスタッフが勉強していることは私も勉強しないわけにはいきません。たとえば、お米のビスケットを作る会社を取り上げたときがありまして、Amazonで関連する本をいっぱい買ってアレルギーについて勉強しました。俳句だったらお題を与えられている期間は、地方にいても朝３時から起きてずーっと考えています。自分が本当に好きだと思う仕事をやらせていただいて、今はめちゃくちゃ楽しいんです」</span></p>
<figure id="attachment_298045" aria-describedby="caption-attachment-298045" style="width: 2500px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="b938d862"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/ed80de20dfec1bd144442f3c2532b6bb.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298045" class="wp-caption-text">21年5月に真打昇進。「真打昇進披露落語会」は母校・東大の安田講堂で行った</figcaption></figure>
<p>すでに好きなことをMAXな状態でやり尽くしている感すらある昇吉だが、今後やってみたいことを聞いてみた。</p>
<p><span class="strongInContent">「落語家って東西合わせて860人いるんです。その中にはずっと活躍されている方もいれば全然売れていない人もいます。人間国宝になっても、売れてる人でも死んだら終わりなんですよ。だから、自分も落語家だということを考えたときに何をすべきなのかを考えたら、今自分が何をやりたいかということが一番大事なんです。それは他人がどう思うかは関係ないです。ありていに言えば自分が納得できる落語ってことでしょうけど、その言葉ではすべてが伝わっていないと思います。目的を明確にして自分がそれどういうふうにやりたいかということが一番先にあって、それを一番大切にすることなんじゃないでしょうか」</span></p>
<p>本人が「落語の本筋とは関係ないところ」と言う方面では本当に面白い古典落語の点字絵本を寄付したいという夢もあるらしい。「人生が短すぎる！」と言う昇吉だがはてしなく〝好きなこと、やりたいこと〟を今後も昇吉は追い求め続ける彼にとってはまさにその言葉通りなのかも知れない。</p>
<figure id="attachment_298049" aria-describedby="caption-attachment-298049" style="width: 1150px" class="wp-caption alignnone"><a href="#" data-ident_hash="7684178a"><img src="https://res.cloudinary.com/fridaydigital/image/private/t_article_image/wpmedia/2023/03/2a4714a208f666ea540b69f76e01af63.jpg" alt=""></a><figcaption id="caption-attachment-298049" class="wp-caption-text">1979年、岡山県生まれ。東大生時代は、「井の線亭ビリ馬」と名乗っていた</figcaption></figure>


足立百合

「子供の頃からお笑い番組が大好きでした」と語る昇吉 今から2年前、東大卒で初の真打となったことで注目された落語家・春風亭昇吉（43）。真打に昇進して以降、高座で全国を飛び回るのはもちろん、人気バラエテ

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